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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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18.振るう者、振るわれる者

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


グラフの想い人

ルミナス・エフェメール

アリスの言葉に、グラフは息を呑む。


「先に聞きたいのだけれど、グラフのブラッディローズで作られる大きな斧。

それは、あなたと適合していると思っているのかしら?」


「……どういう意味だ?」


グラフの低い声に、アリスは肩をすくめる。


「いいわ。今ここで適性を見てあげる」


アリスは畳まれていた天球儀を取り出し、左手のひらに浮かせる。

それはゆっくりと展開し、円を描くように広がっていく。


「グラフ、こっちを見なさいな」


右手の指を軽く揺らし、視線を誘う。


次の瞬間──天球儀が淡く光り出した。


光はやがて強さを増し、空間そのものを包み込む。


「──っ!」


思わず目を細め、グラフは息を詰まらせた。


やがて光は静かに収まり、天球儀は再びアリスの手元でゆらゆらと揺れている。


沈黙。


「……分かったわ」


その声は、わずかに重い。


アリスの表情には、微かな苦さが滲んでいた。


「あなたの気持ちは分からないでもないわ。

でもね……無理して扱うのは違う」


言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける。


「私の言っている意味……分かるわよね?」


「……ああ」


短い返事。だが、その奥にわずかな揺れがあった。


「なら、次の話を聞いてから判断しなさい」


一拍。


「ふふ……まさかクロスリーパーのあなたに、武器の適性の話をするなんてね」


小さく息をつき、アリスは続ける。


「武器とは何か、考えたことはあるかしら?」


「……なんだそれは」


「本来、武器は“身体の延長”よ」


一歩、言葉を踏み込む。


「手で握り、地に足をつけて、力を乗せて振り抜く。

自分の動きと完全に一致して、初めて“武器”になる」


静かに、しかし確信を持って。


「でも、グラフの戦い方は違う」


「……」


「あなたのブラッディローズで作られた斧は大きすぎる。遠心力に頼って、振り回しているだけ」


言い切る。


「それは“扱っている”んじゃない。“振り回されている”のよ」


その一言が、深く突き刺さる。


グラフの指先が、わずかに強く握られた。


「……そうか……」


小さく、漏れる声。


「……やっぱり、そう見えるか」


視線を落とす。


これまでの戦いが、一瞬だけ脳裏をよぎる。


「それもある。でもね──」


アリスは天球儀に視線を落とす。


「私は“見た”のよ。あなたの適性を」


静かに顔を上げる。


「……だから分かる」


グラフはゆっくりと顔を上げた。


「……聞かせてくれ」


低く、しかし逃げない声。


「俺の適性は……何なんだ」


一瞬の静寂。


そして──アリスは、はっきりと告げた。


「“片手剣”よ」


その言葉は、重く落ちる。


「片手で扱える、限界に近い重さの剣。

あなたの力と速度、その両方を活かせる形」


グラフの瞳が、わずかに揺れる。


斧ではない。


今までの自分を、否定する答え。


だが──


「……そうか」


静かに息を吐く。


「……やはり、そうか」


否定はしなかった。


ただ、受け入れる。


「分かった」


その一言に、迷いはなかった。


グラフは顔を上げ、アリスをまっすぐ見据える。


「話の途中で悪いが……アリスの話を聞いて一つ行くところを思い出した」


その目には、確かな意志が宿っていた。


アリスは一瞬だけ見つめ──静かに頷く。


「ええ、分かったわ。

でも、アンディたちの作業が終わるまでには戻ってきなさいな」


「分かっている」


短く答える。


「……すまないが、それまでジェシカのことを頼む」


「任せておきなさい」


それだけで十分だった。


グラフは踵を返し、リビングを後にする。


扉を抜け、屋敷の外へ。


夜の空気が、肌に触れる。


静かな夜空を見上げ──小さく、呟いた。


「……ルミ」


その名に、迷いはなかった。


次の瞬間。


赤い花びらが舞い、ブラッディローズが形成される。


そして──


グラフの姿は、夜の中へと消えていった。


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