27.進むと決めた覚悟
登場人物
<ディヴァインリーパー>ミネルバ代表
ジェシカ
グラフ
アンディ
アリス
アルス
<破壊の暴君>
リーン・ホーク・マリア
<ジェシカの眷属>
クロード
<出雲の国>
出雲の長 梟
梟の娘、巫女 凛
──ミネルバ王国、謁見の間。
王座に座るソフィア。その隣にアルス。
対するは出雲の国より、梟と凛。
静寂の中、梟が一歩進み出る。
「この度、我が国・出雲を救っていただき、心より感謝致します」
ソフィアは無言で頷き、アルスへ視線を送る。
「感謝は受け取っています。
今は、これからの話をしましょう」
「……そうじゃな。それで、何故お主らは出雲へ?」
アルスが口を開く。
「ああ、それはジェシカ達から聞くべきだ。
だがその前に、こちらの意思を伝えたい」
一拍。
「ミネルバは出雲と国交を結びたい。
文化交流を含めた、深い関係を築きたいと考えている」
梟はその場に膝をつき、真っ直ぐに王を見据える。
「我らも同じ想い。
されど……それだけで良いのかと」
ソフィアはジェシカ達へ視線を流す。
「詳細は改めて話しましょう。
まずは今回の功労者——ディヴァインリーパーと話を進めてください」
アンディが一歩前へ出る。
「早速だが。
仲間のグラフを出雲へ行かせてほしい。
玉鋼の素材——出雲の砂鉄を集めさせたい。
そして〈真打〉建卸雷神をジェシカへ渡してほしい。
その二つがなければ、何も始まらない」
凛の肩が微かに震える。
「……申し訳ありません。
国宝を簡単に渡すことはできません。
出雲刀には魂が宿っています。
魂が抜ければ、ただの刀になってしまいます」
「何が言いたい」
アンディの低い声。
凛は遠くを見るように言う。
「梟の決断に異論はありません。ですが……」
視線を落とす凛の言葉を、梟が引き取る。
「〈真打〉を祀る(まつる)には、巫女の舞がなければならん。
凛の舞によって刀の魂は踊り、持つ者と繋がりを持つ」
沈黙。
その中でグラフが口を開いた。
「……なら俺が砂鉄を集める“だけ”なら問題ないな」
「そうだが、刀山に一人で入るのは至難じゃぞ」
「ふっ、一人でも大丈夫だが……」
後ろのクロードの襟を掴み、持ち上げる。
「え、俺ですか?」
「他にいるか?」
「……行きますよ!」
「決まりだ。工房で合流しろ」
クロードは覚悟を決め頷き、二人はこの場を去った。
静寂が戻る。
───
アンディが言う。
「ジェシカ。凛を連れてお前達も出雲へ向かえ」
「あ、うん……」
凛は視線を逸らしたまま。
アルスが凛の元へと歩み寄る。
「凛。君の気持ちは理解している。
だが今の話と、君の気持ちは別だ」
「……はい」
するとアリスがジェシカへ声をかける。
「ジェシカ。クロードを眷属にしたのでしょう?」
「うん」
アリスは凛の前に立つ。
「凛。クロードに好意を寄せていることは、この場にいるジェシカ以外は皆気付いているわ」
「……!」
「昨夜、アンディから聞いたわ」
アルスの視線が鋭くなり、アリスは微笑む。
「はっきり言うわ。
あなたはジェシカに負けたのよ」
空気が凍る。
「力だけじゃない。女としても」
凛は何も言えない。
アリスは背を向ける。
「受け止めなさい。
そして、今やるべきことと向き合うの」
理解は追いつかない。
だが、自分のわがままが許されないことだけは分かる。
その時、凛の方へ近づく足音。
凛が顔をゆっくりと上げる。
視界に入った人物──ジェシカだった。
「凛、ごめんね……
でも私、あの時はもう、あれしか思いつかなかった。
禁忌を破り、凛の想いも傷つけてしまった」
一拍。
「でも、私たちは止まれない。
立ち止まれないの。
あなたの気持ちを傷つけたことは謝る。
それでも——前に進む」
その背後にアンディ、アリス、アルス。
梟が凛の肩に手を置く。
無言の頷き。
「……はい。お父様」
凛は梟に抱きつき、堪えていた感情を解き放った。
謁見の間に、巫女の嗚咽が響く。
それは敗北の涙ではない。
覚悟の、始まりの涙だった。




