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どうせ勝てないので、魔王は勇者を楽しませることにしました  作者: shiyushiyu


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第7娯楽

 勇者たちが集まる街の酒場は、今日も騒がしかった。


「なあ、聞いたか?」


 酒をあおった冒険者が、声を潜める。


「この前来た勇者がさ……魔王城から、帰らなかったらしい」


「は? 死んだんじゃなくて?」


「いや、生きてる。

 剣も折れてないし、呪いも受けてない」


 向かいの男が首をかしげる。


「じゃあ、負けたのか?」


「それも違うらしい」


 誰も、はっきりしたことを言えない。


「なんかよ……

 “選ばされた”って話だ」


「選ぶ?」


 ますます分からないという顔をして、前のめりに話しを聞く。


「道を、だとか。

 三つあって……」


「派手なのと、静かなのと、

 何も起きないやつ?」


 一瞬、卓が静まる。


「……それ、誰から聞いた?」


「別の勇者だ。

 そいつも詳しくは知らねえ」


「じゃあ嘘じゃねえか」


「さあな。でも――」


 冒険者はグラスを置いた。


「そいつ、魔王城の前で三日待ってたんだと」


「……は?」


「『もう一回入りたい』って言って」


 笑い声が起きる。


「馬鹿だろ」


「普通は帰る」


「魔王討伐だぞ?」


 だが、誰もその話を打ち消せない。


 噂は、妙に引っかかる。


 ●


 その数日後。


 一人の勇者が、魔王城の前に立っていた。


「帰らなかった勇者、か……」


 期待はしていない。

 ただ、気になっただけだ。


 門は、今日も開いている。


 中へ進むと、やがて例の場所に出た。


 三本の通路。


 説明はない。


 派手。

 静か。

 何も起きない。


「……噂と同じだな」


 勇者は、少し考えた。


 酒場で聞いた話では、

 派手な道は騒がしく、

 静かな道は妙で、

 何も起きない道は――何も起きないらしい。


「信用できねえ」


 そう呟いて、静かな通路を選ぶ。


 歩き出して、すぐに分かった。


 これは、噂と違う。


 だが――


「……悪くない」


 勇者は足を止めなかった。


 ●


 その夜。


 酒場では、また別の話が流れる。


「聞いたか?

 今度の勇者は“静かな道が良かった”ってよ」


「いや、何も起きない道が一番だって聞いたぞ」


「派手なのは二度と選ばねえってさ」


 どれも、少しずつ違う。


 正解は、誰にも分からない。


 分かっているのは、一つだけだ。


 ――最近、

 魔王城から、すぐに帰る勇者が減っている。

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