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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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2.クロード。初陣

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード


<ミネルバ王国>

国王 ミネルバ・ソフィア・マニフィック


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛

凛との話もまとまり、ジェシカはアンディ達のいる部屋へ向かった。

二人で出雲へ向かう件について話をするためだ。


しかし、話を切り出そうとしたその時だった。

部屋の扉が開き、梟と凛が姿を見せた。


「話はジェシカから聞いておると思うが、巫女の舞には色々と準備が必要でな。


──そこで、ワシらからお願いがあるのじゃ」


梟はゆっくりと視線をソフィアへ向ける。


「国交はもちろん受けよう。

だが、我が国の巫女の舞を無下にはできぬ」


「事情は理解しました」


ソフィアは静かに頷いた。


「それで、私達に何を求めておられるのか、お聞かせいただけますか?」


「うむ」


梟はゆっくりと言葉を続けた。


「<真打>建御雷神を祀る刀山。

そこに舞台を設け、巫女の舞によって──ジェシカと魂を繋がせねばならん。


そこで民にも、出雲への帰国を了承してほしいのじゃ」


そして一度言葉を区切る。


「なによりワシは出雲の長。

この儀式を見届ける責務がある」


「なるほど……国の長としての責務、ですか」


ソフィアは一拍置いてから答えた。


「分かりました。それでは今、船にいる民はこのまま出雲へ向かうよう手配いたします。


その際、我らミネルバの役人を数名同行させてもよろしいでしょうか?」


「勿論だとも。

我々のわがままを受け入れてくれて感謝致す」


こうしてジェシカ達は、グラフ達より遅れて出雲の国へ再び向かうこととなった。


─────────────


それから三日。


グラフとクロードは、ようやく納得のいく出雲の砂鉄を集め終えていた。


山道を歩き回り、砂を掬い、選び続けた三日間。

足も腕も、すでに限界だった。


「……つ、疲れた……」


砂鉄の入った袋を地面に置き、クロードはその場に尻もちをついた。


「……これでいいのか」


「は、はい。グラフさんのおかげで……これで玉鋼が作れます」


「そうか」


グラフは短く答えた。


──その時。


「……ん? 何だ、あれは……」


グラフの視線が遠くの水平線へ向けられていた。


クロードも立ち上がり、同じ方向を見る。


「……船……ですかね」


「ああ、そのようだな。

……だが、どこか見覚えのある船のように感じるが」


「いやいや、気のせいじゃなくて、あれはミネルバの船ですよ!」


グラフの視線がゆっくりとクロードへ向く。


「え!? あ、いや……だって……」


「ふっ、まぁいい」


グラフは小さく笑った。


「ってことは、あれはジェシカ達だな」


──<真打>建御雷神。


「ちょうど砂鉄集めも終わったところだ。

港まで向かうか」


「え……少し休んでから行きませんか」


再びグラフはクロードを睨んだ。


「は、はい……分かりました」


グラフはクロードに砂鉄袋を持たせ、あえて歩いて下山させていた。


「はぁ……はぁ……お、重い……」


「お前を鍛えるには丁度いいだろう」


「………」


グラフは黙って前を歩く。


やがて山道の先に、赤い鳥居が見えてきた。


「もうすぐだ。

そこまで運べば、あとは俺がやっ──」


その時だった。


グラフの耳に、微かな音が届く。


鼓動のような──不自然な心音。


ピタリと足を止め、音のする方へ顔を向ける。

目を細め、周囲を探る。


「うわ! 急に止まらないで下さいよ……」


「シッ。黙れ」


低い声だった。


「え……?」


グラフはクロードの頭を押さえ、体勢を低くさせる。


次の瞬間。


茂みの奥から、腐りかけた肉を揺らしながら一匹の死者が姿を現した。

濁った目が、ゆっくりとこちらを向く。


「いい機会だ」


グラフが低く呟く。


「クロード。お前、あの死者を殺れ」


「え……俺がですか?」


「そうだ。その腰につけている物は、ただの飾りなのか?」


クロードは腰に携えている出雲刀へ手を当てた。


──あの時、守人に託された刀。


この刀を握った瞬間の重みを、今でも覚えている。


胸の奥で鼓動が強くなる。


逃げるか。

それとも、戦うか。


クロードは刀の柄を強く握りしめた。


「……分かりました」


ゆっくりと立ち上がる。


「やります」


一匹の死者へ向かい、静かに歩き出す。


その背中を、グラフは腕を組みながら見ていた。


覚悟を決めた一人の男。


──クロードの戦いが、今始まる。


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