22. 神を越える刃
登場人物
『ディヴァインリーパー』ミネルバ代表
ジェシカ グラフ アンディ アリス アルス
古代マリア
リーン・ホーク・マリア
ジェシカの眷属
クロード
出雲の国
長 長の娘
梟 凛
刀匠として認められたクロードの肩に、ジェシカはそっと手を置いた。
「よろしくね、クロード」
「う、うん。俺……やるよ」
「うん」
アンディとグラフは、その様子を静かに見守っていた。
まだ幼さは残る。それでも確かに、何かを背負おうとしている。
風が吹く。
季節は、わずかに熱を帯び始めていた。
「ねえ、渇きは感じない?」
「え……あ、うん。大丈夫」
「そっか。なら良かった」
ジェシカは胸元のボタンを二つ外し、風を受ける。
白い肌に日差しが落ちる。
その中心で、紅色がひときわ強く光った。
クロードは思わず視線を奪われる。
「おい」
低い声。
「ジェシカを変な目で見るな」
「ち、違います!」
一拍。
「な、なあ、ジェシカさん……」
「ジェシカ」
「え?」
「“なあ”じゃない。私の名前」
沈黙。
クロードは息を飲み込む。
「……ジェシカ」
「ふふ、なに?」
アンディとグラフは口を挟めない。
梟は肩をすくめ、凛は複雑な表情を浮かべていた。
「何か言いたいこと、あるんでしょ?」
「ああ。ミネルバに着いたら俺は工房に入る。だがその前に……出雲刀の話をしておきたい」
「うん、確かに必要だね」
「少し時間をもらえるかな」
ジェシカはグラフとアンディの二人を見る。
「二人も来てよ。私の刀の話なんだって」
同時に頷く二人。
「もう、絶対わざとだよね、それ!」
空気がやわらぐ。
だが、そのとき。
「その話、ワシも加わろう」
梟の声に、ジェシカは微笑み、頷いた。凛を置いて。
────────────
船内の一室。
向かい合うソファ。上座には梟。
「それで、クロード。私の刀の話って?」
「ああ……だが、その前に」
クロードの視線が、梟の腰へ落ちる。
気付いた梟は、静かに立ち上がり、絨毯に正座した。
「……クロ。お主の考えておる通りじゃ」
梟はジェシカを見据える。
空気が、止まる。
「ワシが携えていた出雲刀──国宝《建卸雷神》。
お前さんが振るった、あの一太刀。
その刀に宿る雷神の魂は、その力に耐えきれず……灰となって還った」
沈黙。
誰も、言葉を持たない。
「それ以上の出雲刀を打つとなれば……神業ぞ」
重圧が、場を満たす。
──。
その沈黙を断ち切ったのは、クロードだった。
「梟様。出雲の民を救えたこと。そしてこれからの縁。
今さら、隠し事はなしにしましょう」
わずかに、梟の眉が動く。
「……相分かった。全て任せる」
クロードは覚悟を固めるように、ゆっくり頷いた。
そして、ジェシカを見る。
「俺の考える出雲刀を完成させるには、玉鋼が必要だ。
だが、それだけでは足りない」
「じゃあ、何がいるの?」
クロードは立ち上がる。
静かに、ジェシカの胸元を指した。
「それが必要だ」
「え……」
クロードが示したもの。
それは──リーシャから託された首飾りだった。




