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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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14.刃は語り、心は応える

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード

──魅惑のアリュール廃城跡。


「──ブラッディローズ」


赤い花びらが手の周囲に広がる。

次の瞬間、瞳が赤く染まり、身体解放が発動する。


グラフの手には、ブラッディローズで形成された赤黒い両手斧。


それを強く握りしめ、地を抉るように踏み込み、ジェシカとの距離を一気に詰めた。


その動きを、ジェシカは静かに見据えていた。


「……分かったよ、グラフ。その気持ちに応える。

──ブラッディローズ」


真紅の花びらが、嵐のようにジェシカの周囲で咲き乱れる。


一瞬、踏み込んだはずのグラフが、逆に間合いを外す。


その意図を悟りながら、ジェシカはただ一言。


「……来い」


その言葉に、グラフの視界から世界が消える。

残ったのは、ジェシカただ一人。


蒼い瞳は、完全に真紅へと染まっていた。


「ふっ……ジェシカ……」


息を吐く。

腰を落とし、重心を沈める。


そして──踏み込む。


空気が弾けた。


一瞬で間合いを潰し、両手斧を振りかざす。


「──ッ!!」


全身の力を乗せた一撃が、ジェシカへと振り下ろされる。


轟音。


地面が砕け、衝撃で砂塵が爆ぜ上がる。


「──くっ!!」


だが、漏れたのはグラフの声だった。


砂煙が、ゆっくりと晴れていく。


その中に立っていたのは──片手で両手斧を受け止めている、ジェシカだった。


左手で刃を掴み、微動だにしていない。


「……っ」


軋むのは、グラフの腕だ。


その瞬間。ジェシカの右手に、真紅の短剣が現れる。


次の瞬間には──懐に入っていた。


視認できない速度。


「くっ……まだだ」


一瞬の隙にジェシカの刃は、グラフの眼前──

わずか一ミリで止まっている。


だが、その瞳は死んでいない。


「ねえ……何でこんなことを……」


「……」


グラフは、その短剣を自らの手で握り締める。


刃が食い込み、血が滴る。


それでも、離さない。


「ねえ、グラフ……」


ゆっくりと、刃が顔から離れる。


その一瞬の隙を逃さず、グラフは後方へ跳ぶ。


着地と同時に膝が沈む。


「はあ……はあ……」


荒い息遣い。視界が揺れる。


だが──口元だけが、笑っていた。


「ふっ……よく分かったぜ……」


その瞬間。


空気が、凍りつく。


「俺の全力だ!!」


グラフの身体から、異常なまでの圧が溢れ出す。


──身体解放。

──ブラッディローズ。


その両方を、限界を超えて維持していた。


血が焼ける。

意識が削れる。


このまま続ければ──確実に死ぬ。


それでも、止めない。


(このままじゃ終われねぇ……!!)


その覚悟を、ジェシカは理解した。


「……分かったよ、グラフ」


今にも涙で溢れそうな瞳を閉じ、一筋の涙が、頬を伝う。


「──スカーレットローズ」


次の瞬間。世界が、紅に染まる。


血の薔薇が咲き乱れ、風を裂いて舞い上がる。


「身体解放」


青白いオーラが、その身を包み、紅い羽も風に煽られ舞う。


静かに瞳を開く。


その視線は、ただ一人に向けられる。


グラフだけに。


その姿に、グラフの表情がわずかに緩む。


「……ありがとうよ、ジェシカ」


深く息を吸う。


「──行くぞ!!」


踏み込む。


地面が砕ける。


全てを乗せた一撃。


だが、ジェシカには届かない。


「……くっ! まだだ!!」


斬る。叩く。振り抜く。


何度も。


何度も。


何度も。


だが、そのすべてが弾かれる。


(当たらねぇ……!)


そのとき。


ジェシカの手には金色に輝く刀が現れた。


その輝きが、視界を焼いた。


その刹那──音が消え、世界が止まる。


心臓の音だけが、やけに大きく響く。


ドクン。


気づいた時にはジェシカの姿は、視界から消えていた。


「……なっ!?」


グラフの声が漏れた瞬間。ジェシカの声が、グラフの耳にしっかりと届いた。


「……これが終わったら、ちゃんと話、聞かせてね」


その言葉と同時に。


グラフの力が、完全に抜け膝が崩れ落ちる。


地面に、手と膝をつく。


その視界の先に、ジェシカが立っていた。


完敗だった……。


──────────


「……グラフ」


差し出される手。


「ああ……分かってるさ」


その手を握り、引き寄せられてる。


「血、使いすぎたよね。

結晶を使いすぎるのはよくないから……」


そう言うとジェシカは、自らの首元を差し出す。


「……飲んで」


グラフは一瞬の迷いった。しかし何も言わず牙を立てた。


温かい血が、流れ込んだ……。


ドクン。


渇きが潤い、心音が落ち着いて行く……。


するとグラフはその場に座り込み、ゆっくりと口を開いた。


「今度の依頼──俺、アンディ、クロードは同行しない。

……いや、今のままじゃ、できない」


「どういうこと!?」


グラフは、アリスとの話を隠さず語った。


「……そうだったんだね。進化なんて……

確かに、私だけっていうのもおかしな話だよね」


小さく笑う。


「それなら、仕方ないか!」


「だが、研究が終わって進化の兆しが見えたら、すぐに駆けつける」


「えへへ、ありがとう。

リベリオンとアルカナンのことはなんとかやるかさ、心配しないでよ。

それに、免罪符もどうにかするからさ!」


「……分かった」


「それよりクロスリーパーの進化なんて、よく思いついたね!」


「まぁな……俺にはどうしてもやり遂げたいことがある。そのために、全部捨ててでも──」


グラフの重い言葉。


「それって……」


顔を上げジェシカを見るグラフ。


「……いい機会だ。俺の話……聞いてくれるか」


「もちろんだよ!」


「ふっ、少し座るか」


廃城の周辺を見渡すと、壊れかけた椅子が視界に入り、二人は腰を下ろした。


静寂の中──

グラフの過去が、語られようとしていた。

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