7-1.日常になった昼
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「なぁ、東ってお化けとかUFOって信じる?」
水瀬君とランチを食べるようになって、早いものでニヶ月が経った7月のランチルームでのことです。
相変わらず黙々とカレーを食べる私の横で、聞いてもいない話をベラベラと喋っては、後に本来の目的を思い出して黙るーーーそんないつもの流れの最中、彼が思い出したように切り出しました。
「どちらも、信じる信じないというよりは、見たことがないので何とも言えない、といったところですね」
「お、東らしい返答だな! 理屈っぽくてさすがだぜ」
「いや、何がですか。そういう君はどうなんです?」
「ヤダなー東。俺もう中三だぜ? お化けなんて怖いわけないだろ。ま、UFOとか宇宙人は見てみたいけどさ」
「ああ、それはちょっとわかります」
宇宙は未だ未知の分野です。未知ということは、あらゆる可能性を秘めています。もちろん人間にとって好ましくない可能性も秘めているでしょうが、それも含めて、私はそこに途方もなく雄大な希望を感じます。
人間は星の破片から出来てると聞いたことがあります。これは寒気がするようなロマンチックな台詞ではなく、科学者が唱えたもので、事実なのです。
私はこの言葉を思い出すとき、夜空を見上げて思いを馳せるよりも、むしろ自分の手や足や眼をじっくりと眺めたい気持ちになります。
宇宙からの寄せ集めで出来たこの身体が、自分のものであると実感する時、私が思う憂鬱なんてとても些細なことだと思うのです。
と、言ったことを水瀬君にひとしきり語った後で私は我にかえりました。
⋯⋯明らかに語りすぎです。彼は食べる手を止めて、少し驚いてるように見えます。
「すみません、語りすぎました」
「どうして謝るんだよ。宇宙のそういうカガクテキな方面は難しくてよくわかんねーって思ってたけど、東の話す宇宙は面白いな」
水瀬君はそう言って笑いました。彼はわかりやすいので、多分本当にそう思ってくれてるのだと思いますが、なんとなく気恥ずかしいです。
「東は頭良いし、将来本当に宇宙関係の仕事につけそうだな」
「⋯⋯そうですかね」
「おう。お前なら絶対出来るって」
正直、そんなことは考えたこともありませんでした。将来は、正当にお金を多く稼げる社会的地位の高い仕事に就ければ、なんでもいいと思っていたのです。
でも、それも悪くないのかもしれません。
「そういえば、なんでこんな話を?」
「夏になるとさ、この辺、外からユーチューバーとかオカルト好きのやつが来るんだよ。なんかUFOの目撃情報があるとかでさ。だから東も知ってるかなーって」
「私は初めて聞きましたけど、君は見たことあるんですか?」
「んー⋯⋯ なんか不思議な動きしてるのは、前に桐生と見たことあるぜ。桐生は飛行機かなんかで、そんなのいるわけないだろって。まー、桐生みたいな頭の良いやつがそう言うなら、そうかなって」
水瀬君は少し残念そうに言い、残っていたカレーライスを急いでかきこみます。時計を見ると、昼休憩が終わる5分前でした。私も慌てて食べきります。
(UFOか⋯⋯。私は桐生くんより頭が良いけど、そういう未知の分野に対して断定的なことは言わないし、もし本当に見れるのなら一度見てみたいけどな)




