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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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16.欺瞞と予兆

登場人物

『ディヴァインリーパー』ミネルバ代表

ジェシカ グラフ アンディ アリス アルス


ホーリーエンブレム

ティレ・レ・フィセル


ギルマスの息子

クロード


出雲の国

長  長の娘

梟  凛

ジェシカの一振り──

その軌跡が残した淡い光とともに、群がっていた屍人は音もなく崩れ落ちた。


遅れて、灰が舞う。

フィセルの周囲に残っていた影さえ、静かに形を失っていく。


静寂。


「あぶねーな……! 咄嗟にコイツらを盾にしなきゃ終わってたぜ」

「危うく死ぬところだったじゃねーかよ……!!」


吐き捨てる声。

怒りを隠そうともせず、フィセルは鋭くリーパーを睨む。


──その瞬間。


空気が裂けた。


「今度はこっちから行くぞ!」


踏み込んだのはアンディ。

一瞬で間合いを奪い、深く沈めた腰から爆ぜるように力を解き放つ。


槍が、閃光になる。


連続する突きが空間を貫き、火花と金属音が連なった。

フィセルは二本の短剣でそれを受け流す。


「ははっ……この程度かよ!!」


余裕の笑み。


──だが次の瞬間。


アンディの横薙ぎが、空間そのものを断ち切った。


回避はしない。

逆手の短剣を交差させ、真正面から受け止める。


衝突。


重い衝撃が響き、

フィセルの身体が後方へ弾き飛ばされた。


その軌道の先──

待っていた影がある。


上空から落ちてきたグラフが、両手斧を旋回させていた。

唸りを上げる刃。

逃げ場は、ない。


振り下ろされる。


砂煙が舞い上がり、

やがて晴れた先に現れたのは──


「……ぐ、クソ……が……テメーら……」


頭部に斧を突き立てられ、血を滴らせるフィセルの姿。


グラフは無言のまま胸ぐらを掴み、

その身体を天高く放り投げた。


「アンディ!!」


「ああ、分かってる!」


上昇する無防備な身体へ、槍が投げ放たれる。

右肩を貫通。


次の瞬間、アンディ自身が跳び、空中で槍を掴み取りさらに跳躍。


到達点。


無防備のフィセル。

──無数の突きが降り注ぐ。


血が散る。

肉が裂ける。

それでも、止まらない。


やがて重力が勝ち、

アンディは腹部に槍を突き立てたまま急落下、

槍先が闇を孕む。


「ブラックレイン」


直下で待つグラフ。

完璧な間合い。


放たれる連撃。

続く横薙ぎ。


血飛沫が、空を染めた。


────────────


静寂が戻る。


「……はあ……はぁ……やったか……」

「……だろうな」


頭は潰れ、身体は穿たれている。

生きているはずがない。


二人は背を向け、屋敷へ歩き出す。


「アンディ! グラフ!」


ジェシカの声。

足を止め、顔を見合わせる。わずかな笑み。


終わった──

そう思った、その時。


「……あはは」


声。


「……あははははっ!!」


背筋が凍る。

三人は反射的に空を見上げた。


──そこにいたのは、無傷のフィセル。


傷は癒えたのではない。

最初から存在しなかったかのように、消えている。


空気が、重い。

呼吸すら拒まれるような圧迫感。


「悪いな。満足してるところ」

「俺……この通りだぜ?」


高笑いが降り注いだ。


沈黙。


「……やるぞ、グラフ」


「ああ」


「ねえ……もう血、使いすぎてるよね……」


心配するジェシカ。

それでもグラフは、短く答える。


「……大丈夫だ」


踏み込みは、先ほどより重い。


「あははは!

さっきまでと動きが全然違うじゃねえか!!」


「お前らが呑気に術に気を取られてる間、準備は終わってんだよ」


「……何……?」


その瞬間。


地面が、蠢いた。


割れ目から屍人が這い出す。

さらに──見覚えのある死者たち。


海岸の方角から、無数の影が迫ってくる。


アンディが振り向いた。


「船を出せ!! アルス!!」


呼応するように船が動き出す。


「ジェシカ。俺は船を守る」

「屋敷にいる梟と凛を──頼む」


「……うん」


走り去る背中。

残るのは、濃密な死の気配。


────────────


グラフは限界に近かった。

致命傷は避けている。

だが、このままでは削り切られる。


守るべき者は、すぐ後ろにいる。


極限の緊張。


その時──


ジェシカの視界が、揺れた。


音が遠のく。

色が薄れる。

世界が、どこか別の場所へ沈んでいく。


膝が崩れる。


「なに……これ……」

「やめて……入って……こないで……」


響く声。

意識の奥。

遠い記憶の底から──

             マリア。


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