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【完結】『領主に害をなす者』と呼ばれた僕は、テレパスで繋がる親友たちと異世界を生きる  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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哀悼

黒ずくめの男の名前はオルゲン・メイスという。

その父アステル・メイスは高名な魔術師で、その実力はかなりのものだった。


アステルはある日、書物庫で召喚に関する本を見つけた。

試しにその儀式を実行してみると、本当に人間が現れた。


カイウスの父、グロウゼンに仕えていたアステルは、その成果を主君に報告した。

ただその時に召喚されたのは女性だったため、戦の役には立たない。

だが、その女性の美貌を気に入ったグロウゼンは自分の後宮に入れることにした。


そして、グロウゼンはアステルに命じた。


「刺客となり得る者を召喚せよ」


隣接する領主と折り合いの悪いグロウゼンは、召喚された戦士「訪問者」を使えば自分に疑いがかかることなく邪魔者を消せると考えたのだ。


アステルは、召喚に適していると言われる野外において魔法陣を書き、召喚の儀式を執り行った。

しかし、魔法陣には何の変化も起こらない。


召喚には時間がかかる場合もあると書物にも書いてあるため、グロウゼンは三日の猶予を与えた。

しかし、三日経ってもアステルの召喚は成功しなかった。


グロウゼンは腹を立て、アステルを処刑した。


処刑される前の晩、アステルは息子のオルゲンに言った。

母を病で亡くしていたオルゲンにとって、父アステルは唯一の肉親だった。


「父は明日、処刑されるだろう。初めに召喚に成功した時は、すぐに手応えを感じることができた。しかし、今はまったく感じることが出来ん。他の領主様ならこんなことで首を切られたりはしないだろうが、仕える相手を間違えた。蛇の刻——夕方までに戻らなければ、ここからすぐに逃げよ。さもないと、お前まで捕らえられるかもしれん」


「え、父さん何言ってるの?父さんがいなくなるなんて嫌だよ。殺されちゃうくらいなら、一緒に逃げようよ」


「無駄だ。グロウゼン様は自分に恥をかかされたと思って私を草の根分けても探し出そうとするだろう。お前一人なら、それほど執着心を燃やすこともあるまい」


「だって、父さんがいないと生きていけないよ。僕も一緒に……」


「オルゲン、お前にもメイス家の血が流れている。優秀な魔術師の血が。お前なら、生き延びて幸せな道を探ることができるだろう」


「父さん!」


「すまん、オルゲン。良い主君に仕えるのだぞ」


そう言って、アステルはオルゲンに催眠魔法をかけた。


「父さん、嫌だよ……」


そうして、オルゲンは眠らされた。

オルゲンが起きた時には、もうアステルは家を出た後だった。


父の言葉が、オルゲンの頭に浮かぶ。

……幸せな道……良い主君に仕える……


そんなものに意味があるとは思えなかった。

腹の中に渦巻いているのは、怒りと憎しみの感情。

自分に魔術師としての才能があると言うなら、それを復讐に使ってやる。


「グロウゼン……必ずこの手で!」


蛇の刻がやってきた時、オルゲンは決意を抱いて家を出た。

滂沱と涙を流しながら町を出るオルゲンに、誰も声をかけることはできなかった。


***


それからこちらの時間で6年、地球の時間だとおよそ12年ほど、オルゲンは魔術師としての腕を磨き続けた。

それと共に、召喚について詳細な研究を行った。

自分が召喚を成功させ、その力でグロウゼンを討ちたかったのだ。


しかし、オルゲンには運がなかった。

グロウゼンはオルゲンの父アステルだけでなく、民衆や臣下のほとんどに暴虐だった。


そのような領主が恨みを買わないはずもなく、クーデターによって殺されてしまう。

それを知った時、オルゲンは生きる気力を失いかけた。

何のために自分は……。


ここで父の言葉を思い出せなかったのは、オルゲンの人格が恨みによって歪められてしまったからだろう。

優秀な魔術師として良い主君に仕え、幸せに生きる道はいくらでもあったのだ。


その道を、オルゲンは思いつきもしなかった。

恨みの感情を、グロウゼンの息子に向けた。


「お前の父が俺の父を理不尽に殺した!だからその息子を、アステルの息子の俺が理不尽に殺してやりたかったのだ!」


オルゲンは、取り調べにおいて全ての恨みを叩きつけるようにカイウスに向かって叫んだ。


「申し訳なかった」


カイウスは、オルゲンに頭を下げた。


その時、オルゲンの目から大粒の涙がこぼれた。

もっと嫌な奴であって欲しかった。

憎むに足るだけの、グロウゼンの息子らしい男であって欲しかった。

殺すことでみんなから感謝されるような、嫌われている領主であって欲しかった。


自分を殺そうとした相手に向かって頭を下げるような、そんな人間であってほしくなかった。

——これではまるで、父が言い残した「良い主君」ではないか。

そんなことは認めない。認められない。認めたくない。


オルゲンは、号泣した。

その時、オルゲンは気づいた。自分は、まだ心の底から父のために泣いていないことを。


「お父さん……お父さん……!」


オルゲンの悔恨の涙は、哀悼の涙へと変わっていった。



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