14.囮作戦開始
登場人物
ディヴァインリーパー
ジェシカ グラフ アンディ アリス
グラフの兄 錬金術師
鍛治師グレン アルス
ミネルバ王国
第二王女ソフィア 第一王女フェミル(現国王)
覚醒死者 古代マリア
魅惑のアリュール リーンホークマリア
話し合いが終わり、四人はリビングのテーブルに地図を広げた。
グラフが指を差しながら話し出す。
「いいか、俺達は今ここ、ミネルバ王国にいる。そして、魅惑のアリュールが根城にしているのはこの場所だ」
ジェシカは目を丸くした。思ったよりも近い。
「え…思ったより近いね…」
「奴らは人間を食べるために攫うわけではない。男だけを子作りの道具として連れ去るらしい」
グラフの説明に、ジェシカは首をかしげる。
「ねえグラフ。男と女がいないと、どうして子供が作れないの?」
三人は一瞬、動きを止めた。
アリスが微笑みながらジェシカに向き直る。
「ふふ、ジェシカはまだ男の人に好意を持ったことがないのね。でも、それは大切なことだから、機会があれば私が教えてあげるわ。今は作戦に集中しましょう」
ジェシカは頷いた。
グラフは二人を見て、帽子を深く被り直す。
「さて、話を戻す。俺とアンディで覚醒者を狩るが、一対一にこだわる必要はない。アンディ、お前はどう思う?」
アンディはうなずく。
「俺も同意だ。ただ、奴らがどこにいるか分からないのにどう戦う?」
グラフは地図を指しながら説明する。
「奴らは男を攫うことを優先する。俺とアンディが囮になれば、覚醒者の一人が反応するはずだ。最悪の事態も想定しているが、ジェシカが作った血の結晶があればある程度は戦える」
アンディは少し考え、口を開く。
「囮は俺がやる。討伐はグラフに任せたい」
グラフはニヤリと笑う。
「任せろ。頼むぞ、アンディ」
ジェシカは二人のやり取りを見て、仲間の絆を感じた。
「私の役目は?」
「魅惑のアリュールだけに集中する。俺たちの距離を保ちつつ、姿を隠して行動しろ。場合によっては斬れ、不意打ちもありだ」
アリスが口を開く。
「ちょっと、私を忘れていないかしら?私の魔術サポートを受けると、動きに差が出るわ」
「なるほど、それなら安心だな」
「うん!行こう!」
四人はソファーから立ち上がり、別荘の屋根に上った。
そして、ブラッディローズを使い、魅惑のアリュールが根城にしている場所へ向けて移動した。
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夜空には星が瞬き、三日月がくっきりと輝いていた。雲一つなく、月明かりが四人の影を長く伸ばしている。
その月夜に、ジェシカ達「リーパー」の三人の耳に、微かだが異なる心音が二つ聞こえた。
「グラフ、聞こえたか?」
「ああ、行くぞ」
声のする方へ、四人は森の中へと歩を進めた。
木々の影が揺れる間、視界に女の死者たちがちらつき、近くには人間の男達が数人いた。
死者たちは男達に危害を加えず、近くに用意された馬車へと誘導している。
その様子を見たグラフは帽子を深く被り、アンディはフードを深くかぶった。
「ふっ、作戦開始だ」
グラフの声に合わせ、二人は馬車の方へ近づき、芝居を始める。
「おーい、助けてくれ!道に迷ってしま──」
「お、おい!待て!俺達はただ道に──」
死者たちは二人のわざとらしい芝居にすっかり騙され、二人を馬車に乗せ、根城へと連れて行った。
その一連の動きを、遠くから見守るジェシカとアリス。
二人は思わず顔を見合わせ、笑みがこぼれる。
「あはは、何あの下手な芝居……」
「そうね……死者だから騙せたけど、他の種族だったらすぐにバレていたわね」
声を大きく出せば、他の死者にも作戦が知られてしまう可能性がある。
しかし、そのわざとらしさは二人の記憶に刻まれ、笑い話になることは間違いない。
「よし、行くよ、アリス!」
「ええ、じゃあ姿を消すわ。後はお願いね、ジェシカ」
ジェシカはアリスを抱え、連れ去られたグラフとアンディを追いかけるように森の奥へ進む。
こうして、魅惑のアリュール討伐に向けた作戦は静かに、しかし確実に動き出した。
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