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ゴリラと機密事項

俺、ゴリラは数日おきに白い少女とともに酒場に行き、

腕相撲をしたり人々と語らい、少しずつ白い少女以外の他人にも慣れていった。


ある日、俺はエルフの白い少女に聞いた。

「あの屈強そうな男性たちは腕相撲を毎回仕掛けてくるが……わざと手を抜いているのかな?あんまり本気度が感じられないんだけど……」


白い少女は微笑んで答える。

「そりゃ、あなたがゴリラだからでしょ……」


俺がゴリラなのは……そうだけど、それとなんか関係があるの?


少女は呆れたように肩をすくめて言う。その尖った耳はやや垂れ下がった。

「本当に気づいてないの?『この巨人のパワーは人よりも何倍もあるわ』って最初に酒場に行ったときに言ったでしょ……」


……???


『巨人』と言うのはあなたが酒場の人たちの前で俺を勝手にそう呼んでるだけだろ……

俺は訝し気な顔をした。


白い少女はやや困ったような顔をして答える。


「建前上は巨人ということにしとかないと……色々都合が悪くてね……人扱いされないとお金だって使えないわよ?」


……たしかに、それは困るな。お金が使えなければ美味しい果物を買うことすらできやしない。

……でも俺はゴリラだ。そもそもはじめから人じゃないんだが……?


白い少女は苦笑して答える。

「だからこそよ。ゴリラだからこそ、元から筋力は……大人の男性の人間よりも何倍もあるのよ。」


……え?そうだったの?

俺は座り、自分の腕をじっと見やる……

毛深いところ以外に人と違いがあまりよくわからないんだが……


「人間の男性が腕を鍛えるにはどうやってると思う?……例えば、こうよ!」

白い少女は腕立て伏せをしてみせた。


そうか、これが鍛える方法の一つか……?


「それで、あなたは毎日その腕をどうやって使っているのかな?」


うーん……俺は立ち上がり、拳をつけた四つ足の姿勢でその腕を見下ろす。

あれ……もしかして俺は知らない間にトレーニングしていたの?

物心ついたときはすでにこうやって歩いていたんだが……


「それもあるけど、種族的に筋肉の作りが違うのね。だから、相手の人間の男性は本気だったし決して手を抜いていたわけではないのよ。」


はぇー……

そういえば異世界に来る前、謎の光とやらが

『ゴリラのフィジカルがあればなんとかなる』って言っていたような……?

これは、こういう意味だったのか……


「たぶんそうね、その者を直接私は知りえないけどね」

「……それで、他には何と言っていたか聞かせてくれないかなっ?」

白い少女の目は期待に満ちていた。尖った耳はピンと上向く。


俺は記憶を手繰り懸命に思い出す……そして答えた……


すると少女の顔がやや失望にかわり、耳はだらんと垂れ下がる。

「え……?すると、無理強いはしない、どう生きるかは自由?敗北したり、ゴリラとして一生を終えても責めることはない……?もとよりあまり期待はしていない……?」


いや、確かに謎の光はそう言ったかもしれないが……

俺は、なるべく魔王チンパンジーを討伐するのを目指すよ……とは言ったさ……

怯えで俺の拳をつけた四つ足の腕と脚は震えだす。


それと、『知性』の『加護』の弱点も伝えとかなければと思い、伝えた……


「ふーむ、なるほどね……極度に怯えたり感情が高ぶりすぎると、その時はあなたは一時的に生前のようなゴリラに戻るってことね……」


そうだ……

だから俺は勇者を目指すとは言ったが……

明らかに俺の性格は勇者に向いていないと思うぞ……


「それは一理あるわね……」

「今後は巨人について、あまり驚かせたり怒らせたりしないように周りの人たちに周知しなくちゃね……」


それは俺もそう思い、頷きする。


「……なぜならあなたが他意はなかったとしても、もし本気で殴ったりしたら人はそれだけで簡単に死んじゃうわよ」


え……?まじで……?ゴリラ同士の喧嘩でもそんなことないのに……?

ああ、そうか……だから生前で俺の群れのあとをついてきた人は

俺が気になり近づくとじっとして何もしてこなかったんだな……

俺、ゴリラの筋力が何倍もあって危険なことを知っていたんだな……


「たぶんその人は……研究者だったのね」


ケンキュウシャ?


「調べる人。その人はゴリラという動物を調べている人だったのね。」


ふーむ……

俺は気になり、ターンという大きい音で俺たちゴリラを殺した人についても聞いた。


白い少女は涙目になり悲しい顔をして言った。

「ああ……それはきっと密猟者ね……この世界には銃はほとんど無いんだけど……あなたや家族はその銃で撃たれたのね……」


密猟者か……それでジュウってなんだ?


「もともとは動物を殺すために開発された兵器の一種。でも、あなたの来た世界ではその銃が沢山沢山あってね、人同士でも毎日のように沢山殺しあっているわ……」


本当に……?

俺は尋ねた……人はどうして……殺しあうの……?


「厳密に言うと、あなたの来た世界の丸耳の人間だけどね……そこまではあまりよくわからないわ……私は一応……エルフだもの……精神の構造が異なるのよ……」

白い少女は肩をすくめて溜息を吐いた。


「それと、先ほど言ったことは内緒よ……本来はね、たとえ異世界を観測した結果であれ未来のことを知らないはずの人に言うのは禁じられているの……でもあなたはこの時代の人ではないし、ましてや異世界から来たゴリラだしね……?」


ほう……?その意味はあまりよくわからんが……

他人には言ってはいけないということだけは分かった……


白い少女は顔をかしげて言う。

「それで、あなたが知性の加護を選んだのは一体何なのかな……?この加護を選ばなかったら知らないままだったわよ……?たぶん本来のゴリラのままでいたほうが幸せよ……?」


俺はしばし思案する……沈黙……


それはそうかもしれない……


だが俺は人の言葉ではっきり答えた。

「俺は……ただ……人の……やること……なすことが知りたかったんだ……」


白い少女はそれを聞いて深く考え込むように、間をおいてから答える。


「……なるほどね……ゴリラを研究する人がいたように、あなたは本当は『人』を研究……したかったのかもね」


……そうかも。


「それなら……なおさら人の世界にもっと飛び込んでみなくちゃいけないわね……私のようなエルフをいくら研究したとしても意味ないわよ……?私は丸耳の人間じゃないからね……?」

白い少女は肩をすくめ、ハの字の眉になり、その尖った耳は交互に上下した。


俺はその尖った耳を見て考え込む。


それは……一理あるな……

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