表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/95

30.舞姫の誓い。そして……

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス


<破壊の暴君>

リーン・ホーク・マリア


<ジェシカの眷属>

クロード


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛


<四代厄災>

神速のレーヴ

ジェシカは扉の前に立っていた。


一度、深く息を吸う。

胸の奥の迷いを押し込めるように、ゆっくりと吐き出す。


ノブに手をかけ──回した。


「入るよ」


扉の向こう。

少し離れたソファーに凛が座り、その隣で梟が静かに肩をなだめている。


重たい空気の中、梟が口を開いた。


「すまんかったな。話は済んだのか?」


「うん。これからの事は……大分進んだかな。はは……」


笑ってはいるが、どこか歯切れが悪い。


その違和感を覚えながらも、梟は凛を気遣ってここへ来たジェシカに、誠意を示すべきだと感じた。


「そうか。それで? おまえさんは何故ここに」


「うん……」


ジェシカは二人と向かい合うソファーへ腰を下ろす。


一瞬の沈黙。


「……あのね。私達、次の目標として“四代厄災”の一人を討つ事になったの」


凛の指先が、わずかに震える。


「その為に、皆の足並みを揃えたい。

だから……建御雷神が必要なんだ」


その名は、凛の胸に棘のように刺さる。


まだ立ち直れていない心へ、さらに続く言葉。


「私と一緒に、出雲へ来てほしい。……ダメかな?」


──沈黙。


答えるべき者は一人しかいない。

ジェシカも、梟も、そして凛自身も理解している。


「……はい。ですが、その前に。

私と、話をして下さいませんか」


凛は顔を上げる。


涙は止まっていない。

だが、その瞳には確かな光が宿っていた。


「──もちろん」


ジェシカは目を逸らさない。


「ジェシカ様は……“クロ”の事を、どうお考えですか?」


「え……どうって……」


言葉を探す。


「正直、分からない。

あの時、私が手を差し伸べなかったら、あの子は確実に死んでた。

でも……」


小さく息を吸う。


「私達には、やらなきゃいけない事がある」


凛の世界と、ジェシカの世界。

その違いが、はっきりと浮き彫りになる。


「それでは……クロは、目標の為の道具に過ぎないと……?」


「違うよ」


即座だった。


「大切な仲間。そして──子。

私が守らなきゃいけない存在」


迷いのない声。

強く、はっきりと。


凛は、その覚悟を真正面から受け止める。


「………ふふ」


それは自嘲でも嫉妬でもない。

胸の奥の霧が晴れたような、穏やかな笑みだった。


「先ほど、アリス様に言われた言葉……分かった気がします。


私では勝てない。

ええ、その通りでした」


瞳から迷いが消える。


「梟の娘として。

出雲の巫女として──」


凛は静かに立ち上がり一歩、前へ出る。


そして──


その場に両膝を着き、両手を揃え、深く頭を垂れた。


「ジェシカ様の為、舞い踊らせていただきます。

そして──“クロード”を、どうかよろしくお願い致します」


敬意。


誓い。


覚悟。


ジェシカもまた、ソファーから降り、同じように膝をつき、頭を下げる。


そして同時に顔を上げ──目が合う。


微笑みが零れた。


「うふふ……」


「あはは……よろしくね、凛」


「はい。建御雷神の魂は、私にお任せ下さい」


二人の間にあった蟠りは、静かに溶けていった。


出雲へ向かう準備は、整った。


────────────


その頃。


ミネルバ城、高台。


空を貫く塔の縁で──


グラフはクロードの襟首を掴み、外へ突き出していた。


足元は遥か下。

落ちれば命は無い高さ。


「グラフさん! 離さないで下さいね!!」


「チッ……行くぞ。

──ブラッディローズ」


瞬間、血の花弁が爆ぜる。


「うわああああ!! こ、怖いですってぇぇぇぇ!!」


「黙れ。

貴様はこれからジェシカの眷属として生きる。


その覚悟が、まだ足りん」


凄まじい速度で空を裂きながら、グラフは言い放つ。


「これから教育してやる。


ジェシカの眷属として恥をかかぬようにな。


覚悟しておけよ」


「いやああああああ!!」


紅い軌跡を描きながら、二人は出雲の国へと消えていった。


出雲への道は開かれた。


だがそれは──


四代厄災へ続く、血の道でもあった。


──────────────────


                 四章へと続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ