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『領主に害をなす者』と呼ばれた僕は、テレパスで繋がる親友たちと異世界を生きる  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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鍛錬

僕は、こっちの世界に来た時のことを思い出す。

リィナが3人の男に追われて、自分に助けを求めてきた。


もしあれが本物の暴漢だったら、僕はどうなっていたのだろうか。

この町は比較的治安がいいと言っても、殺されないとは限らない。

それに魔物もいるということだから、今のままでは不安だ。


僕は一応「テレパス」という力を使える。

力を使える人自体があまり多くないそうだが、僕の力はまったく戦闘に向いていない。


そう考えたから、僕はカイウス様にお願いして兵舎の訓練所に通わせてもらうことにしたのだ。

護身のためでもあり、この世界で生き抜くためでもある。


翌朝、僕は町の中央広場を抜けて訓練所へと足を運んだ。

朝日が昇る頃、石畳の広場にはすでに剣士たちの掛け声が響いている。

打ち合う木剣の音が乾いた風に混じって、胸の奥を震わせた。


「お前がユージか。領主様の紹介状を持ってきたってやつだな」


出迎えたのは、浅黒い肌の大柄な男だった。

鍛え抜かれた腕と太い声。まさに“戦士”という言葉が似合う。


「俺はバルド。この訓練場の責任者だ。とりあえず今日は基礎体力の確認からだ」


「よろしくお願いします」


僕は木剣を渡され、見よう見まねで構える。

想像よりずっと重い。両腕にのしかかるような感覚だ。


「おいおい、そんな握り方じゃすぐに手の皮がむけるぞ。腰を落として、こうだ」


バルドの手本を真似ようとするが、体の動かし方が全然違う。

筋肉痛がすぐに来そうだ。


「体に叩き込むしかない。考えるより動け!」


そう言われて、僕は汗を流しながら何度も木剣を振った。

そのたびに、木と風が擦れる音が耳に残る。


***


昼過ぎ。

ようやく休憩をもらい、僕は井戸のそばで水を飲んでいた。

火照った体に、ぬるい水が心地よい。


そこへ、後ろから軽やかな足音が近づいてくる。


「ユージ様、初日から飛ばしすぎではありませんか?」


振り返ると、エリナがいた。

薄いクリーム色のワンピースに陽光が透け、いつもより柔らかい印象に見える。


「エリナ? どうしてここに?」


「カイウス様から聞きましたの。あなたが剣を学ぶと。……私たちとの仕事を放り出して」


少しむくれた顔で彼女は言った。

僕もカイウス様に「仕事が終わってから」と言ったのだが、リィナとエリナの仕事はそんなに忙しくないからやりたいことを優先するように言われたのだ。


僕がここで役に立てるのは、テレパスで地球の親友たちと繋がれること。

でも、ここに現代知識を何でも持ち込めば良いとは思っていない。


地球においても環境破壊や新技術の利権やらの問題が起こっている。

魔法があるこの世界では、現代知識が害になる場合もあるだろう。


そうでなくても僕は貧弱なのだ。

体は鍛えなくてはならない。


「いざという時に頼れる男になりたいからね」


僕は、少し見栄を張るように言った。

自分に懐いてくれているエリナに良く思われたい、という下心があった。


「……素敵な心掛けですわ」


エリナが静かに言った。

その言葉に少し照れくさくなり、僕は木剣を見つめる。


「今の僕じゃ、エリナにも負けちゃいそうだし。あっちの世界はあまり危険がなかったから、鍛える必要もなかったんだ」


僕は、少し言い訳がましいことを言った。


「……平和な世界だったのですわね」


エリナは、しみじみとその言葉を口にした。

そして、何かを振り切るように話題を変えた。


「リィナもここに誘ったのに、『私には関係ない』なんて言って断られましたわ」


「……まだ嫌われてるのかな」


「そんなことはないと思いますけど、あの子は意地っ張りなところがありますから」


リィナのことは、僕よりエリナの方がずっとよく知っている。

僕は、まだ少しリィナとの接し方に迷っているところがあるのだ。


「リィナとも仲良くなりたいんだけどなあ」


「普段は明るくて人懐っこそうですけど、そんな単純な子じゃないんですのよ」


そう言ったエリナの顔は、慈愛に満ちているようだった。


***


それから二週間が過ぎた日、家に戻るとリィナが部屋の前に立っていた。

エリナは頻繁に遊びに来てくれていたが、リィナと会うのは久しぶりだ。


「最近全然こっちに来ないけど、随分熱心に剣術を教わってるのね」


「リィナに勝てるくらいになりたいからね」


「ふーん、じゃあその成果を見せてもらおうかしら。サボってないか確かめてあげる」


「いや、まだ二週間しか経ってないのに」


そう言ったが、リィナは有無を言わせず木剣を渡してくる。

仕方なく、僕は木剣を構えた。


「初めて会った時より様になってるわね」


僕に近づくために襲われているふりをしていたあの日、やっぱり僕のへっぴり腰を笑っていたのだろうか。


「……でも、あんなへっぴり腰で大男三人に立ち向かおうとしたのには感心したわ」


「あれが本当でも守れるような男になりたいんだよ」


リィナの気が少し緩んだような気がした。


そして、リィナは僕に打ちかかってきた。


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