哀れなシルバーバック
現代のジャングル、場所はおそらくコンゴあたりだろうか。
そこにはニシローランドゴリラ等が生息している。
ゴリラの群れを率いる成熟したオスのゴリラは背中が白いため、シルバーバックと呼ばれる。
そのシルバーバックの群れが人間に襲われていた。
人間は密猟者だった。今回の標的はニシローランドゴリラだった。
シルバーバックは群れの仲間を守ろうと抵抗した。
ドラミングをした。
しかし密猟者には効果が無かった。
突進した。
密猟者はこうげきをかわした。
腕でパンチをしたり噛みつこうとした。
密猟者はこうげきをかわした。
密猟者は懐から木の枝のようなものを取り出した。
そして構えた。
木の枝のようなものはターンという大きな音がしたのち、我々を殺す。
それくらいシルバーバックにはわかる。どうしてそうなるのかのしくみは全くわからない。
だがそれでもシルバーバックは立ち向かう。群れ、、家族を守るために。
攻防のすえにシルバーバックはとうとう撃たれた。
シルバーバックは気合でしばらくたっていたが倒れてしまった。
しかし倒れてもなお家族を思いやった。
近くの鳴き声が聞こえない。
どうやらシルバーバックの周りの雌ゴリラたちも撃たれてしまったようだ。
いや、遠くでかすかに小さな声がする。
……俺の子どもの声だ。
密猟者は悲鳴を発するゴリラの子どもを袋に詰め、連れ去っていくのが見える。
何故袋に詰めるのかの理由はわからない。
大人のゴリラは大抵ブッシュミート……つまり食用にされる。
……何故知っているのか?
若い頃に人間の暮らす縄張りにバナナを命がけで拝借しに行ったことがある。
そのとき人間は肉を焼いていた、そのなかにゴリラの匂いもあったからだ。
そんなことを今さら思い出しても何の意味もない……
俺は敗北したのだ……
……だんだん目の前が暗くなる。体が冷えていく。寒い。寒い。
周りの環境音すら遠ざかっていく。
シルバーバックに言葉が存在していたならこう語っていたかもしれない。
「俺は家族を守れなかった……すまねぇ……すまねぇ」
「ねむる……ねむる……」
「……苦痛のない穴にさようなら……」
「……」
シルバーバックは死んだ。




