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クロスリーパー  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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7.出港と期待

登場人物

『ディヴァインリーパー』

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

ミネルバ・ソフィア・ボア国王  


鍛治師、錬成師

アルス


ギルマスの息子

クロード

──次の日。


ミネルバ王国の港に、ジェシカたちは立っていた。

眼前に横たわるのは、威容を誇る一隻の大船。

陽光を受けて白く輝くその船体は、まるで新たな運命へと誘う門のようでもあった。


その甲板から、聞き覚えのある声が降りてくる。


「おーい!」


見上げれば、アルスが大きく手を振っていた。

その姿を認めた瞬間、ジェシカの瞳はぱっと光を宿す。

振り返った彼女の笑顔は、曇りひとつない朝の空のように明るかった。


「わあ……すごい……!」


無邪気な歓声。

それを見守るアンディとアリスの表情は、自然とやわらいでいる。

ただ一人、グラフだけが肩をすくめ、帽子の鍔を指で押し下げた。


「さっさと来いよ。こっちで待ってる」


「うん、今行く!」


出港までは、まだわずかな猶予があった。

四人は船へと足を踏み入れる。

内部は絢爛に彩られ、揺れる光がまるで夢の残滓のように瞬いていた。


────。


「よう、待ってたぜ。

 昨日、ソフィアにいきなり言われてな。お前たちと一緒に出雲へ行けって。

 驚いたが……悪い気はしなかった」


その言葉に、アンディが静かに応じる。


「当然だ。お前がいなければ、始まらない」


「……何かあるのか?」


「単純な話だ。出雲で目的の物が手に入れば──

 次はアルス、俺、そしてクロード。

 三人でジェシカの出雲刀を打つ」


空気が、わずかに張り詰めた。


「……クロードだと?

 なぜ、お前がその名を知っている」


「話は後だ。いずれ嫌でも向き合うことになる」


「……そうか」


沈黙は短く、しかし重かった。


「もう、アルスったら……」


やわらかな声が、その緊張をほどく。

振り向けば、音もなく歩み寄るソフィアの姿。


「お話の最中、失礼いたします。

 出港の支度はすでに整っております。いつでもお発ちになれますわ」


「なら、急ぐ理由は十分ね」


アリスが微笑む。


「うん!行ってくるね」


「ええ」


グラフはアリスへ歩み寄り、声を潜めた。


(血の結晶……頼む。こちらは気にするな)


無言の頷き。

そしてアリスはアンディの方へ歩き抱き寄せる。


「……気をつけて」


「ああ……」


それだけで、言葉は足りていた。


静寂を断つように、ソフィアが小さく咳払いをする。


「皆様のご無事の帰還を、心よりお祈り申し上げます」


差し出されたのは、国賓としての招待状。

ジェシカはそれを胸に受け取った。


「それでは──失礼いたします」


そんなソフィアの隣にアリスが不適に笑い近づく、そして静かに指を鳴らす。


──パチン。


瞬きの間に、二人の姿は消え、港へと姿を現した。


「……今の、なんだよ」

「まったく……魔女ってやつは」


アルスの笑いが、甲板に広がる。


 その余韻に重なるように、低く長い汽笛が海を震わせた。


船はゆっくりと岸を離れ、

運命を乗せて──出雲の国へと向かう。


────。


その旅立ちを、遠くから見つめる影がある。

赤黒き法衣に身を包んだ、あの男……。


「やはり……そうか……くく……くくく……」


歪んだ嗤いが、風に溶けた。


出雲の地で待つものが、救いか、あるいは──破滅か。


潮風を受けながら、

それでもジェシカは、微笑んでいた。


まだ見ぬ未来を、まっすぐに信じるように。


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