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仏間の封印

Oさんの父方の祖父が亡くなったとき、家を解体することになったのだが、そこで説明の付かないことが起きたそうだ。


「おじいさんとはあまり関係がよくなかったんです」


 そう前置きをしてから話は始まった。


「一応末期では入院していたので幸いにも特殊清掃は必要無かったんです。ただ、今にして思うと専門の業者に頼んだ方がよかったんでしょうね、餅は餅屋という言葉の意味がよく分かりました」


 何やら含みがある言い方だったのが気になる。ただ、病院で亡くなったのなら怨霊の類いはでないのではないだろうか? そう考えながら続きを促す。


「亡くなるときに遺言状を残していまして、家屋は全て売り払って現金にしろと書いてあったんです。別に法律的にそういう義務があるわけでは無いですが、今も都会に住んでいるとは言えませんがさらに田舎になるところに住もうという物好きもいなかったのであっさり解体は決まりました」


 建物の解体か、その土地に宿った何かというのが定番だが、一体何があったのだろうか?


「大して価値のあるものは無かったんですよ。ただ、一つだけおかしな事があって、何故か仏間への扉が引き手の横にお札が壁と扉をくっつけるように貼ってあったんです。不気味でしたが、仏間には先祖代々の位牌などもありますし、いくら祖父と父母の仲が悪かったにしても先祖全てを壊すときにゴミとして処分するわけにもいかず、父が乱暴に札を剥がしたんです。『まったく、ふざけたことを最後までして』といいながらその扉を開けました」


 彼女はそう言ってから少し顔を暗くした。あまり愉快な話ではないのだろう。


 部屋の中には何があったんですか?


「それが……仏壇が壊れていたんです。仏具の類いも大きなものから細かいものまで壊されて、まともに形を保っていませんでした。一応浅いなりにも歴史があるものだったので、それを見た父は激怒したんですが、なにしろ容疑者はとっくに故人ですからね。荒っぽく中に入りましたよ」


 その中は酷い有様だったそうだ。始めは仏壇だけが壊れているのかと思ったが、部屋の中にある座布団は裂かれて、花瓶は割れ、中にあるものは全て滅茶苦茶になっていたらしい。


「それで、何一つまともなものは無かったので、『これなら解体業者に任せればよかった』と父は言いながらその部屋を後にしました。そして仏間含めて全部産業廃棄物扱いで引き取ってもらうことにして業者に頼みました」


 解体時に何か起きたのでしょうか?


「いえ、解体は順調に進んで何事も無く終わりました。解体業者も慣れているのか仏間を軽く壊してしまいましたが、別に何か呪いとかもありませんでした」


 では何が起きたんですか?


「それが、解体が終わってからすぐに父が寝ているときに酷くうなされていると母から連絡が入ったんです。そりゃ仏間の有様を見た後なので何か関係があると思うでしょう? ただ、それを父に尋ねても絶対に何があったかは答えないんです。それから心療内科通いが始まって、睡眠薬をもらって寝るようになったそうですが、それでもやはりうなされていたそうです。そして祖父の葬儀が終わって四十九日が過ぎたところですっかり回復したんです。趣味だった登山にも出かけるほどに体力も回復しているようでした」


 では、何にうなされていたのか分かったのですか?


「一応父は『親父があの仏間に居たものを連れて行ったようだ』とだけ言っていました。それが何なのかは未だに聞くことが出来ません。しかしあの仏間の様子とお札を見るに、あそこには何かが封じられていたのでは無いかと思います」


 ただ、それが何だったのかどうかは絶対に話そうとしないし、今ではそれを話に出すことすらタブーとなっているという。

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