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『領主に害をなす者』と呼ばれた僕は、テレパスで繋がる親友たちと異世界を生きる  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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見えざる敵

次の日、僕はカイウス様のもとを訪れ、面会を願い出た。

すぐに迎えてくれたカイウス様に、僕は開口一番こう切り出した。


「大量の水を沸騰させたり、冷やしたりすることはできますか?」


「火魔法や冷却魔法を使う者はそれなりにいるが……それがどうしたのだ?」


怪訝そうに眉をひそめるカイウス様に、僕は真剣な口調で続けた。


「“細菌”という言葉をご存じですか?」


「近頃、という意味ではないのかね?」


「いえ。この世界には、人の目には見えないほど小さな生き物が存在します。

その中には、毒を持ち、人を病にするものがいるのです」


「ふむ……目に見えぬものが病を起こす、か。奇妙だが理屈は通る。続けてくれ」


「その生き物は水の中にいます。

けれど、水を沸騰させると死んでしまうんです。

ですから、水を沸かしてから冷まして飲めば、病を防ぐことができます」


「……それは、君の世界のやり方なのか?」


「はい。僕たちの世界では、この方法で多くの人命を救ってきました」


カイウス様は腕を組み、考え込む。

その横で、エリナがきっぱりと言い放った。


「そんな面倒なことを民に強いるのは横暴ですわ。井戸があるのに、なぜそんなことを?」


「その井戸の水に、病をもたらす小さな生き物がいるからです」


「病の原因は“穢れ”ですわ。見えぬ生き物だなんて、荒唐無稽にもほどがあります」


「その“穢れ”の正体が、目に見えない生き物なんです。

それを殺すことで、人を病から守れるんです」


僕とエリナの言い合いを遮るように、リィナが口を開いた。


「あたしは、ユージの意見に賛成。……別にあんたを信じてるわけじゃないけどね。

でも、カイウス様のためになる気がするの」


その言葉に、カイウス様が静かにうなずいた。


「なるほど。信じるかどうかはさておき、確かに理屈はある。

他に有効な手立てもない以上、一度やってみよう」


「ありがとうございます」


深く頭を下げると、カイウス様は柔らかく微笑んだ。


カイウス様は領民に慕われている。

だから、布告を出すと七割ほどの民はすぐに従ってくれた。


火魔法で水を沸かすことは珍しくない。

魔力を込めた“湯沸かし石”のような道具もあり、誰でも簡単に湯を作れる。

ただ、冷やすという発想はなかった。

氷魔法は攻撃に使うもので、飲み水に使う者などいなかったのだ。


だが今回、冷やした水が「美味しい」と評判になり、民の間に広がっていった。

面倒がって井戸水を飲む者もいたが、二週間後、明確な違いが現れる。


——煮沸した水を飲んでいた者たちは、ほとんど病にかからなかった。

井戸水をそのまま飲んでいた者たちの間だけで、熱と下痢が広がったのだ。


僕はすぐにカイウス様へ進言した。

「病は人から人へ移る」と田中と渡会が教えてくれたことを伝え、

感染者を隔離するよう提案した。


その結果、町の感染は最小限に抑えられ、病にかかった者は治癒魔法師の治療で快方に向かった。

当初はまったく足らないと思われていた治癒魔法師。しかし、病人の数は少なかった。

病は、完全に鎮まったのだ。


僕はその間、リィナやエリナのもとで事務仕事を任された。

帳簿の整理や領民からの報告まとめなど、単調だが学びの多い仕事だった。

最初は二人とも僕を警戒していたが、黙々と働くうちに、少しずつ態度が和らいでいった。


そして、成果が見え始めたある日——

エリナが僕の前に立ち、真っすぐな瞳で言った。


「ユージ……いえ、ユージ様。あなたのことを疑っていて、ごめんなさい。

あなたのおかげで、カイウス様もとてもお喜びですの」


それから少し照れたように微笑み、続けた。


「異世界のこと、もっと教えてくださいまし」


リィナの態度は変わらなかったが、僕を見る目から敵意が減ったような気がした。


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