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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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20.彼女が眠るまで世界は紅い

登場人物

『ディヴァインリーパー』ミネルバ代表

ジェシカ グラフ アンディ アリス アルス


古代マリア

リーン・ホーク・マリア


ホーリーエンブレム

ティレ・レ・フィセル


ギルマスの息子

クロード


出雲の国

長  長の娘

梟  凛

血の刃が、ジェシカの喉元へ届く──

その寸前で、止まった。


白い右手が刀身を掴み、

殺到していたはずの勢いを、音もなく奪い取っていた。


「……は?」


フィセルの喉が、ひきつる。


「なんだよ……その力……」


引き抜こうと力を込める。

だが刃は、石に根を張ったように動かない。


静寂。


銀の髪の奥で、

紅い瞳がゆっくりと焦点を結び、フィセルを、まっすぐ射抜いた。


「──ッ!」


反射的に手を離し、後退る。


その瞬間。


【アハハ……良き判断よ】


背後でも足音でもない。

気づけばそこに、マリアが立っていた。


奪い取った血の刀を、無造作に宙へ放る。

そして落下してきた刃を──


そのまま、喰らう。


「……お前、何を……」


口元から滴る血。

歪んだ笑みが、ゆっくりと形を持つ。


【クックク……ジェシカ】

【“身体解放”とは──こういうものだ!!】


紅い瞳の瞳孔が、針のように細まる。

同時に、銀髪が逆巻いた。

更に……失った左手が再生する。


次の瞬間──

青白い光が、嵐のように噴き上がる。


右手の出雲刀は、悲鳴めいた震えを残し、灰へ崩壊し、残滓を握りしめ、マリアは低く告げる。


【スカーレット・ローズ】


砂塵が舞う。

世界が、紅に染まる。


花弁のように散る真紅の血。

背に広がる真紅の翼。

蒼白のオーラに包まれた、古代マリア。


ただ一振り。


雲は裂け、

満月だけが、静かに戦場を照らした。


【……来い】


挑発でも威圧でもない。

ただの、事実の提示。


「──舐めるなァッ!!」


絶叫と共に、フィセルが踏み込む。

肉薄、抱え上げ、叩きつける。

拳を、何度も、何度も振り下ろす。


鈍い音。

砕ける地面。

荒れ狂う呼吸。


「はぁ……はぁ……」


拳を止め、笑みが滲む。


「……終わりだ」


砂煙が、風にほどける──そこに誰の姿もない。


静寂。


「はは……あははははッ!!」


勝利を確信したフィセルは高笑う。だがその刹那。


【ハハ!! アハハハ!!】


一拍


【終わりダ】


フィセルの耳元にマリアの囁き。


理解が追いつくより速く──

フィセルの視界は世界が、二つに断たれた。


一閃。


世界が、わずかに遅れる。


袈裟。

逆袈裟。

一文字。


瞬きの間に、三度。


──いや。


斬撃は三度。


だが“終わり”は、最初の一振りで決していた。


音が遅れて追いつく。


肉体は理解するより先に崩れ、

存在だけが、静かに削ぎ落とされていく。


噴き上がった血が、

融合アルカナにより、空中で結晶へと変わり、マリアの左手へ吸い寄せられていく。


声は出ない。

指一本動かす事すら不可。


フィセルという“輪郭”が、ゆっくりと消えていく。


マリアはフィセルの髪を無造作に握り上空へと勢いよく投げる。


【……雑魚の割には、楽しめたぞ】


静かな宣告。


フィセルの血の結晶はスカーレットローズに包まれ、小さな塊へと変わり。


高く掲げたフィセルの肉塊に向け、マリアの人差し指がフィセルを狙い撃ちする。


【スカーレット・レイ】


閃光。


次の瞬間、

肉塊は音もなく穿たれ──満月を背に、遅れて破裂、崩壊し絶命した。


【ハハッ!!最後まで醜いものよのぉ】


…………。


少し離れた場所で、グラフは立ち尽くしていた。


理解も言葉も追いつかない。

ただ、現実だけが重くのしかかる。


そんなグラフの眼前に──マリアが、現れる。


【此奴を……頼む……】


力が抜け、

倒れ込んできた身体を、思わず受け止める。


見下ろした先。

静かな寝息。


さきほどまで世界を裂いていた力が、嘘のように消えている。


満月だけが、何も知らぬ顔で戦場を照らしていた。




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