表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/93

3.グラフからの試練

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


<ミネルバ王国>

国王 ミネルバ・ソフィア・マニフィック


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛

クロードは、一体の死者へ向かって歩き出した。


あの時見た、クロードの一振り。

あれが一体何だったのか──グラフは自分の目で確かめたかった。


だからこそ、何も言わずクロードを死者の元へ送り出したのだ。


ジリ……ジリ……。


ゆっくりと距離を詰めていくクロード。


死者とクロードの間に、張り詰めた空気が流れる。


──ガッ!!


転がっていた岩に足が触れ、大きな音が響いた。


その瞬間。


死者がゆっくりと顔を向ける。


視界にクロードを捉えた。


赤い目が見開かれ、口元がニヤリと歪む。


まるで餌を見つけた獣のようだった。


死者は身体を引きずりながら、クロードへ向かってくる。


「う、うわっ!!」


死者の足は遅い。

今のクロードでも逃げようと思えば逃げられる。


だが──


遠くから鋭い視線を感じていた。


──グラフだ。


逃げれば、きっと失望される。


それだけは嫌だった。


「よ、よし……や、やってやるよ……」


腰に差した出雲刀に手を添える。


刃を抜き、構える。


大きく息を吸う。


視線は死者へ。


そして緊張をほぐすように、ゆっくりと息を吐いた。


赤い目の死者が間合いへ入る。


クロードは刀を両手で握りしめた。


そして──


袈裟斬り。


だが、緊張のせいか骨までは断てない。


肉だけが裂け、黒い血が地面に滴り落ちる。


「……く……」


死者の口が動く。


「……くわ……せ……ろ……」


その声に、クロードの腰が引けた。


一瞬の隙。


距離がゼロになる。


死者はクロードを押し倒し、その上に覆いかぶさった。


「う、うわああ!! 来るな!!」


死者は言葉など理解しない。


ただ──


クロードという名の餌を喰らうために。


両手を振り回し、肉を引き裂こうとしてくる。


クロードは必死に刀で距離を保つ。


だが、その力は人間の腕で抑えられるほど甘くはない。


次の瞬間。


死者の左手が、クロードの左腕を掴んだ。


──ブチッ。


肉が引き千切られる。


「──っ!!


ぐああっ!!


や、やめてくれ!!


グラフさん!!見てないで助けてください!!」


クロードの柔らかい肉を食らった死者は、さらに力を増す。


「いい加減にしろおおぉぉぉぉぉォォォーーー!!」


クロードの叫びが空を突く。


砂塵が舞い上がった。


──!!


その時。


グラフの耳が何かを捉えた。


ジェシカとは違う心音。


だが確かに聞こえる。


クロードの──心音だ。


視線の先。


舞い上がった砂塵が、ゆっくりと消えていく。


そこに立っていたのは──


先ほどまでのクロードとは別人の男だった。


右手には赤く染まった出雲刀。


光を受け、刀身が血のように輝いている。


その姿から漂う気配は、先ほどまでのクロードとはまるで違っていた。


「……クロードなのか」


「……グラフさん、酷いですよ」


「その姿……ふっ」


グラフが小さく笑う。


「まさか自らクロスリーパーとして芽吹くとはな」


「勘弁してくださいよ……」


そう言うとクロードは、力が抜けたようにグラフへ寄りかかった。


そのまま意識を失う。


同時に、右手に握られていた刀が変化した。


赤い刀──ブラッディローズ。


それが静かに、本来の出雲刀の姿へ戻る。


その変化を、グラフは見逃さなかった。


しっかりと目に焼き付ける。


─────────


しばらくして。


クロードの意識が戻った。


……ん…んん?


あ、あれ……俺……」


「起きたか」


グラフが腕を組んだまま言う。


「荒療治ではあったが、お前の中のクロスリーパーの血が芽吹いた」


「はい……何となく覚えてます」


「……そうか」


そう言うとグラフは、自分の首筋を露わにした。


「クロード。血を使い過ぎたようだ」


「渇きを覚える前に飲んでおけ」


「え……?」


「……飲め」


自分の意思で牙を立て、血を飲む。


それはクロードにとって初めてのことだった。


そんなクロードに、グラフは自ら首を差し出している。


「お前はまだ知らなくてはならないことが多い。

これもその一つだと覚えておけ」


「どういう意味なんですか……」


グラフは静かに言った。


「俺はお前を──いや。

クロードを同族として認めた。

戦士としてもな。


同族に血を与えるのは当然だろう」


「は、はい!」


クロードはゆっくりと牙を立てる。


そして血を飲んだ。


──甘い。


こうしてクロードは──


一人の戦士として認められたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ