表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスリーパー  作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/41

7.未練と覚悟

登場人物


主人公    賞金稼ぎ  鍛治職人  錬金術師

ジェシカ   グラフ   グレン   アルス


ミネルバ王国 

ソフィア

 ジェシカのためだけの武器を作るには、“憑代”となる基礎武器が必要だった。

 その制作を、グラフの兄グレンが引き受けてくれている。


完成までの二、三日。

 ジェシカとグラフは集落に滞在しながら、探し人であるアルスの行方や、ミネルバ王国の情勢について同族たちに聞いて回っていた。


「ねえ、グラフ。ミネルバ王国のこと、何か知ってる?」


「そうだな……詳しいわけじゃないが」

「あの国は覚醒死者との争いが絶えず、今も戦火の中にある」

「それと──先代の大王が三年ほど前に崩御してから、第一王女と第二王女の間で権力争いがあったらしい」


「うーん……」


「何だ、浮かない顔だな」


「いやさ、それ聞いたらさ……」

「もう情勢とか調べなくてもよくない? って思っちゃって」

「話聞いただけで頭痛くなってきたし、争い事に巻き込まれたくないじゃない?」


「……まあ、確かにな」


「でしょ!」

「だったらアルスさんの住んでた場所とか、見た目とか、そういう情報を聞いたほうが早いよ!」


「ああ。分かった」


────。


 二人は集落の同族たちに声をかけ、アルスの情報を集めて回っていた。

だが……。


「……ねえ、グラフ」


「なんだ?」


「グラフって、この集落で何したの?」

「なんかさ……みんな、グラフのこと睨んでる気がするんだけど……」


「……そうだな」

「別に話す必要はないが、知りたいなら話す」


 ジェシカの目が、好奇心でわずかに輝いたのを見て、グラフは帽子を深く被り直した。


「……ふっ」

「俺はな、リーパーとしてじゃなく、賞金稼ぎとしてこの集落を黙って出て行った」


「……」


「当時、俺には共に生きようとしていた同族がいた」

「だが俺は、そいつの想いよりも自分の鍛錬を優先した」


言葉を選ぶように、グラフは一度息を吐いた。


「ある日、死者共との戦いで限界以上の血を使い、俺は倒れた」

「指一本動かせず、渇きに支配され……」

「このまま死者として生きるしかないと、覚悟した」


「……」


「そんな俺を、そいつは探しに来た」

「深手を負いながら、死者の追手をかいくぐってな」


ジェシカは、何も言えなかった。


「……だが、見つけた時にはもう満身創痍だった」

「それでもあいつは、自分の命より俺を優先し、血を分けた」


「……」


「同族殺しは罪だ」

「俺は、その罪を背負って生きてる」


沈黙が落ちた。


「……ごめん、グラフ」


「気にするな」

「俺の話なんて、これくらいしかない」


そう言って、彼は話を切り替えた。


「それより、アルスの情報だ」


「……うん」


──────。


聞き込みの結果、いくつかの情報が集まった。

二人はそれを整理するため、グレンの家へ向かった。


「そういえば……」

「アンディたちと一緒にいた時、アリスさんから言われたことがあったけど……」

「まさかアルスさんが錬金術師だったなんてね」


「俺も詳しくは知らない」

「だが、アルスのアルカナが錬金術であること」

「そして、ソフィアがミネルバ王国第二王女だってことは確かだ」


「……やっぱり、厄介ごとだね」


「ああ」

「多分だが、グレンは最初から考えていたんだろう」

「自分が鍛冶を、アルスが錬金術を担う」

「この二人が揃わなきゃ、お前の武器は完成しない」


「……うん」


「つまり俺たちの目的は一つ」

「アルスを見つけ、ここへ連れてくる」

「それ以外のことは、どうでもいい」


「分かってるよ」


「よし」

「憑代の完成は明後日だ。それまで、少し休め」


そう言って、グラフは部屋を出て行った。


────。


グラフはそのまま集落を後にした。

ブラッディローズを足場に、一気に夜明け前の丘へと移動する。


そこには、石を積み上げただけの簡素な墓標がひとつ――

風に晒され、名も刻まれていない。


グラフは帽子を取り、墓前に立った。

誰もいない。

だからこそ、胸の奥にしまい込んでいた言葉が自然と溢れ出る。


「……ふっ」


「ここには、もう来るつもりはなかったんだがな」


丘を渡る風が、草を揺らす。


「お前を思い出すたび、胸が締め付けられる」

「だが……ようやく分かったぜ」


静かに、しかし確かな声音で続ける。


「お前が最後に言った言葉の意味がな」


一瞬、視線を落とし――再び前を向く。


「ああ。俺は決めた」

「この命は、マリア様のために使う」

「……それがお前に託された、俺の役目なんだろ」


風が強まる。


「もう迷わねぇ」

「次に会う時は――俺はお前の隣にいる」


帽子を胸に当て、短く息を吐いた。


「それまで、さらばだ……ルミ」


グラフは墓に背を向け、帽子を深く被り直す。

その背中には、もはや揺らぎはなかった。


*********


それから二日後。


朝食の卓を囲み、ジェシカとグラフは静かに食事をしていた。

その時、階下の工房から慌ただしい足音が響く。


ドンッ、と勢いよく扉が開く。


「待たせたな!」


煤にまみれたグレンが、満面の笑みで立っていた。


「憑代、完成だ!工房に来な!」


二人はすぐに席を立ち、工房へ向かう。

中にはフレデリックもおり、同じく煤だらけの顔で笑っていた。


「受け取れ、ジェシカ」


グレンがそう言って示した先──

テーブルの上には、ジェシカの背丈とほぼ同じ両手剣が置かれていた。


「いいか」

「こいつはお前の“全力解放”には耐えられねぇ」


だが、すぐにニヤリと笑う。


「だがな、ある程度の解放までなら余裕で持つ」

「最高級の仕上げだ。文句は言わせねぇぞ」


ジェシカはそっと柄を握り、剣を持ち上げる。


「……え、軽い」


「だろ?」

「見た目よりずっと軽量化してある」

「今のお前なら、問題なく振り回せる」


グレンは剣を見つめ、続けた。


「ただし、こいつはまだ“生まれたて”だ」

「本来の力は、これからだぜ」

「アルスを見つけ、鍛冶と錬金術を合わせて初めて完成する」


「へぇ……なんか、すごいね」

「ありがとう、グレン!」


「おう」

「それとな、抜き身の方が扱いやすいだろうと思ってな」

「背負えるようにも工夫してある」


「うん!」


「兄貴、助かったぜ」


「気にすんな」

「アルスの件、頼むぞ」


「ああ」

「行くぞ、ジェシカ」

「ミネルバ王国へ向かう」


「うん!」


ジェシカは新たな剣を背負い、グラフの隣に並ぶ。

二人は並んで歩き出した。


錬金術師アルスを探す旅──

そして、さらなる運命へと踏み出すために。







面白いと思った方は何かアクションやブクマそれに感想など書いていただけると今後の励みになるのでよろしくお願いします


Xアカウント Roots_syousetu

フォローもよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ