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偽典Ⅱ  作者: 萩井灰介
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三話:邪神の愛娘

side:アマリア


「さて、とりあえず自己紹介も終わった事だし現状を説明するとだな…私は採取クエストを受けてここまで来たんだ、満月草と言って、満月の光に含まれている魔力を吸収して自身を白く光らせている植物でな?主に薬に使われたり合成の素材に使ったりと用途が広いのだよ」


「ほへー、そうなんですかー光ってるのならすぐ見つかりそうですねー…ってあれじゃないですか?」


アマリアがイズミが指で示した場所に顔を向けると木の根元に淡く光る花があった


「あぁ、間違いないな。すぐ見つける事が出来るとは運が良いな。よし、近いがちゃんと後ろからついてきてくれないか?先程も言った通りに…あぁ、いや満月に近い程に魔物が出やすいのでな」


アマリアがイズミは何も知らないという言葉を思い出し、分かりやすいように言葉を付け加えて満月草の元に向かい屈みこんで地面を少し掘り根っこと共に引き抜いて袋に入れた


「よし、これで目的の物は手に入れたから、安全な町に戻ったら色々と説明しよう……ってなぜ寝てるんだ」

「ぐぅ…メルちゃん…なんで…」


「む?夢の中で誰か思い出しているのか?」


(もしかしたらイズミは誰かに捨てられたのかもと思っていたが…間違いでもないのかもしれんな)


「しかし、ここで眠られると危険だからな良い夢なのかもしれんが起こすか」


アマリアが振り向くと近くの木に寄り添うように寝ているイズミを見つけて呆れた表情を浮かべていた

対するイズミは顔を歪めて寝言を漏らし、アマリアはイズミに対して認識を改めていた





side:イズミ


スヤスヤと白い空間に横になって眠る漆黒の髪の少女は周囲の空気が変わった事を感じたのか目を少し開いて辺りを見渡した


「あれ?森の中にいたはずなのに…ここって確か死んだ後にメルちゃんと会ったと『おぃ、だからその呼び方は止めろと言っただろ』おぉ?久しぶりー?って程でもないか~」


イズミはのんびりと返答し、もう一人…今の自分を男にしたような姿をした人物、神であるターメルンは呆れた表情をしていた


「もう少し驚いたらどうだ?何故こんな所に!?みたいな反応を少しは期待してたのだが…」


「うわー、性格悪いねー」


「…お前も似たようなものだろうが。

はぁ、とりあえず呼んだ理由は色々と現状を説明する為に呼んだのだ――夢の中でだがな」


クスクスと笑い横から言葉を被せるイズミに対して、呆れたような表情を浮かべるターメルン


「あぁ、そうだ思い出した!……何で僕を女性にしたのかなメルちゃん?いくら自分自身にも関心が余りないとはいえ女性になるのは怒るよ?かなりめんどくさい事になりそうだし」


「いや、最後のが本音だろう。…何?お前、男だったのか?に、しては女顔だと「ごめん、それ気にしてるんだけど」―すまんな…んん?自分には関心が無いのではないのか?」


アハハと笑いながらターメルンに向かって話すイズミ……ただし、その普通の人が見れば寒気を感じる笑顔だが。対するターメルンは驚いた表情になり最後には意地悪そうな顔になりニヤリと笑みを返す


(むぅ案外いじわるだなぁ…性格悪いなぁ…僕は純粋なだけだよねー悪い方にだけど)


「――お前じゃなくてイズミだよ? どうでもいい人に言われるのは構わないけどねーメルちゃんには名前で呼んで欲しいなー、それじゃあメルちゃんはイソギンチャクになりたいと思う?それと同じだよ?」


「名前で呼ばなかったことは謝罪しよう。だが例がなぜイソギンチャクなのかが激しく疑問に思うのだが…確かに嫌だな。よし、戻そう!と、言いたい所だが肉体は作ってしまったのでな出来ない事もないが疲れるのでやらん――その体を作るのには俺の血と力をかなり使ったものでな?」


「ふむ、メルちゃんには突っ込まないか「もう諦めた。勝手に呼べ」――開き直られるとそれはそれでつまらないなー。戻せない理由がおもしろそうだから~とか言うのかと思ったのにそんな理由だったんだ~うーん……そこまでしてくれてるんだったら勿体無いねぇ。あれ?血も使って作ってくれたのだったら父親になるんじゃない?」


(まったく、メルちゃん反応してくれないとおもしろくないじゃないか。でも以外だなー性格けっこう似てるから考え方も似てるだろうと思ったのに…見損なっ……うん、見直した!だったかな?この体にメルちゃんの血が通ってるのかーうん、父上~親父殿~父さん~お父様~――やっぱり最後のは却下)


「うむ、実は色々とこの後に悶える所を見てみたいとおも「怒っていい?何だろう?久々の怒りだけどこれは怒っていいよね」」


「と、言うのは冗談だ。ああ、それと全力で殴ったり移動したりするなよ?世界が壊れるからな…まあ、簡単に言えば空間に穴が出来て、そこから亀裂が生じて世界全体に広がって後はガラスを落とした様にパリーンと割れるな……ま、話を元に戻すとだな――俺が父だと?ふむ、そう言われれば間違いでもないな。父か…悪くないな」


イズミが疑問を投げかけると、ターメルンは遠くを見据えて満更でもないように微笑んでいた


(…これは仕返しするべきだ。僕にはその権利があるはずだ!うーん、でも世界を壊せる程に強くなってるなんて…メルちゃんから力をもらったのなら弱ってるから本気でやると死んじゃうのかなぁ?むぅ…それじゃあ他の手で…父さんって呼んでも良いっぽいし…諸刃の剣だけどこれで!)


「お父様、おふざけがすぎますよ?そんなことされますと僕…泣いちゃいます!」

「ぐぅっ!ま、待て…それはシャレにならんぞ!」


イズミは最初は見上げるようにターメルンを見据え、最後には涙目になっていた

その様子を見てターメルンは自分の顔――主に鼻を手で摘んで地面に片足を着いて震えていた


(勝った!容姿が美人な事を活かしたのが正解だったな~でも、あれ?何だろう…すごく悲しいんだけど…久々に感じたなぁ…うん、すごく味わいたくない悲しみだなぁ)


「うん、もう、いいや。他に説明しなきゃいけない事も早く説明して…もう寝たい、どこかに引き篭もりたいよ」


「あ、あぁ…ふん、俺に片足を着かせるとはやるではないか!とりあえずもう一度お父様と」


「父さん、早く……話してくれないかな?」


「よし、それでは…おぉ!説明も無しに闇を操れるのか!」


「え?おぉ~!ウニョウニョ動いてイソギンチャクみたいだなぁ~…何かプニプニして気持ち良いな~抱き枕にするとすごく良さそう…」


イズミがターメルンに向けて怒りの感情を向けると己の足元にある影が地面から浮き――触手が浮き出たようにクネクネと動いていた


「…まぁ、怒りの感情を元に使えたようだな。後は思いのままに動かせるはずだぞ?これも俺の考えた通りだな!感謝してくれてぬあっ!?ちょっと待て!いくら何でも扱いが上手すぎるぞ!?」


「よしよし、後はトドメに後ろから影の槍を出してトドメを…」


「分かった!俺が悪かった!死なんだろうが痛い思いをするの嫌だぞ!」


「わがまま言ったら駄目じゃないかー…もういいや、説明の続きお願い~」


ターメルンが悪ふざけをすると、イズミの影が突如伸び形を斧で薙ぎ払い、剣を振るい、矢の形に変えて放つという動作を同時に行った、ターメルンも己の影を自身を包みこむように盾を出して必死で防いでいたが根負けしてひとまず謝罪をしてイズミの攻撃を止めた


「不意打ちとはいえ……ああまでして追い詰められるとは…初めて能力を使ったとは思えんぞ?適正があったとしてもそこまで同時に行える奴も珍しいのだが」


「やー、ついうっかり暴走しちゃったなーどうしたら叩き潰せるんだろう?って考えて動け!って思ったら使えたんだよねー便利だねーこの能力~――特にこのプニプニ感が」


「か、感触で決めるか…まぁいい。先程も使ったように硬くしたり液体にしたり影のまま地面と同化させることもできるぞ?後は…そうだな。五感を付与したり、影の中に潜ったり、相手の影……果ては回りの影も利用できるといった所だな」


(へぇー。すごいなー…メルちゃんの影さん、メルちゃんの股間を思いっきり棒で叩いて!……あれ?動かないなー?同じ能力もってるからかなー)


「あれー?メルちゃんの影さん動かないよー?同じ能力もってるからなの?」


「ん?あぁ、俺の能力はイズミの上位に当たるんでな?そりゃ操れんだろ。ちょっと待ってろ解除して使えるようにしてやる。ただし、変な事に使うなよ?さっき妙に寒気がしたからな……何を命令した?」


「え?イスの形になれー!ってお願いしたんだよ?疲れてそうだ「おぃ、目を逸らすな!まったく…変な事には絶対に使うなよ?」―やだなー、気のせいだよー 気・の・せ・い」


(む、案外鋭いなぁ。さてと、使えるのかなー?メルちゃんの影さんイスの形になってね~…おぉ~本当になった!すごいなぁ~これって応用すれば背後から槍で攻撃できそうだな~)


「…本当にイスにしたな。さて、ちゃんと座れるか試し――おぃ、座ろうとした直後に消すな」


「え?あー、ごめん見てなかったな~「だから目を逸らすな!」さて、次は…五感だったかな?えーと、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚――だったかなぁ?」


「いや、合っているぞ?まぁ、人の感覚は五感以上にあるのだが――あまり増やしすぎると使い勝手が悪くなって困るしな」


「なるほどー…味覚はつまみ食い用に使えと。あ、影とかで食べるとどうなるの?」


「ああ、食べればイズミの腹の中に収まるぞ?まぁ、食べなくても生きていけるが…空腹は感じるようにしといたぞ?食べるという事も退屈を紛らわす為には必要な事なんだぞ?まぁ、一滴で死に至る毒薬を飲んでも体に入った瞬間に分解されるからいくら飲んでも大丈夫だ、後は闇――影を利用した移動だな両方やってみろさっきと同じ様にイメージだな…心の中で念じるように考えてみろ」


(ふむふむ、毒薬……どんな味するんだろ?大丈夫そうだし試してみようかな~さてさて、メルちゃんの影に視覚を付与して見えるように…おぉ!?すごい!メルちゃんの背中が見える!うん、背中だけ見ても何とも言えない…微妙だねー。あれ?でも同時に僕自身が見てる所も見えるなぁ。同時に見れるのかな?疲れると思うんだけど全然疲れないし…うーん?)


「うーん…メルちゃん?僕自身が見てる場所と影から見てる場所を同時に見えるんだけど疲れないのは何でなの?」


「ほぉ、いい所に気がついたな?ま、俺が生半可な肉体を作るはずがないだろう?ま、分かりやすく言えばイズミ自身から見ている場所、影から見えている視覚情報…まぁ、この2つの情報を脳に送るとなると普通の奴はパンクするか疲れるだろうが…ま、お前の脳の容量は―うん、かなり入ると思うぞ?」


「ぇ、何で疑問系なの?すごく気になるんだけど~…」


「いやな?作る際に限界まで強化するか!と実行したんでな。正直、体の詳細な性能がいまいち分からんのでな。まぁ、それは色々と試して把握してくれ」


(あらー…また適当だね~。いや、でも限界まで強くしてくれたのかな~?それなら感謝しないと~この体は色々と後で試してみないとね~)


「ふむふむ、なるほどね~。で、後は影を利用しての移動と…これも同じ様に念じるのかなー?」


「おぉ、飲み込みが早いなその通りだぞ?ま、移動といっても影……自分じゃなくても回りの影から入れば後はどこでもいけるしな」


イズミが自分の影を凝視していると足元からズプズプと沈み頭まで沈みこむとそこには黒い円形の影しか残らなかった


(おぉー!すごいなー地面の下から透けて見れるなんてーえーと、移動は…っと前に動こうとしたら移動できるのかーへぇー…メルちゃんの影から出て脅かそうっと!)


「わっ!おどろ「お前の考える事などお見通しだ」ぎゃう!?さすがに踏みつけるのはひどくない!?」


「ま、そんな感じで動き方や操り方は分かったな?後は…ま、今回はここまでにしておこうか理解力も常人離れしているだろうが後からゆっくり己の力が増えるのも楽しみだろう?次は魔力と神力についてでも教えておくか」


「ほへー・・魔力と神力かー…うん、楽しみにしとくよ~あ、それと身体能力とか下げてもらっていい?うっかり全力で走ったりしたらひどい事になりそうだから」


「あぁ、その点は安心していいぞ?そうなると思って2割程に制限をかけたからな?ま、殺したくない奴を相手にした時は軽く殴る程度で十分だからな」


(おー、メルちゃん…父さんって呼んだ方がいいのかなー?手回しいいなぁ~案外優しい性格なのかな~?)


「ふむふむ、なるほどねー…あ!そうだった~。寝たままならアマリアさん待たせてるのかなぁ?」


「む?ああ、その点も心配はないな外の時間とここの時間をいじったんでな相手がちょうど起こそうとしてる時間に合わせてるから大丈夫だぞ」


「ほへー。そうかぁ~…それじゃぁ僕はそろそろ行こうかなぁ~?あ、メルちゃんか父さん、どっちで呼んだ方がいい?」


「…何だ急に…メルちゃんなどは認めんからな――父の方で呼んでいいぞ?」


「んー、ここでメルちゃんって呼んだ方がいいと思ったんだ「おい」けど、僕もそう呼んだ方が良い?ような気もするし父さんって呼ぶね~」


(うーん、何だろう?父さんって呼ぶと落ち着くんだよね~。本能に生みの親って刻まれてるのかな?あー、でも、そうだとしても…気分が良いからどっちでもいいや~)


「む…俺もまぁ…そう呼ばれるのも悪くない「これがツンデレか」…違うわ!戯けが!まぁ、いい。さっさと行け」


イズミの足元から最初に出会い、別れの際に現れた渦が現れた


「あららー、またこれかぁ~今回も思ったんだけど溺れないのかなぁ~?うーん、それじゃぁまた会おうね~父さん~」


「あぁ、そうだな。イズミ、話がある時は俺を心の中で呼んでみろそうすれば会話ができるからな、何か聞きたい事があったらそうしろ」


ただぶっきらぼうにターメルンが言い放つがどこか心配する素振りを感じさせる態度だった


「おぉー、心配してくれてるんだーうん、何かあったら呼ぶねーそれじゃぁまたねー」


シュンッと音と共に真っ白な空間から姿を消したイズミの場所をしばしの間見ていたターメルンはぽつりと呟いた


「娘か…相手もいないのに子持ちとは、な。友が出来たかと思えば子ができる…ふむ、子育ての仕方でも学ぶか?いや、もうかなり成長しているが・・いや、生まれたてだから0歳か?しかし…」


その真っ白な空間にはブツブツと呟き続ける男が一人立っていたそうな





side:アマリア


「おぃ、良い夢なのかもしれんが起きてくれないか?魔物が現れたら危険だぞ?」


「うーん…ムニャムニャ…もう少し寝かせてよ~」


「!?…あ…あぁ、いいぞ――じゃなくて起きないと危ないのだ!早く起きてくれないか?」


(あ、危なかった…一瞬理性が飛んだ…しかし、甘やかしたくなるな…この寝顔を見ていると)


アマリアがイズミの肩をユサユサと揺らしていると寝ぼけたイズミが反撃?なのか肩を掴んでいる手をとってコテンと横になってしまった、若干よだれが出ているがその仕草などが小動物のように愛らしい寝顔をしていたのでアマリアは少し頬を赤らめて寝顔を見ていたいという欲に駆られたようだ


「むー。ん?あれ?ここは…そういえば森の中だったんだねー…あれ?アマリアどうしたの?」


「…いや、イズミは大物だと思ってな。満月でしかも森の中で眠るとはと思ってな…とにかくだ、町に向かうぞ?そこでならゆっくり寝ても構わん」


「んー、うん分かったよ~元々アマリアにはついていくつもりだったしねー」


「よし、分かった町についてから聞きたい事があったら答えれる事なら答えよう・・魔物が出るから私の後ろに離れずについてきてくれよ?」


(まったく、呑気なものだな。魔物が出るというのに微塵も恐怖を感じていないように見える…実はかなり強いのか?……いや、小柄で強者の気配もない…それはないか)


アマリアはもしかしたら少女が実はこの森で今まで生活できるほどの強者なのでは?とも考えたが体格なども考慮に入れてそれはないと自分の考えを消した…実は当たっていたりするのだが



木々の間を抜け森の中を進むアマリアとイズミ……前を警戒しながら進むアマリアと後ろで珍しい色や形をした草や花を見つけるとその場でしゃがんで見つめる動作をし、その度にアマリアに注意されてしまいには手を繋がれて進む事になった


「むぅ、子供じゃないから大丈夫なのに…それに片手が塞がってたらとっさの時に剣とか抜けないんじゃないの?」


「どこからどう見ても子供にしか見えないのだが…私としてもそんな失態は犯さないさ、風の精霊に頼んで周りに魔物の気配がしたら伝えてくれるように言ってあるから安心してくれていい」


「ほぇー。精霊までもいるんだーすごいなー」


(エルフや妖精族が精霊を扱うのは有名なはずなのだが…本当に何も知らなさそうだな。何者か確認したい所だが…捨てられた可能性も捨てきれんしな…つらい思いをさせるぐらいなら聞かない方が良いのかもしれん)


と、アマリアはイズミに対して同情をしてしまった…かわいそうという感情を出してしまった


「…ねぇ、アマリア…こっち向いてくれないかな?」


「…む?何だ?どうかしたのか?……っ」


イズミはジッとアマリアの目を見る…1秒、2秒、3秒…アマリアにとってはとても長く感じた

背中からジメジメした冷や汗がでる…それを本人が気がつかない程に余裕が無くなっていた


(…何だ?この感じは――見透かされてるような…いや、そんな事が出来るはずがないか…新たな魔法でも使えば分からんが詠唱をした様子もないしな…考えすぎか)


「…うん、何でもないよ、ごめんね?呼び止めて」


「あ、あぁ。そうかそれじゃあ先に進もうか…何か怒らせるような事をしたか?」


イズミは無表情のまま淡々と答えた、アマリアは何か気に障ったのでは?と思い疑問を口にした


「…いや、何でもないよ?…ただ、気になっただけ。ただ、それだけ」


「…?む、そうか…何か聞きたい事があるのならばすまないが町についてからにしてくれないか?今はゆっくり話をしていると魔物と遭遇してしまうんでな」


イズミはプイッとアマリアから目を逸らし再び周りをキョロキョロと見渡し始めた

アマリアはと言うと疑問に思ったがその疑問よりも、もっと大きな疑問があった為、思考を切り替えた


(なぜ、魔物がいない?――ここに来る時もそうだ、数が少なすぎる…何故だ?…まさか強力な魔物でもこの森に住み着いたか?それにしては妙な気配も感じないが…イズミを連れ出してから一切魔物に遭遇していない…イズミに関係が?いや、疑うのは良くないな…今は出ない事を良しとしよう)


アマリアはイズミを疑うのは……人を疑うのは良くない事だと頭を振り考えを消した…あながち間違いでもないのだが…そうこうしている内に2人は森を抜け、広がる草原にイズミは感動しているのだろうか?また笑顔になって辺りを見渡していた


「ふー、ここまでくれば少しは安全だな。周りを見渡せるからな…さてと、歩いて1時間程度で町に着くからもう少しがんばって歩いてくれないか?」


「おお?いいですよ~僕は疲れてませんからお気遣いなく~…に、しても魔物を見てみたかったんですけどねー」


「ま、魔物を見てみたいとは…危ないから駄目だぞ?まぁ、とりあえず先に進もう」


(…魔物を見てみたい?…魔物の脅威を知らない?――この世界で生きていれば嫌でも一度は見るはずだ…魔物を見ていないと仮に決めるのならば・・生活していたという線は消える…だとすればどうなる?この世界の住人ではない?――そんなはずないか、私も馬鹿な考えするものだ…だとすれば幼き頃より外の世界を見ていない?――いや、考えれば考える程に混乱するな…どれも仮の話だ止めねば)


「うん、そうだね~それじゃあ進もうか~」


ぐいっと繋がっていた手を引いて進むイズミ、それに釣られて足を進めるアマリア

周りを警戒して緊張していたせいか、気がつかなかった繋がった手のやわらかさと程よい温かさを感じると自然に笑みがこぼれた…心配するだけ損か…考え事は町についてからゆっくり考えればいいか)


アマリアは少し足を進めてイズミの横に並んで歩いた、その様子を誰かが見れば仲の良い姉妹に見えただろう。


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