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クロスリーパー  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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8.未知と未知

登場人物

『ディヴァインリーパー』

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

ミネルバ・ソフィア・ボア国王  


鍛治師、錬成師

アルス


ギルマスの息子

クロード

甲板の上で、潮風に吹かれながらジェシカは一人、遠い海を見つめていた。


その背中を見つけ、アルスが静かに歩み寄る。


「よお。さっき気づいたんだけどさ……剣、置いてきたのか?」


「あ、うん。アンディにね、これ以上使うと修復が難しくなるって言われて」


「そうか……それじゃあ──」


言いかけて、アルスは言葉を切った。


「ん? どうしたの?」


「いや。出雲の国で、俺も聞きたいことがあるんだ。

 それが分かったら……話すよ」


含みを残したまま、アルスは背を向けて船内へ戻っていった。


やがて、それぞれが束の間の時間を過ごす。


────────────


「見えてきたぞー!!」


船長の声が船内に響いた。


アンディ、アルス、グラフ、そしてジェシカ。

四人はそろって甲板へ出る。


視界の先には、遠目にも分かる巨大な山がそびえていた。


「うわ……なにあれ! すっごく大きい!」


身を乗り出し、ジェシカは目を輝かせる。

隣のグラフは、潮風に飛ばされないよう帽子を押さえながら、まだ小さく見える出雲の国を見据えていた。


そこへ、アルスとアンディも歩み寄ってくる。


「なあ、ジェシカ」


呼ばれ、ジェシカは身を引き戻して振り向いた。

アルスの右手には、以前見せられた出雲刀が握られている。


「この刀……もしお前が扱えるなら、使ってほしい。

 できるか?」


「え……いきなり言われても……」


真剣な眼差しに押され、ジェシカは差し出された刀を受け取る。


静かに鞘から刃を抜き、両手で柄を握り──構え、振り下ろす。


だが、鈍い音とともに切っ先は大きくぶれた。


「……これでいいの?」


「いや、違うな。

 あの時見た動きとは全然違う。

 やっぱりこの出雲刀……何かあるようだ」


沈黙が落ちる。


「そっか……なら、私には扱えないよ」


ジェシカは刀をアルスへ返した。


「ああ……変に期待させて悪かった」


「ううん」


重たい空気──


その瞬間、遠くからいくつもの悲鳴がジェシカ達の耳に響いた。


「えっ、なに!?

 グラフ! アンディ!」


「ああ……これは……」


アンディの視線を追い、ジェシカも遠くを見る。


さきほどより、はるかに近づいた出雲の国。

そこから上がる叫び声、黒煙、そしてかすかな炎。


──!!


ジェシカは身を乗り出し、飛び出そうとする。


「待て!」


アルスが腕を掴んだ。


「何!? あれを放っておけって言うの!?」


「違う!

 状況も分からないまま動いたら、余計に混乱するだろ!」


「──っ……でも!」


そのやり取りを断ち切るように、グラフが低く告げた。


「ジェシカ。俺の近くから離れるな。

 アンディ……今回はお前が力を振るえ。

 俺とジェシカは人命優先だ」


「ああ、任せとけ」


「分かった! 行こう!」


「アルスは船に残れ。

停泊できる場所へ誘導しろ。

それまでこの付近で待機だ」


「了解だ。頼む、グラフ」


「ジェシカ、行くぞ」


「うん!」


「ブラッディローズ」


グラフはジェシカを抱え、叫びの聞こえる出雲の国へと飛び立った。

続くように、アンディも後を追う。


────────


上から二人の目に映ったのは──惨劇だった。


死者のような存在が、一方的に逃げ惑う人間を襲っている。


だが、何かが違う。

ジェシカの知る“死者”とは。


──心音がない。


「グラフ……あの死者、心音が……」


「ああ……俺にも分からねえ。

 だが、襲ってるのは間違いねえ!」


次の瞬間、グラフは上空から急降下し、赤黒い両手斧を振り下ろして一体を叩き潰した。


グラフは出雲の地へ着地し、周囲を見渡す。


内臓を喰らうわけでも、血を吸うわけでもない。


ただ──


クチャクチャと音を立て"脳"を、喰っていた。


「や……やめてくれ……」


男が数体に意識があるまま掴まれ、引きずられ、

顔の皮膚を裂かれ、露出した頭蓋へ──噛みつかれる。

そして………。


そこへ、ジェシカも出雲の地へ降り立つ。


「ブラッディローズ」


残酷な場に相応しくない、美しい紅い血の薔薇の花弁が舞った。


だが、その光景を見たジェシカの怒りは収まらない。


「身体解放―!!」


青白いオーラを纏い、真紅のロングソードを握り、

ジェシカは凄まじい速さで敵を切り裂いていく。


グラフもまた身体解放し、反対側へ。

ただひたすら、人命を優先するために。


その一方で──


アンディは血の薔薇で空中に足場を作り、

冷静に戦場全体を見渡していた。


「何だ……あの集団は……」


海側──別方向から、同じ“何か”が歩いてきていることに。


アンディは不安を抱えつつ、その方角へと動き出した。

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