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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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5.進化の仮説

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


<ミネルバ王国>

国王 ミネルバ・ソフィア・マニフィック


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛

──次の日。


まだ朝の冷たい空気が廊下に残っている。


グラフはアンディとアリスの部屋の前に立ち、静かにノックした。


コン、コン。


すぐにドアノブが回り、扉が開く。


「あら、どうしたのかしら?」


姿を現したアリスは、相変わらず妖艶な服装だった。


その姿に一瞬だけ視線を逸らし、グラフは帽子を深く被り直す。


「……お前たちと話がある」


短く言う。


「リビングで待つ。来てくれ」


アリスは小さく笑った。


「うふふ、分かったわ」


──────


リビングでは、グラフとクロードがソファに座っていた。


クロードはまだ眠そうに目をこすっている。

しかしグラフの表情が普段より固いことに気づき、背筋を伸ばした。


やがてアンディとアリスが現れ、向かいのソファに腰を下ろす。


アンディが腕を組む。


「それで、話とはなんだ」


グラフはゆっくりと口を開いた。


「昨日、クロードの身に起きた事だ」


その言葉で空気がわずかに引き締まる。


グラフは語った。


クロードが見せた力。

そして──出雲刀とブラッディローズが一つになった現象。


話を聞き終えたアンディは低く唸る。


「そんな事……ありえるのか。

聞いた事もない」


「ああ」


グラフは頷いた。


「俺も、この目で見るまでは偶然だと思っていた。

フィセルの足を斬ったのも、ただの偶然だと」


一拍。


「……だが違った」


グラフの声が低くなる。


「昨日、俺は自分の考えが間違っていたと知った」


アンディはゆっくりとクロードへ視線を向ける。


「……おい、クロード」


「は、はい!」


突然名前を呼ばれ、クロードは慌てて姿勢を正す。


「お前の中にはジェシカの血……」


アンディは言葉を選びながら続けた。


「──つまり、古代マリア様の血が流れている可能性がある」


クロードの表情が凍りつく。


「それが影響していると俺は見ている」


沈黙。


アンディは顎で示した。


「グラフの話が本当なら……今ここでも再現できるはずだ。

やってみろ」


「え……?」


クロードは困惑した。


「すみません……何をどうすればいいのか……」


その様子を見て、グラフが小さく笑う。


「ふっ……」


アンディが眉をひそめる。


「何がおかしい」


「クロードは確かにクロスリーパーとして芽吹いた」


グラフは言う。


「だがまだ──ブラッディローズすら理解していない」


「な、何だと!?」


アンディが思わず声を荒げる。


「なら何故、俺たちですら知らない事をこいつが出来る!」


グラフはゆっくりとアンディを見る。


「アンディ」


短く呼ぶ。


「“こいつ”じゃない」


空気が静まる。


「クロードだ」


グラフの声は静かだった。


「そして俺たちクロスリーパーの一人だ」


グラフの言葉にアンディは目を閉じ、深く息を吐いた。


「……分かった。すまん」


「ああ」


グラフは短く頷く。


そして視線をアリスへ向ける。


「依頼の件だが……」


アリスは足を組み直し、微笑む。


「ええ、聞きましょう」


「クロスリーパーの進化についてだ。

クロードの血も一緒に調べてほしい。

そして……」


グラフは胸のポケットから赤い結晶を出しテーブルに置いた。


その結晶を見たアンディが反応する。


「お、おい、それ…ホーリーエンブレムのなのか……」


「……だと、いいんだがな」


二人のやりとりにアリスが割って入る。


「なにかあるのかしら?」


「マナとの関係性とこの結晶を調べて、ジェシカとの関係性を確かめてくれ」


アリスは少し考えた後、頷いた。


「それは構わないわ」


だが次の瞬間、真剣な目でグラフを見る。


「でも……

どうしてそこまで強さを求めるの?」


グラフは鼻で笑う。


「ふっ……簡単な話だ」


静かな間。


「俺は、自分の死に場所を見つけている」


その言葉に三人が黙る。


「元々、俺は既にこの世にいない存在になっていた。

だが俺はまだここにいる」


グラフの声は静かだった。


「そして俺はジェシカ……」


グラフは一瞬だけ言葉を止めた。


「いや──現マリア様に命を捧げている」


誰も口を挟まない。


「これから戦いはさらに激しくなる」


グラフの目がわずかに鋭くなる。


「なら俺は、一人の戦士として、ジェシカと共に戦いの災禍へ赴く」


アリスが静かに息を吐いた。


「そう……貴方は戦いを避けないのね」


「ああ」


グラフは言う。


「“奴”をこの世から消せるなら──」


グラフの目が、わずかに暗くなる。


「どんな賭けでも乗る」


アリスはしばらく黙り、やがて頷いた。


「分かったわ。

ただし、結果が出るまで時間はかかるわよ」


「分かっている」


グラフは言った。


「だが頼む」


アリスは立ち上がる。


「クロード、少し血をもらうわね」


「は、はい」


クロードは腕を差し出した。


研究のため、彼の血が採取される。


針が刺さる。


細い管を通って、クロードの血がゆっくり流れていく。


その赤い血を見つめながら、クロードはふと思った。


(俺の中に……ジェシカと同じ……血?)


──────


それを見ながらアンディが言う。


「クロード」


「はい」


「今後お前はジェシカのために生きる事になる」


クロードは黙って頷いた。


「だがその前にやる事がある」


アンディは指を立てる。


「砂鉄にダークマターを混ぜ、玉鋼を作る。

それが最優先だ」


「分かりました」


その時──


リビングの扉が勢いよく開いた。


「よう、待たせたかな!」


入ってきたのはアルスだった。


「──早速始めるか!」


軽い声に、重かった空気が一気に弾ける。


アンディが立ち上がる。


「行くぞ」


三人は工房へ向かって歩き出した。


新しい力を生み出すために。


それがやがて

大国同士の戦乱を終わらせる刃になるとは

この時、まだ誰も知らなかった。


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