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クロスリーパー  作者: ルーツ
第三章 未開の地、出雲の国

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5.断罪と不吉

登場人物

『ディヴァインリーパー』

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

ミネルバ・ソフィア・ボア国王  

ミネルバ・フェミル・オルグイ前国王


鍛治師、錬成師

アルス

ミネルバ城前広場──


まだ朝だというのに、

そこにはすでに大勢の民が集まっていた。


ざわめき。

期待。

不安。

怒り。


さまざまな感情が、広場に張りつめている……


その群衆の後方に、

ジェシカ、グラフ、アンディ、アリスの四人は立っていた。


「す、すごい人だね……」


小さく呟くジェシカ。


「当然だ。これから一つの時代が終わる瞬間だからな」


グラフは静かに答える。


「うふふ……でも、終わりは同時に始まりでもあるわ」


 アリスの視線は、高く設けられた処刑台へ向いていた。


やがて──

城門が重々しく開く。


その瞬間、広場の空気が一変した。

現れたのは、兵に囲まれた一人の女。


前国王。

ミネルバ・フェミル・オルグイ。


かつて絶対の権力を誇った女は、今や鎖に繋がれ、

それでも尚、誇りだけは失っていない様子だった。


────。


群衆の中から…特に男達からの怒号が飛ぶ。


「暴君め!」

「よくも今まで―!」

「早く裁け!!」


だがフェミルは、見下すように嘲笑っていた。


「……愚民め…」


かすれた声……それでも、王の声音だった。


「貴様ら男達に社会を委ねた結果、女は見下され……

 そんな哀れな女を救う為、我は手を差し伸べた。

 全て、お前たち男が女を蔑ろにした結果な筈だ…」


ざわめきが強まる。


ジェシカは胸を押さえた。


「どうしてあんな事……」


「信じてるのよ。最後まで、自分の正義を……」


アリスは静かに言う。


そのとき──


 処刑台の反対側、城のバルコニーに一人の姿が現わし、少し後ろにアルスの姿も見える。


純白の装束。

凛とした立ち姿。


ミネルバ国王──ミネルバ・ソフィア・ボア


ソフィアの姿を目にした国民。

広場が静まり返り、風の音すら止まった。


ソフィアは、ゆっくりと民を見渡す。

──そしてゆっくりと口を開いた。


「ミネルバの民の皆さん。

 本日ここに、前国王ミネルバ・フェミル・オルグイの罪を裁きます」


声は澄み、揺らぎがない。


「彼女は王として、民を苦しめ、国の均衡を歪めました」


「──……」


「……しかし」


その一言に、空気が変わる。


「彼女もまた──

 この国を想った一人なのです……」


ソフィアの言葉に国民がざわつく……


フェミルの目が、わずかに揺れた。


「私は、憎しみではなく!未来のために裁きを下します!!」


「…………」


「ここに宣言します」

「ミネルバ王国は、過去を断ち切り──」


ソフィアは拳を上に掲げた。


「新たな時代へ進むと!」


その瞬間。


民衆の中から、小さな拍手が生まれた。


一つ、また一つ。


やがてそれは、大きな波となって広場を包み込む。


ジェシカは目を見開いた。


「……すごい……」


アンディが小さく息を吐く。


「そうだな…あの国王なら導くだろうな」


グラフは何も言わない。

ただ静かに、処刑台を見つめていた。


やがて──刑が執行される。


抵抗することなく、

フェミルは静かに処刑台へ歩み、自ら首を木台に預けた。


ざわめいていた群衆の声が、

いつの間にか遠のいている。


誰も──息をしていないかのようだった。


処刑人が剣を掲げる。


その瞬間。


フェミルは、ゆっくりと目を開き、

ただ一人。


バルコニーに立つソフィアを見た。


かすかな笑み。


それが嘲りだったのか、

それとも──


「奪えるものなら奪ってみろッ!!

 この想いだけは……

 絶対に消えることなどないッ!!」


叫びが、空を裂いた。


────。


振り下ろされる刃。


音は、なかった。


次の瞬間、転がったのは──


……王の首だった。


誰も声を上げない……。


風だけが、静かに広場を吹き抜けていく。


……すべてが終わった。


そしてミネルバに、

新しい風が吹いていた。


時代の終わりを見送る風、そしてこれから始まる風。


ジェシカの頬にも風を感じた。


「……終わったんだね」


「ああ」


グラフの声は低い。


「だが──ここからが始まりだ」


その時、誰にも気づかれぬまま、広場を見下ろす屋根の上に、一つの影が立っていた。


赤黒い外套にフードを被っていた。


「……へえ」


愉しげな声。


「本当に殺したんだ。四代厄災を」


「ははっ!面白くなってきた」


その姿は、次の瞬間──

         音もなく消えた。


新しい時代の幕開けを、嘲笑うかのように。


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