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ゴリラと魔導新聞/魔物と魔族の違いって?

メーロッパ森林の近くの市街


俺、ゴリラは建物の中で石臼を引いていた。

何故かと言うとエルフの白い少女からもらったお金が底をつきたからだ。


お金がない、ではどこから調達するのか?

それは労働というらしい。


他人から盗む……という方法もあるが、

それは人の社会のルールとして良くない


というのはゴリラの俺でもなんとなくわかる……


そういう訳で俺は資本として労働力を提供していた。

俺の力では石臼をゴリゴリ回すことなどわけないこと……だと思うのだが、

周りの人たちからはその力に驚き、喜んでお金をいくらかくれる。


人の喜び……お金……これが労働というものなのか……?

労働して、お金をためて、いろんなものを交換し、暮らす……

人間の社会って複雑だ……生前の俺では全く考えもしなかったことだ……


石臼を引いて粉をたくさん作り、

水を混ぜてこねて生地を作りパンというものを焼くらしい。

俺は試しにパンとやらを食べてみたがあまりお腹には合わなかった……

食べるとお腹が痛くなる……


どうもこれは俺の体には合わない食べ物だな……


ある時、馬がモシャモシャ食べている牧草を見かけてじつにうまそうだと俺は思った……

試しに一つまみ食べたらなかなか良い青草の香りと食感。気に入った……

それを俺が食べるからたくさん欲しいと言うと……相手は怪訝そうな顔をしたが、

『巨人は馬のような草食なのよ、このお腹を見て!馬のようにお腹が大きいのが証拠よ!』

と白い少女が説明をし、俺はお腹をポンポンと叩き、何とか納得してもらえた。


だが、その牧草を買うにもやはりお金が必要だと来たもんだ……


という訳で主食となる牧草とおやつの果物欲しさに

ここんところ数日は地べたに座って石臼をずっと回している……

うーん……森林の暮らしのほうが良いような気もするが、

人間の社会にある食べ物の魅力には抗いがたい気持ちもあるしなあ……


白い少女はというと市街を散歩てがら、別行動をしている。

森林を普段の生活圏としている点では同じだが、

どうも俺よりもかなり人馴れしている……

というかエルフも人の仲間なのならそりゃそうか……と思いなおす。


今日の仕事を終えて賃金をもらったばかりの俺のところに白い少女が戻ってくる。

傍らには何かを携えている。丸い巻物。


その巻物は文字がびっしり。

左右にくるくる回すたびに文字が現れては消えていく。


俺は立ち上がり、人の目があるので直立姿勢で聞く。

「なにそれ?」


白い少女はこちらを向くと上目遣いで答える。

「魔導新聞」


「……魔導新聞?」


「えっとね、この地方、メーロッパでは人型魔族による魔術の印刷技術が発展していて、人型魔族によって発行される魔王城やメーロッパ内での出来事が沢山書いてあるのよ」


「……?丸耳の人間はその魔導新聞とやらは……発行していないの?」


「丸耳の人間には印刷といった、一度に大量に文字を複製できる高度な魔術を使えるのはほぼいないし、ほとんどは手作業で一文字ずつ書き写すのが限界よ」


俺は魔導新聞を間近で見てみた。


「ふーむ……こんなに文字がびっしり……図鑑とは全く違う……見ているだけで頭がくらくらしてきそうだ……」


「初めてみたらそうなるわよね……」

白い少女は微笑しつつも魔導新聞とやらに再び目を通す。


しばらくして


白い少女の顔は真剣な目つきになる。尖った耳がゆっくり上向く。


俺はその表情をみて聞く。

「……それで、何か凄いことでも書いてあったのか?」


「ええ……巨人・勇者ゴリラの噂は魔王城まで知れ渡っているみたいね……」


えっ……?酒場の人や、俺たちとたまに話す勇者志望や町の人が噂しているだけだろ?

俺は疑念にかられる。地図を見る限り魔王城はとても離れているはずだ……


「だから、新聞よ、遠い遠い場所で起こった出来事も知らせるのが新聞の役目よ」


ふーむ……それで、どうやって遠くの出来事を運んでいるのだ?


「あれを見て」


俺は建物から出入口まで二足歩行で歩き、白い少女の指差したその先をみる……


今ならわかるが、人間流の指差しの意味を理解するまでにはかなり時間がかかった。

当初の俺は、その人差し指をいつまでも見つめていたままで、

まさか遠く離れた延長線上にあるものを差しているとは思わなかったからな……


ともかくその先には高い木の上に黒い鳥が止まっている見えている。

あれは……カラスという鳥だな……それがどうしたの?


「動物のカラスという鳥にそっくりだけど、鳥型の魔族よ」


……ん?俺には全く動物のカラスとはまったく見分けがつかんが……?


「魔物は魔力で生命活動をするからね。だからどうしても息や体臭などを通して魔力が漏れだすのよ。丸耳の人間でも魔導士など人によってはその魔力の質の違いをオーラとして感知できるみたいだけど」

「それでね、鳥型の魔族は鳥と同じく視力が良いので色んな出来事を観察しては飛んでいき、人型魔族にペラペラ喋り色んな情報を知らせるってわけよ」

白い少女は得意げそうに言うと、尖った耳がピンピン動く。


へぇ……よくできているもんだな……


「まあ……紛らわしいことに動物のカラスも結構知能があって原始的な魔法をよく使うわ」


……えっ!?


「オマーキが風の魔法を使っていたでしょ?カラスは同じような知能をほとんどの個体がもっているわ。大抵は風の魔法を翼から打ち出して飛翔にかかる大変な労力を減らしたりするのだけどね、あとはもっぱらイタズラだけど……」

「だからこそカラスに擬態した鳥型の魔族は丸耳の人間には見分けがつきにくいし、人里によく出没しても違和感ないし、カラスの群れに紛れながらの情報収集にうってつけなのよ」


……なるほど……

俺は、動物のカラスとそれに擬態した鳥型の魔族……について考える……

この異世界は俺のいた世界よりもだいぶ入り組んでややこしいようだ……


森林にも小動物に似た魔物はよくいたけど……

人里に出没するのは魔族なのか……?


それで、俺は疑問に思ったことを白い少女に聞く……

「魔物と魔族の違いってなんだ……?」


白い少女は苦笑し、肩をすくめて言う。尖った耳は交互に上下している。

「まず、魔物から説明すると……魔力を糧に生きる『魔導生物』の略と言ったほうがいいわね。」

「そのなかで、人の言葉を喋れるほど知能が高くないものの俗称が魔物で、主に木の実や草といった新鮮な食物から魔力を摂取するのもいるし、群れをなす動物そっくりに擬態してそばの動物から魔力を吸収するのもいるし、肉食動物が草食動物を狩るように魔物狩りをして生きているのもいるわ。」

「……ただし、魔物は知能が低くても元々魔力で生命活動しているわけだから、その気になれば息を吐くように魔法を発動することができるわ。」

「一方、知能が高く人の言葉を理解し話したり先ほどの魔物よりも高度な魔法を発動できるのが魔族よ。だから動物そっくりだとしても、それは魔族かもしれないし見た目で判断しちゃだめってことね!」


ふーむ……??

さらにややこしくなってきたぞ……


俺は市場で牧草と少しの果物を買い、

白い少女とともに森林へと帰途につく……


オマーキは俺たちが猿の群れからいなくなるのが寂しいらしく

俺たちの帰りに気づくとすぐさま駆け寄ってくる。

少しの牧草と果物をオマーキに分け与える……

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