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床下の壺

 秋本さんは数年前、自宅をリフォームしたそうだ。その時に出てきたものがなんとも不気味で、どうしていいのか分からないということだと聞いた。


「家もなかなか築年数が立っていましたし、全面リフォームをしようとしたんです。地元の工務店にも一通り見てもらい、滞りなくリフォームは始まったんですがね……その後が問題でして」


 何が出てきたんですか?


「いやあ……そうだなあ……出てきたのは壺でね、なかなか立派なものだったんだ。何故かそれは床下に箱に入れておいてあったんだよ。いかにも不気味だったんだけどね、一応相続した家なので、先祖の誰かが盗まれないように隠したんだろうということで話がまとまったんだ。立派な壺だったというのもあるね、隠しておくだけの価値があるものだと、その時は思ったんだよ」


 床下から出たんですか? 普通はそんな所には隠さないと思うのですが。


「先祖のやる事なんて知らなかったからねえ……なんか事情があったんだろうくらいにしか考えなかったんだ。業者から箱に入ったそれが見つかったということで、家に取りにいって仮住まいに持ち帰ったんだ。それからリフォームは何事も無く終わったよ。順調だったね、しかも思い通りの出来でリフォームして良かったと思ったんだ」


 その後に何か起きたりしましたか?


「そうだな、始めに反応したのはウチの子だったよ。家の中に刀を持った人がいるなんて言いだしたんだ。不気味だったけどさ、子供も男の子だし、本人が言うには『かっこいい』そうだから立派な侍でもいたんじゃないかと冗談交じりに話したんだ。その時は子供の戯れ言で住んだんだがねえ……」


 それから秋本さんはうんざりした口調で言う。


「それから少しして妻がずぶ濡れの老女が出ると言いだしたんだ。子供の方は別に不気味に思っているわけでもなさそうだったので放置していたんだが、こちらはそうもいかない。仕方ないからお祓いをしてもらったんだ。家を手放すわけにもいかなかったけれど、リフォームにお金がかかったからね、あまり高いところには頼めなかったよ。自称霊能者に軽く払ってもらってはいおしまいというわけさ。ま、当然効果は無かったね」


 しかしウチにもお金は無かったんだと彼は続けた。


「それから何故か私は見なかったんだが、家族二人にはハッキリ見え続けていたらしく、困り果てていたんだ。そんな時、お寺から仏壇に読経をするという案内が届いたんだ。それどころじゃなかったんだが、一応なんとか礼金も捻出したよ」


「坊さんはさ、ウチに来るなり『何か禍々しいものがありますな』とか言い出してな。こちらとすればさっさとお経を上げて帰って欲しかったんだが、坊さんはリフォームした家を見せてくれと言うんだ。仕方ないから案内したら床の間で止ってな、飾ってあるあの立派な壺を見て言うんだ」


 何を言われたんですか?


「坊さんは『何故骨壺を飾っているんですか!』と結構な剣幕で言いだしたよ。しかしだ、骨壺だと言っているが、出てきたときに骨の欠片も入ってなかったし、一応葬儀に出たこともある。普通は骨壺があんなに大きいはずがないんだ。人一人の骨を入れるのにあんな大きなものは必要無いね。だから骨壺だなんて誰も思わなかったんだ」


 それで、結局どうなったのですか?


「坊さんが『この壺は寺で供養します』と言い出してな、もったいないような気はしたんだが妻が是非そうしてくれと言うものだからそのまま寺に安置されることになったよ。何故骨壺が床下にあったのかとか、やたらと大きい理由なんかは説明してくれなかったな。とにかくそれで家の怪異はおさまったんだ」


 なるほど、お坊さんが解決してくれたわけですね?


 私がそう聞くと、彼は苦々しい顔をした。


「だったら良かったんだがなあ……持ち帰った坊さんが突然病気になってな、余命も宣告されたらしい。骨壺と関係があるのかは知らんが、タイミングがこうも合致すると怪しく思えちまうんだよなぁ……」


 そして最後に『あの坊主が死んだら骨壺が帰されるんじゃないかと思うと気が気じゃないよ』と言っていた。

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