表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/93

15.届かなかった声

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


グラフの想い人

ルミナス・エフェメール

──魅惑のアリュール廃城跡。


太陽が真上に見える、ちょうど昼下がり。


ジェシカとグラフは、アリュールとの戦いがあった城跡の一室で、椅子に腰を下ろしていた。


先に口を開いたのはジェシカだった。


「グラフの過去って、確か……同族の命を奪ったって話してくれたこと?」


ジェシカの言葉に、グラフは帽子を被り直し、少し空の方へ顔を向けて語り始める。


「……そうだ。俺はやってはいけない行為をやってしまった。いわゆる罪人(つみびと)だ」


視線を落とすグラフ。その様子は、過去の行いを悔いているように見えた。


ジェシカは何も言わず、ただ耳を傾ける。


「俺がまだ集落でくすぶっていた時期に……一人の同族と語り合っていた。


……その名は……ルミ。


いや……ルミナス・エフェメール」


一拍。


「……俺は……強くなってルミを振り向かせることだけを考えていた。


そんなある日、俺に一つの話が舞い込んできた。


……死者狩りとして、同族たちから声がかかったんだ。


飛びついたさ。これで俺の力を誇示できる、そう思ったからな。


出発の前日、俺はルミにこのことを話して、強さをアピールしたんだ。


……それだけが、俺に振り向いてくれる唯一の方法だと、当時は思っていた」


わずかに息を吐く。


「その時だ。俺がアンディたちと出会ったのは」


グラフの話に、ジェシカは少し前のめりになって耳を傾ける。


「へー、そうなんだ! それってアンディもグラフと同じくらいってこと?」


「……そうだな。ただ、あいつは当時から期待されていた存在だった。


俺とは正反対だったよ」


小さく自嘲気味に笑う。


「そんな俺は死者狩りに向かい、成果を上げた。


それからも遠征に行くたびに成果を出して、俺はもっと自分の実力を周りに示したいと思うようになっていた」


一度、言葉を切る。


「そんなある日だ。覚醒者の依頼が来た。


当時の俺は負け知らずで、周りが見えていなかった。


いつものように、その依頼も受けたんだ」


わずかに声が低くなる。


「まだ覚醒者の怖さも、強さも、異質さも知らないままな……」


ジェシカは黙って頷く。


「その日の夜、話を聞きつけたルミが、焦った様子で俺のところに来た。


……危険な依頼だから、行くべきじゃないってな」


苦く笑う。


「だが俺は、この依頼を無事に終わらせることができれば、ルミも俺のことを認めて、一緒になれると思っていた」


言葉が一瞬詰まる。


ジェシカは何も言わず、ただ真剣な眼差しで見つめている。


「……出発当日、俺たちクロスリーパーは六人で覚醒者狩りに向かった。


目的地までの道のりは、普段の遠征と何も変わらなかった」


静かに続ける。


「だがな……遠征に出てから三日が経った、雲一つない満月の夜に、事は起きた」


空気がわずかに張り詰める。


「一人の仲間の断末魔が、森に響いたんだ。

その声に、全員が身構えた。心音を探った……だが、何も感じない。

心音どころか、気配すらなかった」


ゆっくりと語る。


「まるで最初から、そこに何もなかったみたいにな」


低く、続ける。


「俺は叫び声の聞こえた方へ向かった。……仲間を助けるために」


一瞬の沈黙。


「だが、そこにあったのは──顔は半分喰われ、四肢はなく、腹は裂かれ、乱雑に貪られた仲間の姿だった」


ジェシカの指が、わずかに強く握られる。


「……その光景を見て、俺は腰が引け声も出た」


目を細める。


「そして、暗闇の中──小さな影が、俺の前に現れ、低くはっきりとそいつは言ったんだ」


「“……ボクのこと、怖いかい?”ってな……。」


空気が、冷える。


「その瞬間、俺は死を覚悟した」


一拍。


「だが、仲間が俺を助けに来てくれた」


わずかに安堵が滲むが──すぐに消える。


「……次の瞬間、そいつは笑ってたよ。

一瞬だったよ……四人の同志は血の海と化した」


ジェシカの息が止まる。


「暗闇の中で、何が起きたのか分からなかった。

ただ、気づいた時には……仲間はもういなかった」


低く、続ける。


「そんな俺を見て、そいつはまた言ったよ……」


「“──ほら、早く逃げないと、殺しちゃうよ”」


わずかに震える声。


「俺は……逃げた」


拳がわずかに震える。


「振り返ることもできず、ただ必死に走った」


「だがあいつは、笑いながら俺との距離を保ち、死なない程度に傷を与えて遊んでいた」


歯を食いしばる。


「気づけば、自分がどこにいるのかも分からなくなっていた。

その頃には既に、夜が明けていた」


わずかに視線を上げる。


「その時だった。奴は、俺じゃない方向を見た」

そして──笑った」


短い沈黙。


「次の瞬間、そいつの姿は、俺の前から消えた」


息を吐く。


「……助かったと思ったさ」


だが、すぐに表情が曇る。


「……だがな」


静かに続ける。


「遠くから、確かに聞こえたんだ……

"ルミの声"がな……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ