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ゴリラ ヒト コトバ

メーロッパの森林内

俺は相変わらず森林の住ゴリラとして暮らしている。


猿たちと俺の群れに再び白い少女が戻ってきた。

今度は何か四角いものを携えている。


俺は鈍器ではないか?と警戒し身構える。

でもそれはおそらく鈍器ではないと理解した。

少女が座り片方の厚い羽を持ち動かすと、四角いそれはチョウチョのように羽を開く。

たくさん……たくさんの薄い四角い羽が並んでいて

そこに動物の姿を象った模様が沢山並んでいる。


俺は猿の声でいう。「何?」


少女は答える。「ホン」「ズカン」

異世界人の言葉だったから意味はわからないがその四角いものはそう呼ばれるらしい。


また、少女の行動も以前とは変わってきた。

状況に応じてそれに非常に短い人の言葉を発するようになった。


俺はほとんど意味が分からなかったが、

「ホン」「ズカン」と同じような短い音の連続。

今までも少女はたくさん話しかけてきたが、

それの中には聞き覚えがある音も混じっているようだ……


ある時


「ヒヒヒヒ!」

 

小鳥が、その小鳥を襲う尖った嘴の大きな肉食性の鳥を警戒して鳴き声を発する。

それは大抵、特定の鳥を差し示し、上を見て警戒しろということだ。


近くにいる他の模様の違ういくつかの小鳥たちは

それぞれ模様に応じて違った鳴き声を発するが、

大体同じことを意味する。その鳥たちも上を見上げて警戒する。


猿たちは不安げそうに上をみあげているが、

俺はゴリラなのでその大型の鳥はあまり脅威というわけではない。

だがその様子をみた直後に少女はすぐに人の言葉を発する。


「タカ」「タカ」少女は小鳥のように上を見上げて警戒をする表情をする。


少女にとってもその大型の鳥は脅威ではないはずだ。

……少女は一体何がしたいのだろう?


俺が何か思案気な顔をしていると少女は急いでそのホンとやらを開き、

それを俺に見せてくる。


肉食性の鳥はやがて狩りをあきらめ飛び去って行った。


何だろう。そのホンのとある四角い白い羽の模様には

直前まで小鳥たちが警戒していた肉食性の鳥が見える。

そして少女はまた「タカ」「タカ」といった。


また、別のある時


「ジャージャー」

 

とある小鳥が鳴いたので

俺はあわてて木に登る。これは「ヘビだ!」という意味だ。


ヘビは去っていった。


俺は安堵する。


だが、少女はおもむろにホンを開き、それを見せてくる。

そして下を見て小鳥のように警戒をする表情をしている。


……おかしいな。いつもの少女はヘビを警戒しないはずだ。


ホンを見ると別の四角い羽には今度はヘビが見えた。

本物ではないとはいえ俺はヘビが怖いので目を背ける。

少女はまた言葉を発した。「ヘビ」「ヘビ」


そいう風に、少女は様々な鳥や小型の獣が天敵を警戒し鳴き声を挙げるたびに

その行動を繰り返してきた。何度も何度も。


何度も繰り返すので耳に入ってきたその短い言葉はすっかり記憶に定着してしまった。


数日後


「ヘビ!」「ヘビ!」


白い少女がその短い言葉を発すると俺はなぜか

小鳥の発する「ジャージャー」などを連想してしまいあわてて木に登る。

そこでふと思い出す。


……以前は少女はジャージャーと鳴いたときそこにはヘビはいなかった……

また、俺をからかったのか……?俺は疑心暗鬼にかられる。


しかしそばにいた猿はヘビの意味を示す鳴き声をあげ下を見下ろし警戒している。

すると少し遅れて、やや離れた遠くにいた小鳥がジャージャーと鳴くのが聞こえてきた。


……本当にヘビが居た。


ヘビは鎌首をもたげ、舌をチロチロし、こちらをしばし眺めると去っていった。


そのヘビはしばしばみかけるヘビではなく、

白と黒と赤の縞模様をした毒ヘビだった……。


少女にとってもこの種類のヘビは脅威であるらしく、

いつものホンを開く行為すら忘れているようだった。

その表情はやや恐怖におののいている。


俺は恐怖でしばらく震えていたが、

落ち着きを取り戻すと少女に猿の言葉で聞いた。


「ヘビ」「人」「それ」……「同じ?」「鳴き声?」


少女はうなずいた。


……!そうか!そうなのか!?


俺はやや驚愕し再び猿の言葉で聞く。


「あなた」「人」「鳴き声」……「教える?」


少女はにんまりとした顔でうなずいた。


やはり……俺に……ゴリラに……

異世界人の言葉を……教えようとしている……?


少女は猿の言葉で言った。

「あなた」「人」「鳴き声」「欲しい?」

続けて人の言葉を発した。

「アナタ」「ヒト」「ナキゴエ」「ホシイ?」


少女は次は首を横に振ってから猿の言葉で言う。

「いいえ」「人」「鳴き声」「覚える」

続けて人の言葉を発した。

「イイエ」「ヒト」「ナキゴエ」「オボエル」


……ふむ……?


人の言葉を話したければ……

そのまえに人の言葉を覚えるのだってことか……?


俺が問いかけたそうな顔をすると、

その前に少女がうなずいて答えた。


「ソウダ」


あっ……なんとなく異世界人の言葉の意味がわかってきたような気がする……?


その日以来、俺は少女の言葉に真剣に耳を傾けて、

ホンをしげしげと眺めるようになっていった。


少女はホンを開きながらぽつりと思案そうな顔をしてつぶやいた。


「ヒトノ……コトバ」

「『知性』ノ『加護』ノアル……『ゴリラ』ナラ……ヒトノコトバヲ……オボエラレルハズ……」

「ツギハ……ユビサシノ……リカイ……イヌ……ホカニハ……オカネ……カガミ……ダロウカ……?」

「ダンカイヲフメバ……イズレハ……マホウモ……キット……オボエラレルハズ……ジカンカカルナア……」



少女は深い思考にふけるあまり気づいていなかったが、

猿たちの中のうち特に利口な個体が遊びで非常に原始的な風を起こす魔法を使っていた。

周りの猿たちは驚いて散り散りに逃げ出す。その猿は笑いの鳴き声を挙げている。


少女はその風や声に気づいて、猿のほうを振り向くと信じられないものをみたような顔をして、言った。


「アリエナイ……オマキザルガ……カゼノマホウヲ……ツカッテル……!?」

「チノウ……エンジン……ナミ……?」

「マテヨ……コノ……オマキザルヲ……『ゴリラ』ノセンセイニスルカ……?」


少女はその猿を猿の鳴き声で呼びつけると猿の声で言った。

「わたし」少女は自分を指さす。次に猿を指さして「あなた」「オマーキ」

「わたし」少女は自分を指さす。次に猿を指さして「あなた」「オマーキ」


その「オマーキ」という単語に特に深い意味はなにもなかった。

その個体を呼び出せればそれだけで充分だったからだ。

その猿は「オマーキ」が自分のことを示す意味だと即座に理解した。


(※なお、科学の発展した魔法の無い異世界にはメーロッパに相当する地方にはオマキザルの仲間は生息していない。ゆえにフサオマキザルによく似るが異なる種である。メーロッパ固有の……メーロッパオマキザルとでもいおうか……。なお、フサオマキザルは南米のチンパンジーとも呼ばれ知能の高い猿とされている。)

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