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ペーパームーンニューライト  作者: 一七


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2-2.帰宅


 未成年の学生だったので悪いのは大人の方ーーーというのが世間の見方かもしれませんが、男性の婚約者からすれば、いくら相手が未成年と言えどハラワタが煮えくりかえる所業でしょう。


 ただ、幸いなことと言って良いのかわかりませんが、最終的にはあっさりと母と男性は別れ、男性はその後、婚約者と結婚されたそうです。


 しかし本当かどうかはわかりませんが、このことが原因で男性達はこの土地にはいられなくなってしまいました。

 噂によると母は、その話を同窓会でこともなげに語っていたそうです。話していたのは二十歳前半の頃だったそうですが、それはここでは消えない履歴になってしまいました。


 父も母も社会的に見ていわゆるエリートと呼ばれる人間です。忙しい日々の中で子どもと協力しながら日々を過ごし、不自由もさせず、出来る限りの家族サービスをこなす「良い親」だと思います。普段の生活や私への声掛けからも愛情はちゃんと感じられます。

 しかし、だからといって、それが社会通念的に、道徳的に良いとされる心根の人物であるとは限らないのです。


 ーーー噂を信じるなら、母の謂れは自業自得です。


 昔読んだ漫画に、他人の銀の杯を壊してしまったなら、自分の金の杯を壊さなければならない。それが本当に償うという事だ、と書かれて今たのを思い出します。厳しくて救いのない考えだと思いましたが、同時に妙に納得できるものでした。

 なぜならこの世に同じものなど何一つ存在せず、同じモノを過不足なく補い、償うことなど出来ないのです。だから、きっと本当の意味での償いとは、相手の壊してしまったモノよりも、自分にとって価値のあるモノを、自らの手で壊すことなのでしょう。


 私は家族として、母のことを大切に思っています。でもそれと同時に母の後ろ暗い過去の清算や償いを求められるのは、当然のことだとも思ってるのです。


 ⋯⋯私が、母にとっての金の杯であるならば、今のこの濁った灰色の学生生活程度で済んでくれることは本当にありがたいことで、むしろお釣りがくる位なのです。

 でも、最近ふと思うのです。


 本当に自分は、母にとっての金の杯だろうかと。



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