表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/94

27.進むと決めた覚悟

登場人物

<ディヴァインリーパー>ミネルバ代表

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス


<破壊の暴君>

リーン・ホーク・マリア


<ジェシカの眷属>

クロード


<出雲の国>

出雲の長 梟

梟の娘、巫女 凛

──ミネルバ王国、謁見の間。


王座に座るソフィア。その隣にアルス。

対するは出雲の国より、梟と凛。


静寂の中、梟が一歩進み出る。


「この度、我が国・出雲を救っていただき、心より感謝致します」


ソフィアは無言で頷き、アルスへ視線を送る。


「感謝は受け取っています。

今は、これからの話をしましょう」


「……そうじゃな。それで、何故お主らは出雲へ?」


アルスが口を開く。


「ああ、それはジェシカ達から聞くべきだ。

だがその前に、こちらの意思を伝えたい」


一拍。


「ミネルバは出雲と国交を結びたい。

文化交流を含めた、深い関係を築きたいと考えている」


梟はその場に膝をつき、真っ直ぐに王を見据える。


「我らも同じ想い。

されど……それだけで良いのかと」


ソフィアはジェシカ達へ視線を流す。


「詳細は改めて話しましょう。

まずは今回の功労者——ディヴァインリーパーと話を進めてください」


アンディが一歩前へ出る。


「早速だが。

仲間のグラフを出雲へ行かせてほしい。


玉鋼の素材——出雲の砂鉄を集めさせたい。


そして〈真打〉建卸雷神をジェシカへ渡してほしい。


その二つがなければ、何も始まらない」


凛の肩が微かに震える。


「……申し訳ありません。

国宝を簡単に渡すことはできません。


出雲刀には魂が宿っています。

魂が抜ければ、ただの刀になってしまいます」


「何が言いたい」


アンディの低い声。


凛は遠くを見るように言う。


「梟の決断に異論はありません。ですが……」


視線を落とす凛の言葉を、梟が引き取る。


「〈真打〉を祀る(まつる)には、巫女の舞がなければならん。

凛の舞によって刀の魂は踊り、持つ者と繋がりを持つ」


沈黙。


その中でグラフが口を開いた。


「……なら俺が砂鉄を集める“だけ”なら問題ないな」


「そうだが、刀山(かたなやま)に一人で入るのは至難じゃぞ」


「ふっ、一人でも大丈夫だが……」


後ろのクロードの襟を掴み、持ち上げる。


「え、俺ですか?」


「他にいるか?」


「……行きますよ!」


「決まりだ。工房で合流しろ」


クロードは覚悟を決め頷き、二人はこの場を去った。


静寂が戻る。


───


アンディが言う。


「ジェシカ。凛を連れてお前達も出雲へ向かえ」


「あ、うん……」


凛は視線を逸らしたまま。


アルスが凛の元へと歩み寄る。


「凛。君の気持ちは理解している。

だが今の話と、君の気持ちは別だ」


「……はい」


するとアリスがジェシカへ声をかける。


「ジェシカ。クロードを眷属にしたのでしょう?」


「うん」


アリスは凛の前に立つ。


「凛。クロードに好意を寄せていることは、この場にいるジェシカ以外は皆気付いているわ」


「……!」


「昨夜、アンディから聞いたわ」


アルスの視線が鋭くなり、アリスは微笑む。


「はっきり言うわ。

あなたはジェシカに負けたのよ」


空気が凍る。


「力だけじゃない。女としても」


凛は何も言えない。


アリスは背を向ける。


「受け止めなさい。

そして、今やるべきことと向き合うの」


理解は追いつかない。

だが、自分のわがままが許されないことだけは分かる。


その時、凛の方へ近づく足音。


凛が顔をゆっくりと上げる。


視界に入った人物──ジェシカだった。


「凛、ごめんね……

でも私、あの時はもう、あれしか思いつかなかった。


禁忌を破り、凛の想いも傷つけてしまった」


一拍。


「でも、私たちは止まれない。

立ち止まれないの。


あなたの気持ちを傷つけたことは謝る。


それでも——前に進む」


その背後にアンディ、アリス、アルス。


梟が凛の肩に手を置く。


無言の頷き。


「……はい。お父様」


凛は梟に抱きつき、堪えていた感情を解き放った。


謁見の間に、巫女の嗚咽が響く。


それは敗北の涙ではない。


覚悟の、始まりの涙だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ