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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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7.鎮魂歌<レクイエム>

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


<ミネルバ王国>

国王 ミネルバ・ソフィア・マニフィック


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛

──出雲の国。


ミネルバ王国でダークマターを用いた玉鋼の鍛造が行われていた、まさにその頃。


ジェシカは梟に連れられ、凛が明日舞う舞台へと足を運んでいた。


そこでは、出雲の民の大工たちが舞台を組み上げていた。


彼らは皆、ディヴァインリーパーに命を救われた者たちだった。


傷がまだ癒えぬ者もいる。


それでも彼らは手を止める事なく、汗を流しながら木材を組み上げていく。


その光景を見つめながら、ジェシカはぽつりと呟いた。


「すごいね……こんなに大事な事だったなんて思ってなかったよ」


梟は低く笑う。


「呵っ呵っ呵……お前さんらに感謝しとるという事じゃよ」


舞台を作る民を見つめながら続けた。


「民の気持ちを汲んでやってくれ。それが、彼らにとって何よりの誉れなのじゃよ」


ジェシカは力強く頷いた。


「うん! 分かった。ありがとう」


その言葉に梟は舞台を見つめたまま、目尻を緩めた。


「よし……そろそろ凛の着替えも終わっとる頃じゃろう」


そう言うと、ジェシカを連れて屋敷へ向かった。


──────────


屋敷の部屋へ入ると、そこには巫女服をまとった凛の姿があった。


白と紅の装束。

長い袖が静かに揺れている。


「えー! 可愛い!」


ジェシカが声を上げる。


凛は振り向き、やわらかく微笑んだ。


「うふふ。こんな格好ですが、れっきとした正装なのですよ」


「そうなんだ。でもやっぱり可愛いよ!」


その言葉に凛は少し照れたように笑う。


だが──


梟の表情がふっと引き締まった。


「凛よ。明日の前に……二刻後、消えていった霊を祀ってくれ」


凛は静かに振り向く。


そして真剣な顔で頷いた。


「はい。分かっています」


「そうか……なら良い」


二人の会話を、ジェシカは黙って聞いていた。


これから何かが行われる。


それだけは分かる。


だが、それがどんな意味を持つのかまでは分からない。


そして──


軽々しく聞いてはいけない空気だった。


やがて時は流れ、約束の刻が近づく。


三人で他愛もない話をしていると、襖が静かに開いた。


守人の一人が頭を下げる。


「長。準備が整いました」


梟はゆっくり頷いた。


「……分かった。凛よ、参ろう」


「はい」


二人は部屋を出る。


ジェシカも後を追おうとしたが、守人に止められた。


「ジェシカ殿はこちらへ」


「あ、うん……」


守人に案内され、屋敷の外へ出る。


無造作に組まれた大きな井桁。

少し離れた場所で出雲の民が輪を作っていた。


やがて──


梟に導かれ、巫女服の凛が現れる。


その瞬間。


──空気が静まり返った。


梟は井桁へ火を入れる。


炎が勢いよく燃え上がる。


夜の空へ向かって、まるで魂のように揺れながら昇っていく。


凛はその炎へと歩み寄り、目を閉じる。


そして──ゆっくりと開く。


次の瞬間。


凛はゆっくりと舞い始めた。


静かに。

そして厳かに。


袖が炎の光を受けて揺れる。


その動きは、まるで炎と語り合うかのようだった。


その時──どこからか静かに歌が聴こえる。


周囲へ目を向けると、出雲の民が静かに歌を口ずさんでいた。


ジェシカは、凛と民の姿を少し離れた場所から見つめていた。


気づけば瞳から大粒の涙が零れていた。


なぜ涙が出るのか。


自分でも分からない。


だが止まらなかった。


(この舞は……誰かを……送っている)


周囲の出雲の民も同じだった。


すすり泣く者。

膝をつく者。

嗚咽をあげて泣く者。

歯を食いしばり、ただ見つめ続ける者。


様々な想いが、その場に溢れていた。


──────────


いつの間にか、ジェシカの隣に梟が立っていた。


「これは……あの戦いで亡くなった者への鎮魂歌じゃ」


炎を見つめながら語る。


「凛はそれを背負って舞っておる」


炎が高く昇る。


炎が導き、魂が迷う事なく天へ昇るように……


ジェシカは何も言えなかった。


ただ静かに──


舞い続ける凛を見つめる事しかできなかった。


その場に立ち尽くしながら、

時が過ぎていくのを待つしかなかった。


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