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クロスリーパー  作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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17.遂行と想い

登場人物


ディヴァインリーパー

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

第二王女ソフィア  第一王女フェミル(現国王)


覚醒死者      

魅惑のアリュール  

 アリスの知略によって、アンディ達は二人目の覚醒者を討った。

 残るは二人の覚醒者、そして今回の依頼目標──魅惑のアリュール。

その討伐に向け、彼らは行動を開始する。


────。


「グラフ! 二人にして大丈夫なの!?」


「ふっ、お前が気にすることじゃねぇ。

 それに、こっちはこっちでやらなきゃならないこともあるだろう」


 グラフの言葉に、ジェシカは何も返せず、ただ横目で彼を見ながら移動する。

 その視線に気づきながらも、グラフは黙ったまま、墟城全体を見渡せる高所で足を止めた。


「やはり、さっきの騒ぎで死者共の動きが早いな……」


どう動くのが最善かを考えた、その矢先。

死者たちの動きに変化が起きる。


先ほど四人がいた方角へ、

一斉に向かって動き出したのだ。


「ふっ、助かるぜ……。

 おいジェシカ、アンディ達が上手くやったようだ。おかげでこっちは動きやすくなった」


「そうみたいね! 良かった」


 不安げだった表情が安堵へと変わり、ジェシカは微笑む。

それを見て、グラフも帽子を被り直した。


「俺達は俺達で、あと二人の覚醒者を始末する」


「うん、分かってる。それで、どうするの?」


「下の方から禍々しい心音が聞こえるだろう」


「うん」


「……魅惑のアリュールに間違いない。だが、その近くにもう一つ、覚醒者と同じ心音がある」


「それなら、こっちから近い覚醒者を先に片付けよう」


「そうだな。今はその方が得策だ」


ジェシカは優しく微笑み、力強く頷いた。


アンディの囮のおかげで、

道中、死者に見つかることなく砦まで到達できた。

 しかしここから先は見張りも多く、簡単に突破できそうにはない。


「ここからどう中に入るか……」


 見張りに見つからない距離から砦を見据えるグラフの肩に、ジェシカがそっと手を置く。


「私がやる」


グラフは視線を落とし、確信に満ちた表情のジェシカを見た。


「ふっ、頼む……」


ジェシカはフードを深く被り、

アンディからもらった短剣を抜く。


 砦の入り口を徘徊する見張りの背後へ、静かに回り込み──

瞬時に、頸椎から喉へ刃を貫通させ、首を落とした。


そのまま、滑り込むように砦へ侵入する。


「お、おい……ジェシカ、大丈夫か?」


合図もないまま、わずかな時間が過ぎる。

やがて砦の内側から、ジェシカが手招きした。


グラフはそれを確認し、静かに歩を進める。


中はすでに、

ジェシカの襲撃によって死者たちの首と身体が切り離され、転がっていた……


「ジェシカ、まだ解放はしていないよな?」


「うん、してないよ」


 容易ではない任務を、まるで最初から簡単だったかのようにこなすジェシカ。

その姿に、グラフはわずかな距離を感じていた。


「そうか……。だが、次は俺がここにいる覚醒者を始末する」


「ねえ、ここは私がやるよ。

 そしてグラフは、アリュールの近くにいる奴をアンディ達の方へ誘導してほしい」


「ここから二手に分かれるつもりか?」


「そうだね。だって、さっきからアリュールがこっちに向かってきているよ」


「な、何!?

 ……た、確かに近づいてきているな……」


急な事態に、グラフも焦りを隠せない。

額に冷たい汗が滲む。


「ここからは荒れると思う。お願い、誘導して」


「だ、だが下手をすれば──

 お前一人で、この覚醒者とアリュールの二匹を相手にすることになるぞ! 本当に平気なのか?」


「平気かどうかは、やってみないと分からない。

 だけど、今の私は、負ける気がしない」


 その背中から溢れる確信を、グラフははっきりと感じ取っていた。


「分かった、俺はアンディ達と合流する」


「うん、お願い」


「ああ、任せろ! お前はお前の思うままに動け。ここは頼んだぞ、ジェシカ!」


 そう言うとグラフはジェシカを残し、アリュールの近くにいる覚醒者を誘導しながらアンディ達の元へ向かって行った。


────。


 グラフの姿が視界から消えるまで、ジェシカはじっと目で追った。

そしてゆっくりと、アルスとアンディが作ったロングソードを背から抜き、構える。


「分かってるよ……出て来なよ」


 その言葉と同時に、先ほどまでグラフが立っていた場所に、一人の女が姿を現した。


「へー、これ見破るんだ。すごいね、貴女」


優しい笑みは消え、ジェシカの目に力が宿る。

真剣な表情で、覚醒者を睨みつける。


「そんな睨まなくてもいいでしょ? 私は別に闘いたいわけじゃないしー」


ジェシカは切先を地面に向け、構えをやや低くした。


「じゃあどうしたいの?

 私の目的は魅惑のアリュールを倒すことであって、あなたを殺すことは含まれていない」


「へー、そうなんだー? じゃあ見逃してくれるのかなー?」


「あなたがこっちに手出ししないなら、見逃してあげてもいい」


「何それー! 何もしないってどういう意味?」

「あ、でも無理かもー。だって私、たくさんの男達と楽しいことするの大好きなんだもん!」

「だから、早くこんな下らない事は済ませて、私を快楽の時間に連れてってよ!!」


 覚醒者は目を見開き、ニヤリと笑い、赤黒い血で作られた両手剣をジェシカに振りかぶった。


 ジェシカは二本のロングソードをクロスさせ、攻撃を受け流す。

 しかし勢いを利用した連続攻撃に、ジェシカは一度距離を取り、戦況を見極める。


「あは! どう? 私の剣捌き」


覚醒者の手には血で形成された両手剣。

ジェシカは過去の戦いを思い出しつつ、攻撃を受け流し、相手の癖を見極める。


「あは! お前弱いな、まだまだ行くよ!」


 覚醒者は両手剣を肩に乗せ、距離を詰め、振り上げ、薙ぎ払い、連続攻撃を仕掛ける。

 ジェシカは剣を使いなんとか受け流すが、すべてを避けられるわけではなく、わずかに傷を負った。


「あは! こんなに弱くてよくあの二人も倒せたね! ありえない!」

「あ、もしかして、後三人が強いってやつなのかなー」


 余裕の表情でジェシカを見下し、攻撃を緩めない覚醒者。

 しかしジェシカは、魅惑のアリュールが戦いを監視していることを察し、解放ができない。


 覚醒者は戦いを終わらせようと、一気に全力で突進した。


「もうお前との遊びは終わり! 男達と楽しい時間を過ごすんだから!」


 華奢だった身体が筋肉質に膨らみ、二周りほど大きくなる。

両手剣を力強く握り、ジェシカめがけて突進する。


 それを目にしたジェシカは、瞬時に身体を解放し、全力の攻撃を受け流す。


「な、何だこれは!?」


 黒かったロングソードには、真紅の血管が浮き出し、まるで生きているかのように脈打っている。


「お前のその剣は何だよ!」


 動揺する覚醒者をよそに、ジェシカは両手のロングソードを握り、急所を狙って手数で圧倒する。

 覚醒者はかろうじて弾き返すが、次第に押され始めた。


「何度したって同じだよ!」


 覚醒者は抵抗しようとするが、ジェシカの攻撃速度に追いつけず、壁際へと追い込まれる。

深い傷を負い、悲鳴を上げる覚醒者。


「や、やめて! もう無理! 私…もう無理だから!」


 ジェシカは狙いを定め、鋭く突き、覚醒者の口を貫通させた。

 さらにもう一本のロングソードで腕を斬り落とし、片足も斬る。


 壁に刺した剣を引き抜き、倒れた覚醒者の顔に刃を向ける。


「もう悪いことしないでよ」


 覚醒者は涙を流し、安堵の表情を浮かべた瞬間、床が崩れ、悲鳴を上げながら地下の暗闇へと消えていった。


──


「くっくっくっ……よくも好き勝手暴れてくれたものだ。

 さっきの男と言い、お前と言い、一体お前達は何がしたいのかねぇ……」


穴の空いた空間から、一人の女が現れた。

艶のある黒髪、

金色の瞳、

透き通る白い肌、

完璧な身体のラインを持ち、

黒いドレスに包まれたその姿は、どことなくマリアを思わせる美しさだった。


口角を上げ、ニヤリとジェシカを睨む。


「くっくっ……私の名はアリュール。よろしくお嬢さん」


 圧倒的な禍々しさに、ジェシカは思わず生唾を飲み込んだ。


───────────────────────


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