魔物の糞の話
海底を、ロブスターのような姿の人型の海底人を先頭にして、
鎧を着た年配と若造の魔族が並んで歩いていた。
若造の魔族が怪訝そうな顔をして年配の魔族に言った。
「……なんでパーティみたいになっているんですか……?」
年配の魔族は言った。
「そりゃお前さん、この海底人のパンチは極めて危険じゃからな……わしらは後方を歩いたほうがより安全なのじゃ……それに、目的地はほぼ同じじゃからな……」
「目的地が……ほぼ同じ?」
「この海底人の目的地はエサとなる動物の魚介類が多数集まるところじゃ。そこは深海からの栄養を含んだ冷水と、表層の温水が交わり、植物のプランクトンなどが大量に発生する。するとそこにはプランクトン目当てに動物の魚介類が集まる。そして、動物の魚介類が集まるところは潮目といってな、わしらの目指す陸地の近くということになる……というわけじゃな。」
若造の魔族は感嘆して言う。
「はぇー」
海底人は沈黙後に答える。
「そうだ 俺の 目指す地は 魚が 沢山いる ところだ! あそこで 狩りを しまくる!」
そういうと両腕のハサミを掲げカチカチ鳴らした。意気込んでいるようだ。
「ところで 俺に ついてくるなら…… 俺の ハラがへったら 魔法で また 狩りしてくれるか?」
「むろんじゃ。おぬしが魔力をいくらでも分けてくれるというなら断る理由は何もないわい。わしらは魔力はできるだけ節約しておきたいからのう。」
「ところで、海底人の魔力が回復してきましたね……今は謎のパワーも特に降り注いでいないのに……?なんででしょうか?」
「ん?ああ……さっき海底人が新鮮な動物の魚を沢山食べておったじゃろ。動物が魔力を蓄えるのは他の動物を経口摂取し消化吸収することによっても行われる。いわゆる、魔力の生物濃縮じゃな……ただ、死んだ動物の細胞組織は魔力を短時間のうちに周囲に放出してしまう……もし食べさせるならエサはなるべく新鮮なほうがいいという訳じゃな。」
「へぇー?じゃあ我々人型の魔族が動物を積極的に狩らないのは何故でしょうか?」
年配の魔族は呆れた顔をして言う。
「……先ほど動物は生きた魔力の蓄電池といったじゃろ……生きている限り半永久的に繰り返し何度も使える蓄電池じゃぞ……?それを食事などというたった一回の行為のために殺して完全破壊するなんて……実に馬鹿げておるわい……それに我々魔物や魔族は生命維持するには魔力さえあればそれだけで十分なんじゃ。本来は食事する必要すらないぞい……」
「えっ……!?私は……以前、丸耳の人間と一緒にわいわい食事をしてましたけど……?」
「ああ……そりゃ、人間に擬態してるだけじゃな……。見た目は人間にそっくりなのに全く食事に興味を示さずしかも食事をとらずに平気で生きられる人間が隣に居たら実に怪しいことこの上ないわい……まあ効率は劣るとはいえ魔力の補給にはなるがな……魔物や魔族が、動物を食べると消化管で魔力を搾り取りこそするが、動物にとっての栄養となるものはほとんど吸収しない。従って栄養に富んだ糞になるだけじゃ……あえて馬型の魔物に餌を食わせその糞を上質な肥料として利用している人間も中にはおるくらいじゃ……」
「擬態……肥料……」
「(沈黙後)なんだ? うんこの はなしか? やめてくれ 俺は そういうの とても 嫌いだ…… せっかく 美味しい 魚について 考えていた のに……」
先頭を歩く海底人は振り返り顔をこちらに向け横目で見つつ困惑し嫌そうな顔をしている。
年配の魔族は素直に謝った。
「ふむ……すまんのう……」




