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異世界転移したのにテレパスしか力がありません。あなたは敵ですか?味方ですか?  作者: ぐりとぐる


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6/10

繋がらない

次の日、僕はとても機嫌よく目が覚めた。

田中や渡会と……親友と言ってもいいんじゃないかと思える二人と話せたのだから当然だ。


田中も渡会も、僕が死んだことで泣いてくれていた。

五日経っていたというのが気になるけれど、友情を感じるじゃないか。


そんな僕の様子に、リィナも気づいたようだ。

朝食の用意をしながら


「何かいいことでもあったの?」


と聞いてきた。


「うん、テレパスのおかげで元の世界の友達と繋がれたんだ」


こう言った時の僕は、とてもウキウキした顔だったと思う。


「……そっか、良かったね。でも、やっぱり仕事には使えそうにないね」


とリィナに言われ、現実に戻った。

僕の力は、こっちではあまり役に立たないのだろうか。

いや、現代知識で無双するという話も田中の持っていた漫画や小説にはあったはずだ。


「リィナには、何か力はあるの?」


と僕は聞いてみた。

そう言えばこの世界や町のことについてはいろいろと聞いたけれど、リィナ個人のことはあまり聞いていない。

奴隷という言葉に、つい踏み入ってはいけないものを感じたからだ。


そんな僕の気遣いをよそに、リィナは満面のドヤ顔で言った。


「この杖から、攻撃魔法が出せるのよ!」


「え、すごいじゃん。でも、それってどれくらいすごいの?こっちの人はみんなそんなことができるの?」


「多くはないけど珍しくもないって感じかな?まあ力があるってだけである程度珍しいんだけど、力のある人のうち2割くらいは攻撃系だと思う」


「力がある人はどれくらい?」


「詳しくはわからないけど、1割くらいかな」


ということは、この世界の2%の人は攻撃魔法が使えるのか。

不良に絡まれたらすぐに謝ろう。


「リィナの攻撃魔法は、どれくらいの威力なの?」


「うーん、人に向けて撃ったことはないけど、木の的は粉々になってたよ」


……それって多分簡単に人を殺せるよね。

リィナにも逆らわないようにしよう、と僕は思った。


***


朝食を食べ、一緒に後片付けをする。

出来るだけリィナに良く思われたい。


可愛い女の子だというだけではなく、機嫌を損ねたら確実にこっちが負けるからだ。

それから、二人で町に出ることにした。


この世界のことをよく知ること、そして何か仕事がないか探すこと。

とは言っても、僕は働いたことなんかない。


アニメはサブスクで見放題だし、ソシャゲに課金することもほとんどない。

田中や渡会と遊ぶ時も、誰かの家で集まることが多かったので、小遣いだけで十分だった。

そしてリィナは「焦らなくてもいいよ」と言ってくれる。


仕事探しはおいおいということで、この世界を知ることを最優先事項にした。


町にはいろいろな店があって賑わっている。

食べ物や衣服の店も、日本とは違う趣があって見ていて楽しい。


でも、「マジカルグッズ」と書いてある店にはものすごく興味を引かれた。


「リィナ、この店に入ってみたい」


と言うと、リィナは


「あんたが使えるものはあまりないと思うけど……まあ私も使える物がないか見てみるわ」


と言って店に入っていった。

そこには、日本では見たことのないようなものがたくさん置いてあった。

リィナが持っているのと同じような魔法の杖、何かの指輪、パワーネックレス、マジカルマニキュア……。


「これは何?」「これはどんな効果があるの?」と好奇心に任せてリィナに質問していると、初めは丁寧に答えてくれていたのに、だんだん面倒臭そうな声色に変わっていった。


少しウザかったかな、と反省して静かに見て回る。

ノロイノヘアバンド、ショウカンノマホウジン、マモリノハラマキ……。


この世界には漢字がないけど、商品名は日本語をそのままカタカナにした感じ。

これも与えられた力なんだろうな。

だって地球の中でも言葉が通じない人がたくさんいるのに、異世界で普通にコミュニケーションが取れるのはすごいことだと思う。


何も買うことなく店を出た後、リィナに「色々教えてくれてありがとう」と礼を言いながら歩いていた時、前からテテテテテと走ってきた5歳くらいの女の子が僕の目の前で転んだ。

その子が手に持っていた果物のようなオレンジ色の丸い物体が、道に転がる。


僕はそれを拾い、その子に手を貸して立たせながら、テレパスで「大丈夫?」と言ってみた。

テレパスを試したいというよりも、どちらかと言うとクラスカースト下位のコミュ力不足のために言葉が出てこなかったと言うべきだろうか。


僕は表面上は言葉を発していないのに、その子は「うん、大丈夫!ありがとう!」と元気よく返事をしてくれた。

ちょっと物を拾ってあげただけの僕にこの子は気持ちを向けてくれたんだな、と思うと、僕は嬉しくなった。

「きっと優しい子なんだろうな」と思った。


……僕は、リィナにもテレパスを向けている。

だけど、まったく繋がることがない。

恩人だなんて思い上がるつもりはないけれど、それでも乱暴されそうになったところを助けたはずだ。

それなのに……リィナとテレパスが繋がることはない。


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