9-2.夜の日常
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ベンチに腰掛けた水瀬君がノエルを撫でます。ノエルは気持ちよさそうに目を細めていました。
「なに今日来るの早いじゃん」
「ノエルの食欲がなくて先に散歩に来たんです」
「そうなのか? 今はむしろ腹減ってそうだけど」
言われてみると、ノエルは何かを期待するように私と水瀬君を見上げていました。
「本当ですね。さっきまでお腹いっぱいって感じだったんですけど」
一応持って来ておいたノエル用のおやつをあげると、水瀬君が「俺があげても良い?」と言ったのでお任せしました。
「いっぱい食って大きくなれよー」
優しく見守る水瀬君とノエルを眺めていた、その時でした。
ぐうぅううう。
静かな夜を切り裂く様な轟音が響き渡ります。私の腹の音でした。
「⋯⋯東」
「はい」
「犬用のオヤツは、食べるのやめといた方がいいと思うぜ?」
「⋯⋯流石にそこまで飢えてないです」
「仕方ないなー、コレやるよ」
ポンっと投げて寄越されたのはカロリーメイトでした。
「⋯⋯ありがとうございます」
「俺も食ーべよっと」
こういう携帯食は、普段ならあまり好んで食べないのですが、今日は意外なほど美味しく感じ、気づけばあっという間に食べ終えていました。
そんな私を見て、そんなに喜ぶならば、と水瀬君は荷物を探ります。
「お、ポケットに飴も入ってた。溶けてるけど食う?」
「⋯⋯気持ちだけ受け取っておきます」
丁重に断ったはずなのに、彼は飴をぽいっと投げてよこしました。反射的に受け取ってしまいます。
「ちょっと、投げないでくださいよ」
とはいえ、せっかく探して取り出してくれたものを、無下にするのも気が引けて、私は飴を鞄にしまいました。
「いーじゃんいーじゃん。ま、非常食ってことで⋯⋯ん?」
「どうしました?」




