17.インフルエンザ
例年より寒さが厳しい今年は、インフルエンザが流行した。
RSウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス……幼児期はまだ免疫が弱いため、様々な感染症の子が園で出ているそうだ。
子どもたちが感染しないように手洗いうがいをこまめにしていたが、陽菜がインフルエンザになってしまった。二日後には海斗も発症し二人の看病のため仕事を休み家で過ごしていた。
子どもたちは高熱の影響で、夜は悪夢でうなされて起きることもあり七海は寝不足だった。頭はボッーとして動く気力もない。
元気だったら春樹が帰ってくる予定だったが、子どもたちの様子を伝えると
「医者がインフルエンザにかかるわけには行かないから今回は止めておくよ。子どもたち早く良くなるようにしっかり看病してください。」
と返ってきた。春樹の頭にあるのは、医者の自分と子どもたち。
『しっかり看病してくださいか……。しっかりね。』
気だるいのは、連日の睡眠不足のせいだと思っていたが、徐々に寒気を感じ始める。夜には寒気のレベルではなく身震いをし節々も痛い。嫌な予感がして熱を測ると39.1℃あった。
『まずい……。』
この時、陽菜は発症から5日経ち元気を取り戻していた。海斗も3日目で夕方には平熱に戻っており今も熱はない。
二人とも発熱のピークは過ぎて元気になっていた。いや、その前にぐったりしていた反動かいつも以上に元気に感じる。
「ママッー!!!おなかすいたー!ご飯なにーーー?」
「ずっとおうち、つまらない。ママ遊んでー!」
ご飯を作る気力もなかったが、お腹を空かせている子どもたちを満たせるものはいないため必死の思いでうどんを作った。
「ごめんね。ママお熱出て調子悪くなっちゃって少し休んでいてもいいかな」
「えーーー。いやーー」
「ひーちゃん、ママもお熱あるんだって。ひーちゃんお熱あった時つらかったでしょ?ママもつらいから休ませてあげよう」
「うん!!!いいよーーー!」
陽菜が嫌がったが、海斗がなだめてくれたためソファで横になる。本当は布団に入って毛布にくるまっていたかったが子どもたちから離れるわけにはいかない。
バチャ………
嫌な予感がしてテーブルを見ると、陽菜がうどんのお皿をひっくり返してしまったようで床一面にうどんとつゆが広がっている。
「えーーーん。あちゅいよーーー」
パジャマのズボンに少しつゆがかかったようで、陽菜が泣いている。
慌てて駆け寄ると、少し裾が濡れた程度で火傷はしていなかった。
「大丈夫?びっくりしたね。今お着換え持ってきてお片付けするね。それからおうどん食べようか?」
「う、うん」
陽菜はしょんぼりしながら下を向いたままだ。
重い身体に鞭を打ち、雑巾と着替えを取りに行く。こんな時に……。と思うが子育てはいつも親の体調や機嫌などお構いなしだ。
寝る前にスマホの画面を開くと春樹からメッセージが来ている。
「子どもたちの熱は下がりましたか?」
子どもたちの熱は下がったが、自分が発熱し39℃出ている旨を伝えると返信が来た。
「子どもたちにうつさないように、しっかりしてください」
『しっかり……ね。』
七海は、寝る前のこんな体調が悪いときに返信したことを後悔し、毛布に丸まって寒気を取ろうとギュッと目を瞑った。
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