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はじめてのパニックゴリラ

「いててて」とゴリラは言った……と書きたいところだが、


この時点でゴリラは確かに知性こそ加護で向上すれど、異世界人の言葉は全く学習していない。

「ゴリラ」などよく聞いたことのある生前の言葉がわずかに理解できるようになったがそれでは意思疎通はまだ不可能である。したがって、人の言葉はまだなにもわからぬ。

言葉と思しき複雑な音のパターンに対して、生前よりも頑張れば子音が明瞭に聞き分けられるようになっており言語学習の下地ができたということである。

(一体誰の目線で書いているのだろうか……)


そういう訳で、ゴリラは痛みを感じ鳴き声を上げた。

しばらくして四つ足で立ち上がりあたりを見回す。


落ちたところは舗装されていない道路だった。

この道路は以前生息していたジャングルの外でも見かけたことがある。

ジャングルを切り開いてできた道に似ているが、一方は森林が立ち並び、

もう一方は人間の建物が立ち並んでいるのが見える。


……つまり人がいるし、人が頻繁に通る大きな獣道ってことだ。いや人道か。


向こうから人影が近づいていくのが見える。


……やばい。


ゴリラはおびえた。心音の鼓動がどんどん大きくなる。


むりもない。生前で密猟者に撃たれたばかりの心の傷がまだ癒えていない。


人はゴリラに気づかずまだ近づいている。


ゴリラはあわてた。あわてふためき、パニックに陥る。


自分でもどんどん加護が低下していくのがわかる。


こういうことか……と認識しながらも自らの心を制御できない。


頭の中の思考がまとまらない。


とうとう俺はただのゴリラに戻った。


人間がゴリラに気づき、「うお?!」と驚愕の声をあげる。


俺は焦りながらも、後ろ足で立ち上がり「近づくな!」という意味のドラミングをした。


人間はその動きや音に驚き、逃走した。

おそらく当時はゴリラはいまだ奥地のジャングルにいるらしきUMA扱いであり、

事前情報なしで実際に目の当たりにしたら獰猛で恐ろしい獣にしか見えなかっただろう。


ゴリラも驚き、森林のほうに逃げ込んだ。



森林に逃げ込んだあとは、人の目を避けるようにしてどんどん森林の奥に入っていく。

まるで本能が導くままに、生前の環境を求めるかのように。


人がいないのを確認し、じっとあたりをうかがう。


ここまでたった15分程度の出来事だったが、

ゴリラにとっては永遠ともいえるほど長い時間に感じただろう。



さらに一時間後


……脅威は去った。平常心が訪れた。

ようやく思考がまとまるようになってきた。

加護の効力が復活してくるのを感じる。


ただのゴリラに戻っていた間のことを思い出す。

出来事は思い出せる、なるほど、意識は失われないし、記憶もちゃんとある。


「うお!」とは人間の言葉だったのだろうか?ただの感嘆詞なのだろうか?

あの人間は堅そうな鎧を着ていた。直接戦っても亀みたいに防御しただろう。

明瞭な語彙はまだなくともそれに似たことをイメージで考える。


それはそうと、腹が減るのを感じる。思案にふけっている場合ではない。

ここにきてからまだ何も食べていないのを思い出す。


……生前はなにを食べていたか?

ゴリラの食事の大半は草や葉っぱ、果実といった植物が中心である。

しかしここは異世界の地。当然植生も異なるし、見たことのない草ばかりだ。

食べられる草はどれで、何が毒草で何が薬草かもわからぬ。このままでは飢える。

そういったわけでゴリラは途方に暮れる。

腰を下ろし、座り込む。上を見上げる。


そのとき、たまたま高い木の枝を猿と思しき動物が群れで通っていくのに気づいた。でも俺の見たことない猿。こんなに尻尾が長く、体が小さい茶色の猿は見たことがない。


……猿だって?

これが猿ということは、俺やチンパンジーは体が大きい尻尾の無い猿ってことかな?

などと考えている場合ではない。この猿の群れのあとをついていくのが最善だと考える。

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