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『領主に害をなす者』と呼ばれた僕は、テレパスで繋がる親友たちと異世界を生きる  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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12/15

対談

カイウス様のテレパスによって、僕は町の役所に行くことになった。

カイウス・エルダン——爵位は侯爵——が治める領地の中でも、この町は特に活気がある。

日本で言えば、県庁所在地のようなものだろう。


役所の3階にカイウス様の部屋があり、僕はそこに案内された。

中には柔らかい笑顔で僕を迎えてくれているカイウス様、そして仏頂面のリィナとこちらを見定めるような態度の知らない女の子がいた。


「お呼び立てして申し訳ない。確か……ユージ君だったね?」


「はい、何かとお世話になっています」


「こちらの子はエリナ、リィナと一緒にいろいろと仕事をしてもらっている」


「初めまして、エリナです」


事務的な口調でエリナは言った。

こちらも挨拶を返し、リィナの方を見たがずっとそっぽを向いている。

随分怒っているようだ。


「リィナ……さん。これ、君の荷物」


そう言って僕は、魔法の杖やいろいろな物が入ったカバンを渡す。


「どうも」


むすっとした表情のまま、リィナはこっちも見ずに言葉を出した。


「こらリィナ、そんな態度を取るものじゃない」


「だってこいつ、カイウス様に害をなす者なんでしょう?追放しちゃうなり、牢屋に入れるなりした方がいいですよ」


「リィナ、何も悪いことをしていない人を、占いを理由に処罰するようなことはしちゃいけないんだ。それに、ユージ君は異世界から来たと言っていたね。私は異世界から来た人の伝承を聞いたことがあるが、害をなす者はその対象に会った途端に敵意をむき出しにしてきたそうだよ」


そして、カイウス様は僕の方を見て言う。


「初めて会った時もユージ君の態度におかしなところはなかった。そして今も普通に話している。私に敵意を持っているようには見えない」


「でも」

「それに異世界から来た人は、害をなす対象以外にはとても理知的に接していてね、何かと助けになってくれたそうだ」


「それではカイウス様はこの人を部下として雇いたいと思っているんですの?」


エリナが言葉を挟む。


「できればそうして欲しいと思っている。ユージ君はまだ仕事が決まっていないんだろう?」


僕もいつまでも無職のままではいられないと思っていた。

ただ、元は高校生だったのだから、働くというのもピンとこない。

この人の言うとおりにしていたらいいのだろうか?


「私はあまり賛成できませんわ。伝承なんて言い伝えのようなものですし、信ぴょう性に欠けます。それよりも占いの方が信じられますわ」


「そうです、カイウス様。ビホールの占いは結構当たってきたじゃありませんか」


「まあ、七割くらいは当たってきたな……」


……確率は悪くはないけど、全幅の信頼を置くには心許ないなあ。

それでも二人は、僕のことを良くは思っていないようだ。


リィナと……エリナだっけ。二人は仲が良さそうだから、エリナもリィナから僕のことを聞いているんだろう。

……お風呂に乱入してきたって。


それは僕が悪いとしても、この分だとみんなに慕われているカイウス様に害をなす者である僕は、受け入れてもらえないんじゃないだろうか。


そんな心配を察したかのように、カイウス様が言った。


「ユージ君、占いのことは占い師のビホールとこの二人しか知らないから安心していい。占いの内容が政治利用されたりしないよう、私と二人の時にしか結果を言わないようにさせている。まあこの二人には問題がない限り伝えているが」


カイウス様は、リィナの方をちらりと見る。


「今回は伝えない方が良かったかな」


「知っていようといまいと、こいつはレディのお風呂に乱入してくるような奴です!」


「でも、ユージ君は攻撃魔法を使えないんだろう?」


「そうですよ、カイウス様のものよりちんけなテレパスだけ。こんな奴、魔法の杖があればいちころです」


「だから、杖を持っていない時を狙ったんだろう?」


「でも!だからって……」


「相手が敵か味方かわからないうえ自分よりはるかに強いんだ、レディだのなんだの言ってられないだろう。リィナのやり方がまずかったんだ」


それからカイウス様は、僕の方に向き直る。


「リィナには、君の素性調査を頼んでいた。その際に誤解されるような方法を採ったことはこちらの落ち度だ。申し訳ない」


カイウス様は、頭を下げながら言う。


「そんな、とんでもありません。僕の方こそ……リィナ……さん。ごめんなさい」


昨日までは「ユージ」「リィナ」と呼び合っていたのにな、と少し寂しく思った。

そして、好きにならなくて良かったと思った。


年頃の女の子と一緒に暮らしていたのだ、当然意識もした。

テレパスが繋がらない違和感がなければ、恋愛経験の少ない僕は好きになっていただろう。


(カイウス様に害をなす者だと思いながら、あんなに親しげにしていたのか)


女は怖い、と僕は思った。


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