第4娯楽
玉座の間には4人の魔族が並んでいた。
四天王である。
本来であれば、恐怖の象徴。
だが今、その空気は重い。
「魔王様」
最初に口を開いたのは、女魔族だった。
「結論からお伺いしてもよろしいでしょうか。私たちは……解任、ということでしょうか?」
幻惑の四天王、リリア。
丁寧な口調だが、不安は隠せていない。
「違う」
「で、では……減給でしょうか?」
「それも違う」
「配置転換……ですか?」
「それは合ってる」
四人の表情が、一斉に固まった。
「安心しろ。勇者に殺される仕事ではない」
俺の言葉の後に沈黙が走った。
巨体の魔族が、もぞりと動く。
「我々は、四天王でございますよね?」
力の四天王、ゴルドだ。
敬語は使っているが、ぎこちない。
「前線で戦うのが……本来の役目では?」
「もう無理だろ」
誰も反論しなかった。
「勇者は強い。しかも暇つぶし感覚で来ている」
「……最悪の条件ですね」
静かに言ったのは、知略の四天王、メルキオ。
「だから方針を変える」
俺は玉座から立ち上がる。
「第4娯楽から――
四天王には“娯楽の要”になってもらう」
「……娯楽の要、でございますか?」
「まず、メルキオ。お前は演出担当だ」
「照明、音響、登場演算。その理解でよろしいでしょうか」
「その通りだ」
「理にかなっております」
「ゴルド」
「は、はい!」
「お前はアクション担当」
「戦闘を……いえ、派手に動けばよろしいのですね!?」
「勝たなくていい。壊せ」
「……それなら、私にもできます!」
「リリア」
「は、はい……」
「お前は体験担当だ」
「……かなり高度な役割ではありませんか?」
「だから四天王だ」
「……承知しました」
「ヴァルド」
「……私の役割は、何になりますでしょうか」
破壊の四天王が、淡々と問う。
「総合司会だ」
「……それは、四天王としての職務に該当するのでしょうか」
「今はそうだ」
短い沈黙の後。
「……承知しました」
●
その頃、ダンジョン。
「お、なんか雰囲気変わったな」
勇者が足を止める。
『ようこそ』
メルキオの声が響く。
『第4娯楽へ』
「前振りあるの助かるな」
勇者が軽口を叩くと突然、
――ドン!!
轟音と共にゴルドが壁を突き破って現れた。
「派手だろ!」
自慢げにゴルドが言う。
「いいね!」
勇者も楽しそうだ。
この2人、案外話しが合うのかもしれない。
瞬間、突如通路が歪んだ。
勇者が咄嗟に戦闘態勢に入るが、それをリリアが止める。
「安心してください」
リリアの幻惑だ。
最後に、ヴァルドが前へ出る。
「ここから先は自由行動です」
「自由?」
「進んでも、戻っても構いません」
「最高かよ」
勇者は笑った。
「魔王さ」
「なんだ」
「ここ、前より断然いい」
玉座の間で報告を聞き、俺は息を吐く。
――四天王は、倒される存在じゃない。
生き残るための戦力だ。
こうして、第4娯楽は始動した。
魔王城は、
“また来たくなる場所”へと変わり始めていた。




