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紅月のクロスリーパー 〈血を武器に変える少女と世界の真実〉  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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12.始動と指導

登場人物

『ディヴァインリーパー』ミネルバ代表

ジェシカ グラフ アンディ アリス アルス


ホーリーエンブレム

ティレ・レ・フィセル


ギルマスの息子

クロード


出雲の国

長  長の娘

梟  凛

凛に案内されたアンディは、ジェシカを抱き上げ、そっと布団へ寝かせた。


「ジェシカ、今日はもう無理をするな」


「うん……ごめん、アンディ」


「……気にすることはない」


アンディは、横たわるジェシカの頭に静かに手を置き、やさしく撫でる。


「話は俺たちで進める。だから──お前はゆっくり休め」


そう告げると、アンディは立ち上がり、ジェシカに背を向けたまま凛と共に来た道を戻っていった。


────────


廊下を進む途中、凛がおずおずと声をかける。


「あの……アンディ様」


「何だ……」


「先ほどのクロの行動……あれを見て思ったのですが……

あの時、人を攫ったのは……彼女のため、だったのですか?」


「攫ったわけではない。いずれ消える命だ。

……俺はただ、有効的に使っただけだ」


「……そうですか」


「ああ」


短い会話だけが、静かな廊下に落ちていった。


──────────────


布団に横たわるジェシカは、アンディに助けられた時と、自分の選んだ行動を重ね合わせるように思い返していた。


──崩れ落ちそうだった自分を、黙って支えてくれた背中。

あの温もりを、今もはっきりと覚えている。


(次は、私が……)


胸の奥で、消えかけていた火が、かすかに息を吹き返す。

痛みも不安も消えたわけじゃない。

それでも前を向ける理由が、ここにある。


布団を頭まで引き上げ、静かに目を閉じ、ひとつ深く息を整える。

すると奥から声が聞こえてきた──マリアだ。


【くっくく……眷属とはな……】

【その覚悟、このマリアだけが受け止めようぞ……】


どこか含みのある言い方……


──ゆっくりと、瞼を開くジェシカ。

だがその瞳に、もはや迷いはなかった。


───────────────────────


アンディと凛は居間へ戻り、グラフの隣に腰を下ろした。


「それで、どこまで話は進んだ」


凛もまた、言葉を待つように耳を傾ける。


アンディは低く呟いた。


「……そうか。屍人、そして守人か」


「ああ。この問題を片づけなければ、先には進めない」


グラフは鋭い視線を梟へ向けた。


「お前たちは、屍人達へどうすべきだと思っている」


その問いに、梟も凛も答えを出せず、ただ視線を落とす事しか出来ない。


長い沈黙。


やがてグラフは一瞬だけアンディを見やり、再び梟へ向き直った。


「……もし俺たちが、この問題を解決すると言ったら。

お前たちは、どうする」


重い言葉だった。

だが今の出雲の国に、守人の数が圧倒的には足りない。

グラフの提案を断る理由はなかった。


梟はゆっくりと顔を上げ、まっすぐグラフを見据える。


「この国を救えとは言わなぬ。

 ……ただ、終わらせてくれ──頼む」


畳に触れた両手が、わずかに震えて頭を下げ、

連れるように凛もまた、頭を下げた。


部屋の誰も、すぐには息をしなかった。


やがて──


「……引き受けた」


──────。


こうしてグラフとアンディは、出雲を襲う屍人、そしてヘレティックの問題に動き出す。


その第一歩として、グラフは梟に告げた。


「出雲刀を扱う守人を一人、俺たちに紹介してほしい」


「何か理由でも?」


グラフはアンディへ顎を向け、わずかに間を置く。


「……出雲刀の秘密をジェシカは知る必要がある」


「依頼を果たすために──不可欠な力だ」


腕を組み、黙り込む梟。


その沈黙を破ったのはアルスだった。


「なあ凛。あんた、ミネルバで出雲刀の舞を見せてただろ。

……あれが忘れられない、あの剣技は俺たちにない!」


凛は袖をそっと握り、わずかに微笑む。


「そうですか。でしたら──」


梟へ向き直り、静かに告げた。


「出雲の長にして守人、梟が。

ジェシカさんの師となりましょう」


「そしてアルス様の出雲刀──

クロが初めて打った太刀を、ジェシカさんへ」


「……分かった」


梟は無言で頷いた。


アルスは正座し、刀を静かに梟へと差し出す。


「ジェシカを頼む」


「了承した」


やがてグラフは立ち上がる。


「お前たちは先に船へ向かえ。

俺はジェシカに話を伝えてくる」


「分かった。アルス、行くぞ」


「……待ってくれ!」


アルスはクロードへ振り返る。


「お前も来い。これからの自分と向き合え」


その言葉に、クロードは小さく頷いた。


「……分かった。

俺、もう……戻れないんだよな……」


立ち上がり、アンディたちの後を追う。

彼らの行き先を知る者は、まだ誰もいない。

──ただ一つ、

その先に待つのが「戦い」であることを除いては。


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