28.意志を持つ闇
登場人物
<ディヴァインリーパー>ミネルバ代表
ジェシカ
グラフ
アンディ
アリス
アルス
<破壊の暴君>
リーン・ホーク・マリア
<ジェシカの眷属>
クロード
<出雲の国>
出雲の長 梟
梟の娘、巫女 凛
凛の嗚咽が、静まり返った謁見の間に痛いほど響いていた。
その最中、梟はゆっくりとソフィアへ視線を向ける。
「このままでは、皆に迷惑をかけてしまう。
すまぬが……少し此奴を別室へ連れていきたいのだが」
「ええ……そうですわね」
ソフィアは静かに頷き、近衛兵を呼び寄せた。
やがて梟と凛は兵に付き添われ、謁見の間を後にする。
扉が閉じる音が、やけに重く響いた。
──────
沈黙。
重苦しい空気を破るように、アルスが頭を掻く。
「まいったな……まさか、ここまで話が進まねぇとは思わなかったぜ」
アンディが低く返す。
「気にするな。必要な過程だ。
見方を変えれば、前には進んでいる」
「……だな」
アルスは息を吐いた。
「それに<真打>建御雷神をジェシカに譲るとして……問題はそこからだろ」
アンディの視線が鋭くなる。
「ああ。
丁度いい……その件で、俺からも話がある」
空気が張り詰める。
──アルスの表情から、軽さが消えた。
「ジェシカ、アンディ、アリス。よく聞いてくれ」
一拍。
「お前たちが持ち帰ったダークマターを、俺が錬成した時の話だ」
空気が変わる。
「あの時……確かに声が聞こえた」
アンディの眉が動く。
「……どういう意味だ」
アルスは即答した。
「“許さぬ”──とな」
ざわり、と気配が揺らぐ。
「だが同時に、確信した」
拳が、軋む。
「ダークマターには……意志があるってな」
沈黙が落ちる。
言葉だけが、重く残る。
「その意志を抱えたまま錬成を続けることが、本当に正しいのか」
視線がジェシカへ向く。
「前の剣は、お前の力で押さえ込めた。
だが次は、四代厄災の一角──魅惑のアリュールのダークマターだ」
ゆっくりと首を振る。
「……次元が違う。
建御雷神、トラペゾ、玉鋼。
三つを用い、二つのダークマターを錬成する。
考えただけで背筋が冷える……
下手をすりゃ……とんでもねぇ代物が生まれる」
低く。
「──"呪われた武器"だ」
ジェシカの指先が、かすかに震えた。
「いくらお前が強くても、力を抑え込みながら戦い、
さらに身体解放……ブラッディローズまで使うなんて」
視線は逸らさない。
「……無茶だ」
それは職人としての恐れ。
そして──仲間としての本音。
沈黙。
その時。
ずっと黙っていたアリスが、口元に手を添え、くすりと笑った。
「うふふ……アルス。
いつその話をするのか、私ずっと待っていたのよ」
「は? なんだよ、それ」
「この話が出なければ、未来は少しズレてしまうもの」
細められる瞳。
「うふふ、私……アストロロジーよ。
先を読むのは当然でしょう?」
アリスはソフィアへ視線を向ける。
ソフィアは静かに頷いた。
アルスが呟く。
「俺たちが出雲に行っている間に……何があった?」
アリスは微笑みを深める。
「それを、これから話すわ」
張り詰めた空気が、再び謁見の間を支配した。
今度は──
希望か、絶望かも分からぬままに。




