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オウムと猿の合唱団

メーロッパ森林内


その大木はすでに朽ち果てており危険なので切られた。

その大きな切り株に一匹の鳥が立っている。

あの人の言葉を真似する鳥だ。


それは「オウム」と呼ばれることをゴリラの俺は知った。

今の俺は言葉はまだ上手く話せぬが……「ズカン」の絵とともに描かれている、

ヘビのようにうにょうにょしたもの……「モジ」というものの

意味も今ではなんとなく分かるようになってきた……。


切り株の上にオウム、傍らには白い少女がたっている。

それをオマーキをはじめ、猿たちが周囲を囲むようにして座っている。


オウムが何やら言葉を発する。

「ユーシャ♪マオウ♪トウバツ♪」


どうやら、近くの酒場とやらに集う人間が

歌っているのをオウムは覚えたらしい。

オウム自身はその意味をあまり知っていないようだが

とにかくその人の声を真似する能力には舌を巻く。


白い少女は手を掲げて言う。

「コエマネ!」


号令を聞いて最初にオマーキが口をもごもご動かす。

「ウーイァ♪マオウ♪オウバウ♪」


他の猿たちも順に続いて、猿なりに声の真似をする。

「ウーキャ!キャオウ!コウアウ!」


個体によって発声にばらつきがある。

どれもオウム程上手くマネできていない。


オウムはリズムをとってノリノリで体を動かす。頭を上下にふる。

「ユウキ♪フリシボレ♪オレタチャテキナシ♪」


白い少女は再び手を掲げ号令が響く。

「コエマネ!」


オマーキ「ウウキ♪ウイチオレ♪オエアイァエイナイ♪」


猿たち「キウキ!ウキキオケ!オケカキャエイナイ!」


その様子をゴリラの俺はただ眺めている……

リズムカルに踊るオウムとそれに続く猿の合唱に

俺もなんだか心が弾んでくるような気になる。


俺はリズムに合わせて頭を上下に振る。


すると白い少女は俺に向かって「コエマネ!」と号令をかけた。

……それが声を真似しろという意味は分かるが、

今までに何度も試した経験からゴリラの俺には無理だと俺は信じている……

……そのリズムに乗りつつも、ドラミングで誤魔化した。

「ウホホ♪ホホホアア♪ホホアホホアアアア♪」


すると白い少女はむくれた顔をしている……

そして俺に対してそっぽを向いた……


再び、オウムと猿たちの合唱が続く……


オウムはただそれ自体を楽しんでいるらしく

定期的に切り株にやってきては歌を歌いだす。

そういうことが何回も繰り返された。


一か月後


オウム

「ダトウ♪マオウチンパンジー♪マケルナニンゲン♪」


白い少女はいつものように手を掲げ号令を発する。

「コエマネ!」


オマーキ

「ダトウ♪マオウチンパンジー♪マケルナニンゲン♪」


……あれ……?俺の聞き間違いかな……

オマーキがオウムのように声の真似が上手くなっている……


白い少女は手を叩いてオマーキをほめる。

「ヨクデキマシタ!エライ!エライ!」


それを見て俺は考える……

ふーむ……オマーキにできることなら俺は今まで全部できた……

なぜできないのだろう……でも上手に発音できる猿はオマーキだけだ……

オウムとオマーキを交互に見て思案にふける……


白い少女はそれを見て、

ふふん、それ見たことかとでもいうような顔をしている。

何故かオマーキまで得意げな顔をしている。


ああ、何故だろう……悔しいなあ……


でも白い少女はその俺の問いかけにすぐに答えた。

「ジンタイズカン」のやらの「ページ」を開く。

そこには人の断面図のようなもの絵が描かれている。

最初に見て意味を理解したときはギョッとしたものだが……


そこに「クチ」があって、「シタ」があって……「ノド」がある……

少女はパラパラとページをめくる……

少女は最後の何も書かれていないページに

前もって何かを描いてきたらしい……


少女は言う。

「コレガゴリラノクチトシタトノド」


ふーむ、これがゴリラの口と舌と喉ね……


「ゴリラハコレラガヒトトチガウカラ」

「オウムノヨウニコエマネデキナイ」


え……そうなの……?知らなかった……

つまり、俺はゴリラだから人とは口と舌と喉の構造が違うから

どんなに頑張っても声の真似は出来ないってこと……?

俺は……ショックを受けて……うなだれる……


少女が手を俺の後頭部にやさしくかけてくれる……

慰めてくれているのは分かるが……


ふと視界にオマーキが目に入る。


……


……あれ?


それならオマーキは何で上手く声の真似ができたんだ?


白い少女は俺の意図を察して答えた。

「オマーキ」「ノドニカゼノマホウ」


え……?


ああ、時々オマーキが遊びで使っている風を起こす魔法ね……


「アナタモカゼノマホウ」「オボエル!」


えっ……俺も、オマーキみたいに風の魔法覚えれば……

オマーキみたいに声の真似ができるってこと……?


「ソウダ」


……そうなの?本当に?

俺は訝し気な顔をする。


少女の顔を見ると自信満々だ。

というより、それさえマスターすれば

ゴリラの俺でもできるって信じている顔だ。

ああ、この白い少女は、俺と違ってなんて前向きなのだろうか……


その日以来、オマーキの風の魔法を出す特訓を

白い少女と一緒に日々練習し始めた。


それとともに新たな号令が俺に課せられる。

「シタマネ!」

少女の舌の動きを見て、それを模倣する練習も

俺はし始めた…… 


……ん?ということはオマーキは

自発的に舌の動きも学習したってこと?まじで……?

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