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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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21/124

1.方向と邂逅

登場人物紹介


<クロスリーパー>

主人公 ジェシカ   

賞金稼ぎ グラフ

このエピソードは長いです。

───────────────────────


ジェシカはアンディたちと別れ、情報を得るため、最寄りの町を目指して森を飛んでいた。


だが、木々の間を抜ける途中、微かに──そして次第に重なるように、複数の声が耳に届く。

その中で、人間の女性の悲鳴が、嫌というほど鮮明に響いた。


ジェシカは一瞬だけ迷う。


(……関わらない方がいい……)


だが、アンディの言葉が脳裏をよぎる。


──規律よりも、判断に責任を持て。


「……くっ」


次の瞬間、ジェシカは声のする方へ向かっていた。


近くの木に降り立ち、枝に足をかけ、様子をうかがう。

そこにいたのは──死者ではない。薄汚れた盗賊たちだった。


「女と子供は連れて行け!男は縛って使う!殺すなよ、使い道はある!」

「オオォーー!!」


襲われた人々は、両手両足を縛られ地面に転がされている。


「頼む……やめてくれ!金なら払う!だから……!」

「ははは!命乞いか?おい、その女をこっちに連れてこい!」


女性が髪を掴まれ、地面を引きずられる。


恐怖に歪んだ表情。必死な叫びが視界に入り、ジェシカの中で何かが冷たく沈んだ。


(こういうのを見て……何も感じなくなってきてる……?)


ほんの一瞬の違和感。


だが──


「……関係ない」


ぽつりと呟くと同時に、女性の髪を掴んでいる盗賊に向け──一閃。


盗賊の首が、音もなく宙を舞った。


「……何!?」


振り返る盗賊たち。

だが、その視界からジェシカの姿は消えている。


「──ブラッディストライク」


紅い斬撃が、一閃。


続けざまに、二閃、三閃。


何が起きているのか理解する前に、盗賊たちは次々と血飛沫が舞い、倒れ、息絶えた。


森に静寂が落ちる。


女性は恐怖と衝撃で声を失い、そのまま意識を失った。


「大丈夫?」


囚われた人々へ、優しくはっきりとした声で話しかける。


そこには──


真紅の剣を携え、

灰色のセミロングの髪、

蒼い瞳をした、細身の女性。


……ジェシカの姿があった。


まだ残っていた盗賊たちは、逃げる足を止め、振り返る。


「な、なんだ……女じゃねぇか」


欲に濁った視線をジェシカに向けていたが、視界が割れる。


「──ブラッディストライク」


血の斬撃が空間を裂き、盗賊たちは跡形もなく消え去る。

残ったのは、血溜まりだけ。


ジェシカはその血を分離アルカナで圧縮し、結晶へと変えた。


かつて、それは禁忌だった。

だが今は違う。


(……必要だからやった。それだけ)


自分に言い聞かせるように、目を伏せる。


「ありがとう……本当に……妻を……助けてくれて……」

「無事でよかった。それじゃ、気をつけて」


真紅の羽を広げ、ジェシカは再び空へ飛び立った。


───────


だが、目的の町へ向かう途中、何度も争いに遭遇し──人助けを繰り返した。


気づけば、三度目の夜を迎えていた。


「んーもう!いい加減にしてよー!!」


焚き火の前で、ジェシカは苛立ちを爆発させる。


「ただ町に行きたいだけなのに……!」


その時。背後から足音が聞こえ、身構える。


「誰っ!?」

「ふっ……まさか、ここで同族に会うとはな……」


黒を基調とした服。帽子の奥に光る鋭い眼。


「俺はクロスリーパーのグラフだ。そして──お前を粛清しに来た」

「……粛清?」


「そうだ。この森で、“紅い天使”の噂が流れている。人を救い、人を斬る存在……お前のことだろ」


ジェシカは眉をひそめる。


「天使じゃない。ジェシカ。それが私の名前」

「ふっ……そうか、ジェシカ。それで──どうなんだ?」

「私は天使じゃない。それに……人助けして悪いの?」


その言葉に、グラフの笑みがわずかに変わる。


「……やっぱりそう来るか」


静かに、しかしはっきりとした声。


「分かるぜ、かつて俺も昔はそうだった」

「……え?」

「目の前の悪を斬る。それが正しいってな」


グラフはゆっくりと続ける。


「だが違う。俺たちの力は──強すぎる」


その言葉には、重みがあった。


「リーパーの力は死者を狩るためのものだ。人間に向けるもんじゃない」

「でも!」

「聞け」


一瞬で空気が張り詰める。


「その力で人を斬り続ければ、いずれ人間は俺たちを“怪物”として見る」

「……」


グラフの視線が鋭くなる。


「そして──討伐対象になる」


ジェシカは言葉を失う。


「それを止めるために、俺は“粛清”しなければならない」


言い切ったグラフは体勢を低くする。


「ふっ、御託はここまでだ」


グラフの右手に、血が集まる。


「──ブラッディローズ」


その言葉と同時に、赤い薔薇の花びらが宙に舞う。

右手へと血が集まる。


粘り気のある赤黒い血が渦を巻き、やがて固まり、次の瞬間、その手には巨大な赤黒い両手斧が形成された。


「これは、俺の“責任”だ」


ジェシカは静かに息を吐いた。


(……この人、本気だ)


そして──


(……でも、私は)


「分かった」


ジェシカはグラフへ身構える。


「──ブラッディローズ」


その言葉と同時に、真紅の薔薇の花びらが宙に舞い、右手へと血が集まり、真紅の大剣が現れる。


それを見た瞬間、グラフの口元が歪む。


「ふっ……ふっ……はははっ!!」


肩を震わせる。


「そうか……お前か……!」

「……?」


その目が、わずかに興奮を帯びる。


「その力……その姿……まるで──古代マリア様みたいじゃねぇか」


ジェシカの胸が、わずかにざわついた。


(……マリア……)


だが考える暇はなく、グラフが踏み込んできた。


戦いが、始まる。

グラフはジェシカへ向かって踏み込み、攻撃を仕掛けた。

斧を両手で持ち替え、勢いよくジェシカへ振りかざす。


避けると踏んでいたグラフに対し、ジェシカは正面からその一撃を受け止めた。


ギィン──!!


重い衝突音が響く。

ジェシカは歯を食いしばり、そのまま力で押し返す。

グラフの体勢がわずかに崩れ、距離が開いた。


「ふっ、避けずに受けて立つとはな……行くぞ」


グラフの気配が変わる。


「──身体解放」


帽子の奥に見える瞳が、赤く染まる。


次の瞬間。

グラフの姿が、視界から消えた。


ジェシカは気配を探るように周りを探るが、直後頭上から強烈な圧。


斧が振り下ろされ、地面に叩きつけられる。


轟音が響く。

地面が裂け、衝撃が周囲に走ったが、ジェシカは間一髪で回避した。


だが──


(速い……!)


間髪入れず、二撃目、三撃目。

重く、速く、容赦のない連撃がジェシカを襲う。


ジェシカは避け続けるが、その負荷は確実に蓄積していく。


「くっく……どうした、避けるだけか!?」


余裕の笑みを浮かべ、グラフが嘲る。

そんなグラフにジェシカは静かに口を開いた。


「……一つ、聞かせて」

「……粛清中に話しかけるなんて余裕だな!!」


赤黒い両手斧と真紅の両手剣が交わる。


「……私が貴方を倒したら、どうなる?」


一瞬の間。


そして──


「ふっ、倒したら分かるだろーよ!!」


グラフが力を込め、斧を振り上げる。

だが──ジェシカは動かずそのまま、グラフを真っ直ぐ見据える。


「はっ!諦めたか!?これで粛清完了だな!!」


────────────────


「スカーレットローズ」


────────────────


「なに……!?」


血の匂いが、空気を満たし二人の周囲を真紅の血の花弁が舞い、囲む。

静かに。だが確実に、空間そのものが変質していく。


真紅の血の花びらがジェシカの右手に集まり、形を成して行く。

そこには金色に輝く両手剣。だが、すぐに存在を消した。


「なっ……!?何だこれは……!」


ジェシカは振り下ろされる斧に、片手で触れた。

そして──握る。


(……分解アルカナ)


ギチッ、と音を立てると斧はボタボタと赤黒い血液へと変わり、グラフの手から溶けるように消えていく。


「は……?何が……」


理解が追いつかない。

その隙を、ジェシカは逃さず一気に踏み込み最低限の身体解放。


拳が、グラフの腹にめり込む。


「──っ!!」


グラフの体が、空へと吹き飛ばされる。


「んだと……!!」


たった一撃。

それだけで、動きが止まる。


ジェシカは背から羽を展開し、一気に距離を詰める。


空中で──連打。


拳、蹴り、肘。

容赦のない連撃が叩き込み、グラフは一切反撃できず、すべてを受ける。


吐血し、体勢が崩れる。


「ぐっ……!!」


さらにジェシカは空中に散った血を足場にし、加速。


グラフの髪を掴みそのまま──急降下。


途中で手を離し、地面に叩きつけ轟音と共に、地面が砕け、砂塵が舞い上がる。


「くっ……な……んだ……よ……今のは……」


煙の中。

ジェシカは金色に輝く大鎌を構え、砂塵を払いゆっくりと歩み寄り、グラフの肩を踏みつけた。


動けず、完全に制圧されている。


「さあ、どうする?」


ジェシカの静かな声。


「粛清するなら──私は応えるつもりはないよ」

「……ちっ」


グラフは力を抜き、地面に倒れた。


「……俺の、完敗だ……」


ジェシカの足から力が抜けたのを感じ取り、身体解放を解除する。

そして、念のために結晶を一つ取り出し、飲み込み、

呼吸が整う。


グラフが口を開く。


「……お前、やはりマリア様なのか?」

「え?違う。私はジェシカ」

「……そうか。さっきの姿……古代マリア様に似ていたからな」


ジェシカの胸が、わずかにざわつく。


「グラフだっけ。もう敵意はない?」

「ふっ……この状態見て、敵意あるように見えるか?」

「……確かに」


ジェシカは手を差し出しグラフはその手を取り、起き上がった。


「血……使いすぎちまったな。渇きを覚える……」

「グラフだっけ?」


「そうだ。俺はグラフ」

「これ、飲んでみて」


ジェシカは結晶化した血を一つ渡す。


「なんだこれは……」

「いいから、飲み込んでみて」

「……分かった」


グラフはそれを口に含み、飲み込む。


「……っ!!」


目を見開く。


「何だこれは……渇きどころか……怪我まで治ってるぞ!?」

「グラフに聞きたいことあるから、とりあえず焚き火のところに行こう」

「あ、ああ……分かった。行こう」


これから何を聞かれるのか。

そして、自分も何を知ることになるのか。

──今夜は、長くなりそうだ。

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― 新着の感想 ―
再読しました! 語彙力が大幅に向上していますし、何より、展開と構成が格段に光っていたかと! ヾ(・ω・*)ノ 能動的な人助けに変更して、ジェシカとの意識ギャップを明確にした流れはめちゃ良いですね〜…
あれ? 書き直しや、話数調整が入りました? (´・ω・`) 数日前にさわりだけ読んだ内容と変わっているような……。 (・–・;)ゞ
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