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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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17.表と裏

登場人物

『ディヴァインリーパー』ミネルバ代表

ジェシカ グラフ アンディ アリス アルス


古代マリア

リーン・ホーク・マリア


ホーリーエンブレム

ティレ・レ・フィセル


ギルマスの息子

クロード


出雲の国

長  長の娘

梟  凛

──ジェシカの内側で、何かが軋んだ。


ジェシカは、梟から出雲刀の剣技を受け継いでいた。

その技も、その在り方も──すべてがマリアへと継承されていることに、本人はまだ気づいていない。


【ハハっ……面白い。実に面白い】

【お前の成長は、我が力となる】


次の瞬間。

マリアはジェシカの意識を、強引に奪いにかかった。


「や、やめ……なんで……今……」


【ははっ! 今のお前に、この状況をどうにかできるのか】


以前よりも流暢になった声。

その違和感に抗い、ジェシカは必死に意識を繋ぎ止めようとする。


【無理をするな……ここは我に任せよ】


「で、でも……また灰燼に──ッ!!」


両膝から崩れ落ち、頭を抱え、痛みに耐える。


【……やらぬ。出雲刀を我にも扱わせよ】

【それだけのことだ】


「──!? な、なんで……そんな……」


【我はお前と共にある】

【この力、我も欲する】


歯を食いしばる。

口元から血が零れ、瞳は蒼から──真紅へ。


意識が途切れる寸前、

深く沈んだ声が響く。


【主導権が移ろうとも、ジェシカ。お前は消えぬ】

【ただ奥へ退くだけだ】

【さあ、渡せ。主導権を】


「う、うわあああぁぁ―――ッ!!」


叫びが天を裂いた。


──静寂。

風すら、止まった。


次の瞬間。


出雲の国が、狂気に満ちた。


砂塵が舞い、鋭い光が奔る。

やがて──低く笑う女の声。


「はは……はーっはは!

 これが……出雲刀か」


マリアは刀を掲げ、

愛でるように刃を見つめていた。


────────────────


グラフはフィセルと対峙していた。

だが意識は、完全にジェシカの方へ向いている。

──それはフィセルも同じだった。


「あはは! 何だ? あそこに何があるのかなー?」


指先が動く。

大量の屍人がジェシカへ襲いかかる──はずだった。


──だが。


「は……?」

「な、なんだよ……なんで俺の言うことを聞かないんだよ」


マリアの溢れ出る狂気に屍人は微動だにせず、

風に触れた灰のように崩れ、消えた。


直後──閃光。


グラフの視界を横切った光の意味を理解するより早く、

フィセルの右肩が床へ落ち、鮮血が散る。


フィセルの背筋に、理解できない寒気が走った。


「ぐっ……何だ今の! あそこに何がいやがる!!」


怒号とともに、

すべての死者を屋敷へ向けるフィセル。


【ほぉ】


マリアは一瞬で夜空へと姿を現し、ただ一言だけ呟いた。


刀を鞘へ。


──抜刀。

──納刀。

──再び、抜刀。


時空そのものが裂け、

屋敷を覆う死者と屍人を一瞬で呑み込む。


その時──


「屋敷に、まだ人がいる!

 ねえ、助けて!」


内側から届く、ジェシカの声。

マリアの動きが、わずかに止まる。


【……確かに、いるな】


視線の先。

梟が凛を守り、刀を振るっていた。


紅い瞳。紅い羽。

マリアは音もなく二人の目の前に降り立つ。


【伏せよ】


"スカーレットローズ"


出雲刀にマリアの血で染まり、

紅色の刃を横薙ぎの一閃。


──!!


次の瞬間。

屍人は消え、

その場には三人だけが立っていた。


だが出雲刀は、マリアの力に耐えきれず、静かに崩れ落ちる。


マリアは二人の襟首を掴み、瞬時に船内へ移した。


そして──

梟の持つ、もう一振りの出雲刀へ視線を落とす。


【我に……】


言葉にならぬ圧。

梟の額を、冷たい汗が伝う。


刀を奪い取り、

グラフの方へ向かおうとした──その時。


「ジェ……ジェシカか……」


アンディの声。


【フフ……この場は貴様に託す】


紅の残像だけを残し、マリアはグラフのもとへ飛び去った。


──そこにあったのは、

もはやジェシカの瞳ではなかった。


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