ゴリラ ヒト ……ニテイル?
メーロッパ森林内
俺……ゴリラは白い少女とともに風を起こす魔法を練習をしていた。
白い少女は出会う前から魔法の扱いに長けていたらしく様々な風を手から放出する。
オマーキはそれをみてそよ風程度の風を手から放出する……
『テ』か……
『ジンタイズカン』という『ホン』では人の前足は『テ』と呼ばれ……
『アシ』とは区別され、何やら特別な意味があるらしい……
白い少女の足をみると形が俺やオマーキをはじめ猿たちとはとても違う……
人の手と足はなぜこんなに違う形をしているのだろう?不思議だ……
俺は片脚を挙げ、その足でも風を起こす魔法が出ないか試してみた……
うーむ、風を起こす魔法は出ないなあ……
オマーキはその様子を見て、さっと片脚を挙げて足から風を起こす魔法を放出させる。
その様子をみて白い少女はくすくすわらっている。
「アハハハハ!そうだね!ゴリラの足ハ……手ニモニテイルモンネ!」
『ニテイル』……って何?
俺は猿の鳴き声を交え問う。
少女はしばし思案してから猿の鳴き声で答える。
『少し』『同じ』『でも』『少し』『違う』……
続けて人の言葉で答える。『これガ、ニテイル』!
ふーむ……新しい言葉と概念を俺はまた一つ覚えた。『似ている』か……
俺は何か考える……風を起こす魔法の練習を止め腰を下ろす……
手をゆっくり叩き「オイア」と発音し、ゴリラの意味を示してから、
続けて猿の鳴き声で『人』……
……さらに続けて発音する。「イエイウ?」
「ゴリラと人は似ているの?」と訊きたかったのだ。
白い少女はすぐさまその意味を理解したようだが、
その尖った耳がぴくぴく上下し……
やや困惑したような……上目遣いになり……
樹と樹との間に映る青空を仰ぎ見る……
ようやくこちらを見て答える。
「エット……似ているケド……ここノ人ニハ……ヒミツダヨ……」
「あなたハゴリラ……人デハ無いカラ、ここノ人にはヒミツダヨ……」
その視線は丸耳の人間の縄張りのほうを向いている。
その尖った耳はあたかも小動物が周りを警戒するように前後に動いている。
……『ヒミツ』?
少女は地面に置いてあったベリーを一つ
手に取ると穴を掘って地面に隠した。
……ああ、隠すに近いという意味か?
「そうだ」
俺は、オマーキは似ているのか?と先ほどと同じようにして訊く。
「似ているケド、違う……尻尾のアル猿ダカラ……」
オマーキはなんのこっちゃ?っという顔をしている。
そしてその長く伸びた尻尾をこちらにフリフリ上下左右に動かして見せた。
……尻尾?
あれ?ほんとだ?人も俺も尻尾が無い……
俺は考える……
……?
……???
俺、ゴリラとチンパンジーも尻尾が無い大きな猿……
人も尻尾が無い……
ということは人も似ている……似ている……『猿』なの?
それを少女に問いかけてみると
少女はギョッとした顔をしている。
尖った耳はピン!と上のほうを向いた。
すぐさま少女は両手で口を覆う仕草をして人の言葉を発する。
『シーッ!』『ヒミツ!』『言わナイ!』
続けて意図を明確に伝えるように猿の鳴き声で続けて言う。
「だます!」「隠す!」「埋める!」「人」「鳴き声」「いいえ!」「いいえ!」
なんだかよくわからんが……
俺がたとえ発音できるようになっても、
それは人の言葉で言ってはいけないこと……なのか?
『ここヤあそこではダメ!』『ここノ人ノ暮らすバショデハ……ヒミツ!』
『あなたは人トゴリラガ……似ているヲ言っテハ……ダメ!』
『それと……人ニ猿ト言うノモダメ!』
少女の顔はいつになく真剣になっている。
……なぜ?
少女は顔をしかめて言う。
『踏ンダ毒蛇ニ噛まれるヨウナモノダ!』
え……毒蛇……?!
俺は……あのおぞましい毒蛇に噛まれて苦痛を味わい、
死に至るイメージを想像してぞっとする……
更に生前にあった密猟者のイメージが脳裏によぎる……
ターン……
……ああ、そうか……
白い少女の存在にすっかり慣れてしまっていたが、
人の中にはかなり危険なも居たしな……
分かったよ……ヒミツにするよ……
白い少女は頷いて言った。
「うん、ヤクソクダヨ」
続けて確かめるように猿の鳴き声でも言った。
「守る!」「守る!」
……俺はしばし呆けたまま白い少女の……
尻尾の無い姿をみつつ……動けなかった。腰が抜けていたのだ。
その日の風を起こす魔法の練習は動揺のあまりもうできなかった……




