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ペーパームーンニューライト  作者: 一七


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7/22

3-1.来たる火曜日


 ★


 火曜日、昼食の時間です。


 先に食事を受け取り、いつもの席に向かうと、水瀬君が私の定位置の向かいにすでに座っていました。


「来たな、東。よろしくな!」


 爽やかに水瀬君が笑います。もしかしたら、その場のノリで言っただけかもしれないと思っていたので、こうして律儀に待っていたことに、少し驚きました。


 女バス達から視線やら何やらを向けられるかも、と少し思っていましたが、周りは意外にも静かなものでした。


(なるほど。この距離で変なことを言えば水瀬君に聞こえるから、静かなのか。安全牌だと木竜君に言われたときは何だかなと思ったけど、こうなるなら安全牌扱いも悪くはないな)


 というか、「よろしく」と言われたけど、何をよろしくすればいいのでしょうか。


 動じなさを身につけたいと言っていましたが、技を見て盗むって、何をどう盗むのだろうかと考えていると、水瀬君が私のカレーをじっと見つめていました。


「東のさ、それ大辛カレーじゃね?」


「ああ、前の人と間違ってよそってしまったとのことだったので、そのままもらいました」


「優しいじゃん。でも食える? ウチの学校の、相当辛いって聞くぜ?」


「まあ、食べられると思ったからもらったんで」


「やるな東。漢を感じるぜ」


「いや、一応性別は女ですけど」


 そう答えると、水瀬君は聞いているのかいないのか、すくっと立ち上がりました。


「いいこと考えた。俺も大辛にする!」


 ⭐︎


「⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


「⋯⋯は! もう無理ッ!!」


 黙々と二人でカレーを食べていると、水瀬君が水をひったくるようにして、ゴクゴクと飲み干しました。


「っはー! 生き返ったー!!」


「そうですか」


「やっぱ東には敵わねーな。大辛カレー食って平然としてるとは」


「別に勝負じゃないでしょう。というか、これ本当に意味あるんですか?」


「当たり前だろ! これは苦しくても顔に出ないようにするための特訓だからな!」


 こんなことで彼の言う動じない精神が手に入るのかは疑問ですが、いい案があるわけでもないので黙っていました。放っておけば、こんな意味のないこと今日にでもやめるだろうと思っていましたが、彼は意外にもやる気を見せました。


「次やるときは、もっと縛り設けようぜ! 水飲むの禁止とかどうだ?」


「はあ。別になんでもいいですけど」


 そんなくだらない話をしながら、ふとサッカー部の方を見たときでした。マネージャーと一瞬、目が合います。――と思ったら、すぐに逸らされました。


(何だ?)


 水瀬君というよりは、私たち二人を見ていたような気がしますが、水瀬君はそんなことにはまったく気づかず、カレーをガツガツ食べていたので、そのまま流すことにしたのでした。



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