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門番たちの会話

ゴリラが異世界に転生してきてからだいぶ長い時間が経過したように思う。


一方で、魔王チンパンジーが何をしているのか書かなければいけないような気がした。だから書くことにする。



魔王城。魔王城は非常に大きいが、当然ながら警備は堅い。

城の周りは大きな城壁で囲まれており、中は魔族が暮らしている町となっていると思われる。


(思われる……人間目線ではその様子を直接観測した者は未だいないからだ。

仮に勇者が魔王を討伐すべく魔王城の城下町に訪れたとしても、まじまじと魔族の日常の様子を観察はしないだろう……)


魔王城の一番外側にある大きな門


そこに門番の金属製の鎧を着た魔族が二人、並んで立っていた。

門番の魔族は頭に一対の巨大な角こそ生えているが、二本足で立っており、

耳は丸く、顔は猿のように目が二つで口が一つ。しかし猿と違ってその口や牙は小さい。

(……いや、初めから「わお!ホントだ!まるで人間にそっくり!」だと書けばそれで済んだのでは……?)


その顔は西洋甲冑のヘルメットで隠されており、

一見では顔が見えないようにされているかのようだった。

(どうやらグレイトヘルムと呼ぶようだ。)


魔族が何か話し合っている。


「……暇ですね……」


「そりゃ、ここまでくれば大抵の人間は周りに生息する強大な魔物に恐れをなし、あまり来ないからな……来たとしてもその多くは無謀な命知らずだろう。」


「それにしても……今では、我々人型の魔族がこんな門番という落ちぶれた職業についているのはやるせないですね……」

その魔族はため息をついた。


「しかたがないだろう……魔王チンパンジー様の意向だ。あのお方は、異世界に来る前のこと……つまり生前で人間に殺されたらしく、非常に人間を憎しみ忌み嫌っているようだからな。」


「でも我々は人間じゃないですよね……?魔族ですよね?」

怪訝そうな顔をしているがその顔はグレイトヘルムで隠されて見えない。


「そりゃあのお方だってわかっているさ。我々人型の魔族の頭には巨大な角が生えているのを見れば一目瞭然だからな……」


「ではなぜこんなひどい仕打ちをするのです?」


「単純なことだ。……俺たちは見た目があまりにも人間に似すぎていたんだ。あのお方は我々が人間じゃないと頭では理解してはいても、我々の体つきや人間にそっくりな顔をみると過去のトラウマがフラッシュバックするようで、わなわなと怒りに震えだし、しまいには暴れだすからな……」


一息ついて、また話し出す。


「ここに赴任したばかりのお前は知らないだろうが、あのお方が魔王に就任した当初は魔族にも人間にそっくりな者がけっこう居るのを知らず、その勘違いで人型の魔族の多くがわけもわからず粛清されちまったのさ。」

そう言って、その魔族は自らの首を手刀で切る仕草をした。


「ヒェッ……おっかねぇ……私は足が震えてきましたよ。」

その魔族の足は確かに震えている。


「まあ、そういう訳でな……魔王城の中の職業は今では四つ足の獣型の魔物や、人間ではない姿に変身できる能力を持った魔物などが就いているというわけさ。ようするにあのお方は人間の姿を目にしたくない、近づけたくないってことだろうね。むろん、、本物の人間を近づけることはまずあってはならない。」


「あー、魔王を討伐すると伝えられている勇者だって大半が人間ですしね。それに勇者を目指すのは丸耳の人間ばかりですしね。」


「そうだな。だが、あのお方はどこまで理解しているのだろうか……?

一口に人間と言ってもこの世界にはいろんな種族がいるだろ?

どうやら丸耳がだめなのははっきりしているが、じゃあどこまでならセーフでどこからがアウトなのだろうか……」


「あっ、そういえばいましたね。人間のようで人間ではない珍しい生き物がいくつか。

たしか、ここの地方ではエルフに、ドワーフ、聞くところによると異国の島国では天狗?にカラス天狗?もいるんでしたっけ。」


「ああ。だが、お前は良く知らないだろうから訂正しといてやるが、正確にいうとその天狗とカラス天狗はそれぞれ赤エルフと黒エルフだからな……ここの地方に生息するお前の言うエルフは……ふむ……白エルフだけだな……」


「えっ?!エルフにも何種類かいたんですか?!」


「お前……知らんのか?エルフだけではなく丸耳の人間にもいくつか異なるタイプかいるだろ?お前は生まれてから今まで、海を遠く隔てた異国のその島国や、他の大陸に行ったことが無いのかね?」


「無いですぅ……」

魔族はしょげて言った。


「ふーむ。。。それなら知らぬのも仕方があるまい。まあ平たく言うと、その島国の丸耳の人間は赤エルフと黒エルフをそれぞれ天狗やカラス天狗と呼び、崇拝や畏敬の対象としているようだ。」


「はぇ……文化が色々と違うみたいですね。」


「そうだな。ついでに言うとその島国の丸耳の人間は肌がやや黄色みを帯び、鼻が低く丸いといった特徴がある。話す言葉や服装も建物の素材も、ここの地方の丸耳の人間とはだいぶ異なるぞ。」


「へぇ……世界って広いんですね……。」


「ああ。俺のような長い長い時を生きてきた魔族からすると、

世界は実に広く、探検すればするほど知らないことに出会うし、

丸耳の人間も人口はそれほど多くはないとはいえ結構散らばってあちこちに生きているように思う。

……正直言って丸耳の人間に限定したとしても……」


その魔族はしばらく考え込んでからまた話し出す。


「それらを絶滅するまで一人残らず皆殺しにするのは結構骨の折れる仕事になるだろうな……

やれやれ……あのお方はじつに無茶苦茶なことを言いよりおる……」

そいう言うと先ほど溜息をついた魔族でなく反対側に立っている魔族が溜息をついた。


「はぇ……ずいぶんと物知りなんですね。さすが年配はいうことが違う。憧れますね。」


「ははっ。言ってくれおる。若造も精々精進しろよ。」


「はい!頑張ります!」

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