表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/41

第19話 気づいたら、好きになってた

真鍋さんと飲みに行った佐久間さん。それだけなのに、なんでこんなに胸がざわつくんだろう──。

金曜の夜、幼なじみのやっちゃんとのご飯で、ナオがようやく気づいた“想い”。

でもその瞬間、まさかの通話中──!? 告白、バレてた!?

ドタバタと赤面MAXな第19話です。

──金曜の夜。


明るく賑わう街を歩きながら、ナオはスマホを握る手に、まだ少し力が入っていた。


(……佐久間さん、真鍋さんと飲みに行ったんだよな)


わかってる。べつに、恋人でもなんでもないし。

でも──なんでこんなに、胸がざわついてるんだろう。


駅前の交差点を抜けたところで、元気な声が飛んできた。


「ナオ〜っ!」


「やっちゃん……!」


待ち合わせ場所に先に着いていたのは、短めのスカートにキャップを合わせた、元気いっぱいの幼なじみ。


「よかった〜、今日もちゃんとイケメンじゃん! 行こっか!」


笑って腕を組まれそうになって、慌てて距離をとる。


「や、やめてよ……」


「はいはい、冗談。──で? 今日は何があったの?」


「え?」


「だって、顔に“もやもやしてます”って書いてあるよ」


図星を突かれて、ナオはつい顔を背ける。


***


入ったのは、こぢんまりしたイタリアンバルだった。


カウンター席に並んで腰を下ろし、前菜とドリンクを頼む。

ワインが少しだけ喉を通った頃、やっちゃんが言った。


「で、誰に嫉妬してるの?」


「……してないってば」


「ふーん? “してない”わりに、飲むペース早くない?」


「……っ」


たしかに、気づけばもう2杯目だった。


「てかさ。ナオ、もしかしてその人のこと……好きなんじゃないの?」


「えっ……」


その一言に、胸の奥がぐっと熱くなった。


好き──

そんなはず、ないと思ってた。

けど。


「……なんで、こんなに気になるんだろって思ってた」


「うん」


「だって、飲みに行っただけなのに。何があったわけでもないのに……勝手にイライラして、落ち込んで、気がついたら──」


ワインのグラスを持つ手が、少しだけ震えていた。


「──会いたくなってた」


口にした瞬間、自分で驚いた。


(……俺、今、ほんとにそう思ったんだ)


「ごめん、変なこと言ってるよね、俺……」


苦笑いを浮かべたその時、ポケットのスマホが振動した。


「……あ、佐久間さんから……!」


名前を見た瞬間、心臓が跳ねる。


「ちょっと出てくる」


ナオは席を立ち、静かな通路で通話ボタンを押す。


「もしもし、三崎です」


『ああ、今日のA社のプレゼン資料、フォルダに入れてくれてたやつ……あれ、上の承認が週明けになったから、一部だけでいい。月曜に再提出する感じで頼む』


「あ、はい! わかりました」


『それだけ。じゃあ……』


(……終わるの、早っ)


──通話を終えて、スマホの画面を下に向けたそのとき。


「すみません」


すれ違いざまに誰かと軽くぶつかり、ナオはスマホを持ち直す。

画面はロック状態に戻り、そのままポケットにしまい再び席に戻る。


「──で、さっきの話の続きなんだけどさ」


やっちゃんがワインをくるくる回しながら、ナオの顔をのぞき込む。


「……それ、たぶん、恋だよ」


「……え?」


「ナオ、なんかんだ言って佐久間さんのことずっと気にしてたし、今日だって“モヤモヤする”って……」


ナオは黙り込む。そして──


「……俺、佐久間さんのことが……好き、かもしれない」


ちいさな声で、でもはっきりと。

「……気づいたら、いつも佐久間さんのこと考えてて」


──そのときだった。


突然、どこからともなく、サンバの様な軽快なリズムが流れてきた。


♪ ラ~ララ~! 愛してる~よ~~~! オーレッ!

♪ 君の笑顔が~~眩しすぎて~~~! セイッ! アモーレッ!


「……えっ、なに!? なんか音楽流れてない!?」


慌てて周囲を見渡すナオ。やっちゃんはきょとんとしている。


「え? 音楽? なんも聞こえないけど……」


(え、じゃあ俺だけ!?)


──そして、気づく。スマホ。


ディスプレイを見ると、まだ通話中。表示されている名前は──


「……さ、佐久間さん……!? うそ……今の……!?」


まさかの“告白+恋愛発覚”を──佐久間さんにぜんぶ聞かれてた……?


「まじでぇぇぇ!?!?」

思わず、店内に響きそうな声が出た。

目を見開いたまま、ナオはスマホの画面を凝視する。


(……うそ、うそだよね? 今の、ぜんぶ聞かれてた……!?)


頭が真っ白になって、心臓がバクバクと暴れはじめる。

背筋をつたう冷や汗。手のひらからスマホが滑り落ちそうになるのを、慌てて握りしめた。


「えっ、えっ、ちょ、待って待って、えっ!? これ聞かれてた!? 全部!? 恋とか、好きとか……サンバまで!?」


パニック状態のナオの様子に、やっちゃんがキョトンとして首をかしげた。


「え、どうしたのナオ?」


「やっちゃん……俺……死んだかもしれない……」


顔がみるみる真っ赤になって、もうどこにも逃げ場がなかった。


──つづく。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

ついに……ナオが佐久間さんへの気持ちを自覚する回でした。

でもまさかの“全部聞かれてた”という、最大の羞恥プレイつき……!

サンバ、やっぱり切り札ですね(笑)

次回は、ナオと佐久間さん、どんな顔して会うんでしょう……お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ