はじめての仲間
頭上の木の枝を伝って猿の群れが通る、俺はその後を間を空けてひたすらついて行く。
猿の群れは何か得体のしれない大きな生物に警戒し、威嚇の声を上げる。
猿の表情はなんとなくわかる。威嚇している。
それでも間を空けてついて行く。
そのうち一匹の猿はようやく少し警戒を解いたのか、木の葉を食べ始める。
俺はその木の葉と同じ葉がどれなのかをじっくり観察する。
そして猿の群れを驚かせないように、ゆっくりと動き、
離れた同じ種類の木に登りその木の葉を食べる。
特に美味しいわけではないが毒草っぽい味はしない。
そう言ったことを延々と繰り返し、
この森での食べられる木の葉や木の実を地道に学習していった。
生前のただのゴリラだったら異種から食べ物を学ぶという発想は多分なかっただろう。
食べ物について俺が学んだのは母親の行動からの記憶しかないからな。
……母親にしがみついていた幼少の頃を思い出しすこし感傷にふける。
たまに俺の親父のシルバーバックも遊んでくれたっけな。。。
何日か森林での暮らしが過ぎ、うれしい誤算があった。
どうやら猿の群れが、俺のことを仲間に迎え入れてくれたらしい。
猿は鳴き声をあげ、目線や仕草も交えて
明らかにどれが食べられる、食べられない葉や果実かを教えてくれるようになった。
俺の表情をなんとなく察知できるようになり俺が何に困っているのかを理解したのだろう。
何の猿かは知らないが、もしかすると生前の俺よりも賢い猿なのかもしれない……
そう考えると少々心に引っ掛かることがあるが、素直に猿の善意を受け取っておくことにする。
ある日のこと、猿が鳴き声を挙げた。
俺もだんだん猿の鳴き声の意味が分かるようになってきた。
この場合は、、「ヘビだ!」
えっ?!ヘビだって?!
俺は驚き急いで木の上に駆けのぼる。俺はヘビが怖い。猿もヘビが怖い。
とある鳥は「ジャージャー」と鳴き、ヘビの意味を示し、下を見下ろし警戒する。
……ヘビは通り過ぎた。
脅威は過ぎ去った。安堵する。
猿の仲間を得て、以前よりも感情のコントロールがうまくいくようになった気がする。
加護が失われる時間は以前よりもだいぶ短くなった。
そのうち俺はこの森林の住人……いや住ゴリラとなった。
今では猿の鳴き声も、鳥の鳴き声も、
そのほかの動物も鳴き声もある程度意味が分かるようになってきた。
だが、なんだろう?
この世界には俺の知っている動物とは明らかにことなる動物群がいるようだ。
その動物群は森林にもいるが大半は無害だ。そして動物に似ているがなんだか奇妙な感じがする。
森林から外をうかがう限り人間はその動物群をこう呼び戦闘対象としているらしい。
「魔物」と。
「魔物」……魔物ってなんだ?
そういえば魂の回廊だかで光が言っていた気がする。
できれば魔王チンパンジーを討伐とな。
とすると、魔物の主だから、シルバーバックか。
いやあ、さすがにシルバーバックを討伐するのは俺には無理っしょ。
それに、魔物の中にはヘビにそっくりな化け物もいるかもしれない……
それは嫌だな……
俺はやはり、ゴリラとして生涯を終えるのが最善なのかもしれない……




