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クロスリーパー  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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9.影と暗略

登場人物

『ディヴァインリーパー』

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ホーリーエンブレム

ティレ・レ・フィセル


鍛治師、錬成師

アルス


ギルマスの息子

クロード

あれは……何だ……」


 胸に芽生えた不安を押し殺し、アンディは対岸を見据えた。

血で形作った足場を蹴り、一直線に駆ける。


視界に飛び込んできた光景──

それは、言葉を失うほどの惨状だった。


小さな集落は焼け落ち、

生き残った人々は“何者か”に捕らえられている。


祈りも、叫びも、もう届かない。


「くっ……」

「何が、どうして……こうなった……」


答えを求めるように、アンディはさらに奥へ踏み込んだ。


「……何だ、これは!」


海の中から、這い上がってくる異形の群れ。

その背後では、見覚えのある死者たちが、まるで導くように揺れている。


一瞬、意識を周囲へ拡げる。


「……気配は、ないか」


異常な存在は感じられない。

だが──次の瞬間。


「ブラッディローズ」


赤黒い槍が放たれる。

 狙い違わず一体を貫き、アンディ自身もそれを追って踏み込んだ。


耳を裂くような叫び。

槍を引き抜き、流れる動作のまま横薙ぎに払う。


異形は崩れ落ち、静かに沈んだ。


アンディは止まらない。

迫る影を次々と斃しながら──


その足は、出雲の地を踏みしめていた。


────────


やがて対岸側へ回り込んだアンディは、

ジェシカとグラフのもとへの合流を急いでいた。


生存者を救い上げ、状況を確かめながら進む中、

視界の端に小さな集落が映る。


「……この心音……

 まさか……!」


槍を握る右手に力がこもる。


「…………やはりな」


そこに立っていたのは、

赤黒い法衣を纏った一人の人物。フードは被っていない。


アンディは低く名を呼ぶ。


「ホーリーエンブレム……」


相手は、すでに気づいていた。


「へへっ、やっと来たか。

 アイツの言った通り──“本物”が来るなんてね」


「本物……? それに、アイツとは誰だ」


「あはは、焦るなよ。すぐ分かるさ。

 それに──目的は、もう果たしてるしね」


不気味な笑み。

だがどこか、幼さが残る。


「ああ、そうだ……」


囁くように名乗る。


「俺は聖人様の寵愛を受けし、

 ホーリーエンブレムの一人──

 ティレ・レ・フィセル」


「よろしくね。

 本物のクロスリーパーさん」


その言葉と同時に、

フィセルは両腕を持ち上げ、指に力を込め、握りつぶした。


「──なっ!?」


アンディの周囲で蠢いていた異形たちが、

一斉に動きを止め、崩れ落ちる。


「……何をした」


「あは、あはは! 教えないよ?」

「あはははは……!」


狂った笑いを残し、

フィセルの姿は足元から静かに崩れ、消えていった。


あとに残ったのは──静寂。


燃え続ける集落。

吹き抜ける風。

かすかな呻き声。

そして、動かぬ亡骸。


アンディは拳を強く握り締める。


「ホーリーエンブレム……

 ティレ・レ・フィセル……」


──────────


その後、アンディはジェシカたちと合流した。

アルスたちはすでに上陸し、負傷者の手当てを行っている。


沈んだ表情に気づき、グラフが低く問う。


「……どうした」


「ああ……

 お前たちに、話さなきゃならないことがある」


「……そうか」


グラフは静かに船へ視線を向け、

アンディは無言で頷いた。


二人は歩き出す。

途中でジェシカにも声をかけ──


三人は、停泊する船内へと向かっていった。


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