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クロスリーパー  作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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9.交渉と戦略2

登場人物

主人公   賞金稼ぎ  鍛治職人  錬金術師

ジェシカ  グラフ   グレン   アルス


ミネルバ王国         覚醒死者

ソフィア  フェミル王女   魅惑のアリュール

 綺麗に手入れされた花々が日差しを受け、水気を含んだ花弁が静かに輝いている。

 穏やかな空気の中、ジェシカとグラフは庭園の椅子に腰掛け、紅茶を口にしていた。


その静寂を破るように──

 カチャ、カチャ、と甲冑が触れ合う硬い足音が近づいてくる。


「お待たせしました。ご案内いたします」


 二人は立ち上がり、兵士の後に続いて城内へと入った。

案内されたのは落ち着いた調度の客間。

 そこでは既に、ソフィアがソファーに腰掛けて待っていた。


促されるまま、二人も対面のソファーに座る。


「お時間を取らせてしまい、申し訳ありません」

「それでは……先ほどのお話をさせていただきます」


ソフィアが言葉を続けようとした、その時だった。


ジェシカはふとグラフを見る。

 グラフは無言のまま立ち上がり、窓際のカーテンへと歩いた。

 視線はそちらへ向けたまま──目だけが、鋭くソフィアを捉えている。


「……俺達を馬鹿にしているのか?」


「──ふふ」

「少し、試しただけですわ」

「本当にクロスリーパーなのかを……ね」


ソフィアは微笑み、視線をカーテンへ向けた。


「もう出てきていいわ。アルス」


「……っ!」


グラフが即座に反応する。


「アルス……だと?」


「あら? ご存知でしたか?」


次の瞬間、カーテンが揺れ、そこから一人の男が姿を現した。


「あはは、悪い悪い」

「今この国、男が俺しかいなくてさ」

「さすがに城の中でも肩身が狭いんだよ」


軽い調子でそう言いながら、男──アルスはジェシカ達に近づき、ソフィアの隣に腰を下ろした。


それを見た瞬間、グラフが口を開く。


「おい、アルス」

「お前……リーパーだな?」


「ああ。お前と同じクロスリーパーだ」

「でも戦えないぜ?」


「……錬金術師、だろ」


「へぇ」

「よく分かったな」


「俺達はお前を探しに、ここまで来た」


「は?」

「何だそれ。なんで俺が探されなきゃならねぇんだよ」


グラフは一瞬だけ思案する。

──ここで、ジェシカの事を話すべきか。


だが、今ではない。


「……それで?」

「まずはお前達の話を聞こう」


「ありがとうございます」


ソフィアは背筋を正し、静かに語り始めた。


「現在ミネルバ王国は、現王である第一王女フェミルを中心に」

「四大厄災、“魅惑のアリュール”との戦いの最中にあります」


「先代王の時代までは拮抗しておりました」

「時には我々が優勢に立つ事もありました」


「──ですが、今は劣勢です」


グラフは黙って聞いている。


「理由は明白です」

「この国に……男がいないから」


「第一王女による“男女格差の平均化”という政策」

「私は……愚策だと考えています」


「男達が担ってきた仕事に女が投入され」

「男は理由もなく解雇され、職を失いました」


「生活は困窮し、街は急速に貧しくなり」

「やがて男達は国を捨て、他国へと流れていった」


「そこに目を付けたのが──魅惑のアリュール」


「攫われた男達は魅了され」

「覚醒者“四人の膝下”との間に子を成し」

「敵は、着実に戦力を増やしています」


「いつ、王国が滅びてもおかしくありません」


一拍置き、ソフィアは真っ直ぐにグラフを見た。


「そこで──」

「クロスリーパーである貴方に」

「魅惑のアリュール討伐をお願いしたいのです」


「……お引き受けいただけませんか?」


沈黙。


そして、グラフは短く笑った。


「……断る」


「……」


「仮に受けたとしても、俺では達成できない」

「それに、俺達にメリットが一つもない」


「下手に関われば」

「次に狙われるのは……俺達になる」


「……ごもっともですわ」


静かに視線を伏せるソフィア。


その様子を見ていたアルスが、ふいに口を挟んだ。


「なぁ」

「依頼がどうこうよりさ」


「なんで、俺を探しに来た?」

「それが気になって仕方ねぇんだが」


その問いに、グラフはゆっくりと口を開いた。


「……俺とアルス、そしてジェシカの三人だけで話がしたい」


アルスは困ったようにソフィアを見る。


「いいわ」

「他の者は隣室へ」

「終わったら、声を掛けて下さいませ」


「ああ、分かってる」


そう答えるアルスとソフィアのやり取りを見て、

ジェシカは──直感的に理解した。


(……この二人、恋人同士だ)


──────。


部屋には三人だけ。アルスが先に口を開く。


「それで、俺だけに話すってなんだよ?」


グラフはジェシカの目を見た。

 ジェシカは横に置いてある剣をテーブルに置き、袋からヴェインのダークマターを取り出す。


 グラフはそれを手に取り、アルスの目の前に差し出した。


「この剣に──お前の錬金術で、コレを使って命を吹き込んでほしい」


アルスは一歩後ずさる。


「はぁ!? 武器に命だと!? 何言って──」

「お、おい……これって……ウソだろ…」


「出来るか?」


「ちょ、ちょっと待て! 話が全然見えねぇ」

「何でお前がこの剣を必要とするんだよ…お前リーパーだろ!? 本来なら必要ないはずだ」


「違う。この剣は、ジェシカのものだ」


アルスはジェシカを見やる。


「な、な…どういうことだよ…」

「悪魔の雫をこんな女の子のために使うってことか!?」

「いやいや、あり得ねぇ……」


ずっと黙っていたジェシカが口を開く。


「グラフ。話しても理解してもらえないみたいだから、少しだけ見せるね」


「……少しだけだぞ」


「うん、分かってる」


「はあ…!? 何をするんだよ、俺に…」


「黙って見て。理解して」


 ジェシカは目を見開き、ほんの一瞬だけ全力解放をした。

空気が瞬間的に震え、周囲に緊張が走る。


 アルスは息を呑み、その力を理解せざるを得なかった。


「おいおい……本命はお前じゃなくて、こっちの子だったのかよ……」


「そういうことだ」

「リーパーであるお前ですら、今のジェシカは普通の人間に見えるだけだ」

「だが解放すれば、お前にも理解できたように、ジェシカはとんでもない力を持っている」

「この状態で剣を握れば、一瞬で灰になる。そうならないように、お前の力を借りたい」


アルスは固唾を飲み込み、言葉を返す。


「なるほどな。いいぜ……だが、俺たちの問題も片付けてくれねぇと手は貸さねぇ」


グラフが鋭く返す。


「魅惑のアリュール討伐のことか?」


「そうだ」

「俺は第一王女を引きずり下ろして、ソフィアを王位につけたい」

「このくだらない命令を無くし、国民が笑って暮らせるミネルバ王国にする」

「そしてソフィアと共に、この国を支える」

「どうだ? この依頼を受けるなら、それしか道はねぇぜ」


グラフはジェシカに目を向ける。


「どうだジェシカ?」

「魅惑のアリュールは四大厄災の一角だぞ。覚醒して全力解放しても勝てるか分からん」

「それでも、お前の目的のためにやるか?」


ジェシカは迷わず答えた。


「だって倒さないと、この剣は進化していかないんだよね?」


「……今のところはな。多分」


横からアルスが口を挟む。


「いや、悪いが、リーパーで錬金術師は数人いるが、錬成できるのは俺だけだぜ」


「そういうことらしいが……どうだ?」


ジェシカは少し考え、頷く。


「うーん……やるしかないね。ヘレティックを殲滅させるためなら、このくらいのことはやらなきゃ」


「ああ、そうだな! くはははっ!」

「ジェシカ、お前が直接依頼を受けろ。俺は補助に回る」


「分かった。でも、その前に一つ条件がある」


ジェシカはアルスを見据える。


「な、なんだよ…」


「本当にこの剣を進化させられるか、この目で確認させて」

「グレンも言ってた。まだ成長の余地がある剣だから、まずはこのダークマターで試す」

「それができたら、依頼を受ける」


ジェシカの隣で、グラフは肩を震わせ笑う。


「くはは! やられたなアルス!どうする?」


アルスもニヤリと笑った。


「へっ、いいぜ。その話に乗ってやるよ」

「交渉成立ってことでいいな?」


「先に作ってからだけどね?」


「ああ、分かってる。それなら問題なし」


 ジェシカはアルスと握手を交わし、隣室にいるソフィアを呼んだ。


─────。


 事の経緯を説明し、ジェシカたちは正式に依頼を受けることになった。


「まあ、それはそれは……」


ソフィアに話しかけるアルス。


「そういうことだから、俺は工房に入るぜ」


「分かっています。怪我のないようにね、アルス」


二人は視線を交わす。


「おっと、悪かったな。それで、グラフに一つお願いがある」


「何だ?」


「一人、腕のいい職人を連れてきてほしい。錬成はできるが鉄は扱えないからな」


「なるほどな……」


その空気の中、ジェシカが声を上げる。


「それなら一人いるよ! フレデリックさんなら大丈夫!」


グラフが遮る。


「いや待て。フレデリックは人間だ。鍛治職人もリーパーでないと、息が合わないだろ、アルス?」


「完璧な物を作るならそうだな」


「えー、そんなことないと思うけど──」

「あ! そうだ! アンディは!?」


「ああ……確かに奴ならいいだろうが、俺は奴とは……」


「なら私が行ってくるよ。グラフは待ってて」


「………」


「いや、ジェシカはここに居ないとダメだ」


アルスが真剣な表情で告げる。


「俺の錬成は、使い手の一つ一つの動きや筋肉を記憶させ、馴染ませながら作らないとダメだ」

「行くなら、グラフ、お前に頼む」


「──ふっ、場所を教えろ、ジェシカ」


「分かった」


 ジェシカはアンディとアリスの居場所をグラフに伝えた。


「俺は迎えに行くが、何日かかるか分からない」

「ああ、こっちもジェシカの解放に耐える段階まで記憶する必要があるから、数日はかかる。気にせず行ってこい」


 こうして、グラフは迎えに、ジェシカは剣の進化のためアルスの工房に残り、それぞれの役割を開始したのだった。


───────────────────────


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